脳卒中サバイバーとうさんの料理を見守るのだわんわん

あっちに見守るさっちもちゃんが映り込んでいました(笑)塩見三省さんがエッセイ「うたうように伝えたいで書いたように脳卒中で片麻痺になって留守宅に居るとまるで砂漠に一人で放り出されたような気分になってくる。一方でどこか初日の出を見守っているときのように、群衆の中の清々しい孤独といった心持ちもあるなんとも不思議な時間であった。家に一人ということは自分の食事はなんとかしなくてはならない。まさにリハビリの目標であった日常生活での自立(ADL)が必須なのだ。完全にひとりのsolocookingは発症以来初めてでちょっと緊張した。左手の麻痺はちょっとしたことを不自由にする、胡椒ミルは使えないし、袋物の封を切るのには一苦労だ。でも、為せば成るで、やってみたハサミを入れるのに立てておいた袋が倒れて中身が出てくるとかちょっとした失敗はあったけど、それは許容範囲だろう、料理っていいよね、あらゆる場面に工夫が活かせる失敗も含めて自分らしさがそこにある。真っ白なスケッチブックをクレヨンや絵の具で汚すときのようなやりがいだ。もちろん出来上がった料理が素敵で美味しければ、もう大満足なのである。そのとき僕は放り出された砂漠で一人紺碧の夜空に登る真っ白な月の美しさに心を打たれているのだ、この感動はたった一人だから味わえるものなのかもしれない、きっとそうに違いない。丸皿に盛ったソース焼きそばを平らげながら僕は孤独を味わうのであった。

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