わたしだけの世界

見つけると写真に撮って誰かに送り付けたくなるほど、昼の空に浮かぶ、白い月が好き。雨上がりの公園に光る、水たまりが好き。自然だけじゃない。観覧車や気球のような、人が造ったものだって、たまらなく好き。眺めていると、瞳が、心が、澄んでいくような気がする。性格まで優しくなれそうな気がする。さすがにそれは、気のせいだけど。

生きるっていうのは大変だ。しんどいことはたくさんある。だから、好きなものは多いほうがいい。わたしに見えている世界はわたしだけのもの。嫌いを減らして、好きを増やせば、ずっと幸せな世界を生きられる。そうやって、生きている。

そう思うようになったきっかけは、二つある。

一つは、中学二年生のときのこと。五年以上大嫌いだった友達と親友になった。嫌いな人は好きになれると知ってから、人を嫌わなくなった。

もう一つは、わたしの見ているもの、思ったことを、そっくりそのまま、人に伝えることは不可能だと知ったこと。例えば、色。「赤色」と言われて、わたしがイメージするものと、あの子が思い浮かべる赤色は違うかもしれない。リンゴを指さして、「あれは赤いよね」と同意できたとしても、わたしと彼女の眼には、少しずつ違うように映っているのかもしれない。例えば、言葉。心に浮かんだ気持ちを伝えようとしたとき、まず自分の言葉にした時点で、浮かんだことを完全に表現することができない。なるべく近い言葉を当てはめて伝えたとしても、相手に伝わるときには、きっと、また少し、違うものになっている。なるほど、完全に分かり合うということはないんだな、と知った。

だから、わたしの目を、心を通してみるこの世界は、わたしだけのもの。

心意気ひとつ、捉え方ひとつで、ハッピーな世界を描けるなら、わたしはたくさんの「すき」を詰め込んだ、キラキラの中を生きていたい。

これもまた、わたしの世界の見方のひとつにすぎないけれど。

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