すずきりなた。

メモ日記。あとは、思ったことをそのまま書き綴ります。まだまだビギナーですが、小説を出来…

すずきりなた。

メモ日記。あとは、思ったことをそのまま書き綴ります。まだまだビギナーですが、小説を出来る限り投稿していきたいと思ってます笑笑

最近の記事

次、停まります②

―――――――――――――――――――――――――――――― ———「お客さん、聞こえますか?...すみません、終点なんで、降りてもらえませんかねー。」 運転手さんに体を揺すられ起きると、もう終点だった。 「すみません!」  急いで降車したはいいが、ここがどこだかわからない。出発するバスを呆然と眺めることしかできなかった。周りを見渡すと、トタンの屋根や土壁の家屋が多く連ねる、いわゆる下町の住宅街のようだ。場所を確認するためにスマホの地図を開くも、何故か電波が悪くつなが

    • 次、停まります。①

         バスの停車ボタンを押すのには、すごく勇気が必要だ。電車ならば目的地に行くうえで乗り換えるのも簡単である。あらかじめ決められた駅は勝手に通り過ぎることはないし、絶対に何人かはホームに降りる。だから私も一緒になって降りればいい。満員電車で、「すみません」、なんて言いながら降りるこの申し訳なさについては、ちょっとここでは割愛する。ここでの問題は、バスである。押さなきゃいけないのだけれども、私の代わりに誰かがボタンを押してくれたらいいのに、と思う。  私にとってはバスに揺られ

      • カーマン・ラインを越えて行け(the other side)

         朝、美術室の扉を開けると大抵先客がいる。くせっ毛で長めの黒髪を規則正しくワックスで整えている彼は、いつも窓際に座ってデッサンしている。美術室は南校舎に位置しているからか、日の光が一日中差し込んでいる。干された画材が白く光り、彼を照らすレフ板になる。色の白い彼の肌が、白いキャンパスよりも映えて見えるのは、他の女子にとってもそうだろうか、それとも私の主観だろうか。私が部屋に入ってきたことにはまったく気づかず、真剣にキャンパスとにらめっこをする横顔に魅せられ、周りの時が一瞬で止ま

        • カーマン・ラインを越えて行け⑤

           帰る時は、またロープを使って一階まで降りた。そしてピカイチと別れてから、僕の頭の中は透き通っていた。はやく、自分の思いを形に残さなければと思い、家に帰ってから夜、寝ずに下書きを始めた。描きたい、ただその思いを誰に向けるわけでもなく、ただただ必死に筆を走らせた。突然の僕の変貌ぶりに驚く睦や先生は気にも留めず、その日を境に僕は朝から晩まで美術室にこもり、作品を完成させるべくキャンパスと向き合った。白に、色を生やす行為は、集中している僕にとってそれは、そんなかわいらしいものでもな

        次、停まります②

          祈り

           はらりと落ちる葉というものは、実に不思議なもので、その瞬間を目にすると、何故だか記憶に残ってしまう。目を閉じると、木から葉がほろりと零れ落ち、池に水紋を描く様が想像できるだろう。落ちる先は、水ではないかもしれない。腐葉土に落ち別のものに生まれ変わるでのあろうか、混凝土に落ちて染みを作るのであろうか。  葉が落ちるというと、多くの人は落ち葉思い浮かべるだろう。青々とした緑から落ち着いた黄色に変わった瞬間、葉は落ちることを意識し、身構えるのである。彼らにとっての落葉は宿命で、

          カーマン・ラインを越えて行け④

          かれこれ20分くらい、僕は全速力で逃げるピカイチを追いかけていた。サッカー部のピカイチときたら足がものすごく速いから、10メートルの間隔が埋まることはない。けれども、これ以上差を広げればいよいよ見失ってしまうので、運動不足の体に鞭を打ちながら学校中を走り回った。幸い、春休み中で先生もあまりいなかったので、変に妨害されることもなかったが、運動不足がたたって呼吸がうまくできず、走りながらも酸素を欲して何度も上を見上げた。 (息を切らして追いかけて、見失わないように必死に背中を

          カーマン・ラインを越えて行け④

          カーマン・ラインを越えて行け③

           皆がみんな、そこに行きつくことが出来ないということは、誰もが承知している。大抵の者は身の程を理解し諦めるが、極稀に諦めの悪い連中なんかがいるものだ。彼らは時に肩を叩かれ笑われ、悔しさで手元の設計図をくしゃりと握り潰しながらも、ただひたすらに理想を目指し、エンジンをかける。そうして彼らは機長となって機体を操縦し、上昇気流に乗って飛ぶのだ。緩やかに気流が安定したのを確認すると、機体が傷ついていくのを感じながらも、上へ、上へ、と昇っていく。しかしながら、エンジンに負荷がかかるよう

          カーマン・ラインを越えて行け③

          カーマン・ラインを越えて行け②

          ―――――――――――― 「うーん…なにかが足りないね、なんだろう。」  静まり返った美術室で聞こえるのは先生の唸り声、僕の心臓の音、そして壁に掛けてある規則正しい時計の音だけである。もしも今、美術室にいるのが僕と佐々木さん(クラスで1番可愛くて、隣のクラスに彼氏がいるから迂闊に手は出せない。それでも、二人きりで教室にいるなんて状況になったら、他の奴らに自慢できるに違いない)だったら天国のような空間なのに、現実はそうもいかず、僕は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。僕

          カーマン・ラインを越えて行け②

          カーマン・ラインを越えて行け①

           それは、海抜100km上空に惹かれた仮想のラインである。成層圏、中間圏を越えた先の熱圏の中にあるこのラインは、曖昧なくせして、宇宙空間と地球とを分断する。過酷な環境であるがゆえに、美しい世界。オーロラは地上から約80km上空に出現するから、このラインに到達すれば、オーロラを上から眺めることだってできるし、流れ星をすぐさまその手でつかむことだってできるかもしれない、そんな場所である。我々がこれまでいた世界とは分断されており、通常は行くことのできないそこに到達することは、神への

          カーマン・ラインを越えて行け①

          私と、ある一冊の本の出会い

           頭の中がお花畑みたいだとか、いつも楽しそうだとか言われるが、そしてこんなこと軽はずみで思うべきではなかったが、大学で2回、絶望して本気で死にたいと思ったことがある。もちろん今は、昔のように焦燥や絶望、罪悪感に満ちたそれはない。幾分か落ち着いた、毎日が瓶の中に金平糖をコロンと入れるような、なにか違った感覚である。それは、昔を完全に忘却したわけではなく、受け止めることができたからだとおもう。そのきっかけを、そして多くの出会いをくれたのがある一冊の小説であった。今回、この小説と、

          私と、ある一冊の本の出会い

          具体的なそこの貴方へ

           エンデのモモみたくなりたくて、黙って話を聞いていると、「こんなはずじゃない」って皆が抱え込んでいる違和感がどこか不思議な輝きを放っているのが見える。さいころを振っても出る目は予期せぬものばかりで、望んだ道から大きくはずれ、それを見計らったかのように後悔と愚かさは静かに囁き、未熟であることの証明に、今日も罠を仕掛けてくる。そうして逆走していることにも気づかず、また逆走しているのかもわからず、どうでもいいことですら真剣に考える皆のその姿は、本当に悲しいくらい優しいと思った。ごめ

          具体的なそこの貴方へ