村田諒太、ブラントと再戦へ

つい先日、前WBAミドル級王者村田諒太と村田からタイトルを奪ったロバートブラントの大阪での再戦のプランが明らかにされました。
日刊スポーツ:村田諒太 7月に王座奪われたブラントと再戦と米紙
[2019年4月12日19時2分]

再戦はまだ噂の域を出ないものの、帝拳の本田会長による「ボクサーとして素質はない」「第二の人生に期待しちゃうね」「(再戦の可能性については)本人次第」という言葉からは、村田の人間性に惚れ込んだ本田会長が村田の最後の試合になるかもしれない大舞台を用意したと考えると腑に落ちます。
西岡利晃にマルケス戦、ドネア戦を用意した心境と似ているのではないでしょうか。

本来は前回のブラントとの試合を参考にしながら村田の技術評、今後の展望についての記事を用意していたのですが、それを一部改変してアップしたいと思います。
まずは前戦の確認から。
Dayly motion Ryota Murata vs Rob Brant (20-10-2018) Full Fight

前回村田は10ポイント差が二人、8ポイント差が一人という大差で敗れています。

ボクシングの世界では「再戦は賢いものが勝つ」ということがよく言われます。しかし実際には「より選択肢の多いものが勝つ」と言ったほうが正確でしょう。
結論から言うと、村田が再戦で勝つことは非常に難しいと考えます。

問題提起にあたりまず「PAGES」に掲載された元WBAスーパーフライ級世界チャンピオンの飯田覚士氏による前回の村田vsブラント評を紹介します。
ここに書かれているのは(要約すると)「村田には相手を追い込むステップワーク、(3発目に繋げるような)手数が足りなかった」というものです。
しかし、この評価はこのブラント戦の評価として適切でしょうか?    フットワークや手数と言った村田の欠点はデビュー当時から明らかだったでしょう。
勿論、はるか格下の相手との距離を詰めることは比較的容易でしょうし、パンチを纏める事もそれ程難しくはないかもしれません。しかし、村田が目指すレベルでそれがそのまま通用するか、といえばそれは容易ではありません。当初から、村田の鈍足と、パワフルな右に比べて右からの返しの左はパワーにもキレに欠け、2発以上、3発4発とパンチを纏めていくリズムに欠けていたことは明白だったと思います。
村田の歴代トレーナー達、中でも高名な現トレーナーの田中繊大氏、イスマエルサラス氏などが、飯田氏が言及しているような弱点に気づいていなかったということはありえないでしょう。
このような明らかな弱点を長い間克服出来ていないのですから、わずか1試合の準備期間で問題を解決しようと考えるよりも、比較的短期間で身に付ける事の出来るも技術、戦術で、その弱点をカバーする方法を探す方がまだ現実的だったでしょう。
飯田氏の批評は、その弱点を中心に据えてボクシングを構成したブラントの働きが無視されていますし、村田を批判するのなら弱点をカバーする選択肢がなかったことに言及されるべきでしょう。

今回特に考えていきたいのは以下の点です。

①アマチュアとプロの違いと、そこから見えてくる村田の選択肢の少なさという問題について。
②村田の弱点から、技術というソフト面からそれを支えるハード面について。
③今後の村田、新生村田諒太について考える。
④長期的、短期的なトレーニングプランを持つ事について。

①では、戦術面について考えます。
②では、村田には股関節の運動機能に問題があるのではないかという点から村田のボクシングを考えたいと思います。
③今後の村田諒太に望まれるものが何のか、ジョージフォアマンとの類似例をあげながら幾つかアイディアを出したいと思います。
④では、②③を踏まえて、長期的、短期的な視点を同時に持ちながらトレーニングプランを立てていく事の大切さについて考えていきます。

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