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構成力とひきこまれる文体。#創作大賞感想

最初は、エッセイかと思った。

結城熊雄さんの「おもんない、おもんない。」
おもんない、おもんない、といろんなものがいかにおもしろくないか、がつらつらと書かれている。小説、音楽、映画。一般的におもしろいと思われているものがいかに「おもんない」のか、関西弁の軽快な文体でユーモラスに、ときに少し斜に構えた文章で書いてある。どうしてそんなに何もかも「おもんない」のだろう、と気になってくる。

読んでいくうちに、エッセイではないと気付く。ああ、これは小説なんだ。じゃあ、この語り手、主人公はどうしてこんなに何もかも「おもんない」のだろう。読み進めると、どんどん意外な方向へ進んでいく。構成がとにかくうまい。

主人公がどうして何もかも「おもんない」のかわかったとき、そしてそれをどう解消するのか行動するとき、主人公に共感していた自分はすがすがしいほどのカタルシスを感じるのだ。これは読んでもらわないと伝わらないのだけれど、そこには誰にでも経験があるような、些細な棘やうまく飲みこめない恐怖がある。それを主人公ならではの方法で解消する終わり方は、やっぱりうまい。誰にでもできることではないかもしれない。でも、やっぱりこういうことって素晴らしいと思う。私の感想じゃうまく伝えられない。読んでほしい。

読んでいない人にはネタバレにならないと思うから一番言いたいことを言う。絶対M‐1に出てくれ!ずっと応援するから!

素敵な小説をありがとうございました。

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