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「青物横丁物語」3

八人兄弟の三男で生まれた俺は戦後生活苦の家を支えるため中学卒業後、集団就職で上京した。
青物横丁にある小さな螺子工場に就職し、油まみれになりながら毎日働いた。両親に仕送りしながら、将来は何かデカイことをやって儲けてやろう、田舎の兄貴たちを見返してやろうと野心に燃えていた。
二年ほど経った頃、地元の飲み屋で親しくなった仲間から「もっと割のいい仕事があるから」と誘われた。高級品のベルトやら靴を売る仕事だった。高級品は、価格を保つために、売れなかったものを廃棄処分にするのだと説明された。元締と呼ばれる四十代の男は、パリッとしたスーツ姿の愛想の良い人間だった。

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