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サラメシの流儀

私の長男は自閉症である。こだわりが強く、独自の世界を持っている彼には様々なルールがある。
「生きにくさ」をさらりと交わすが如く、細かなスケジュールのもと、彼は社会生活を送っている。

高等学園在学時に職場実習でお世話になったことがきっかけとなり、3回の実習を経て卒業後に就職させていただいた現在の勤務先。今年で8年目となり、毎日パートのおねえさん方(おばさんと言わない辺りがニクイ)に混じり、一生懸命働き、汗を流している。

「時々(障害者枠だということを)忘れてしまうんですよ」と上司の方から何とも複雑なことを言われたことがあるくらい(いや、そこはぜひ忘れんでくれ!!)仕事に関しては今のところ大きな問題もなく、みなさんに支えられながら、生き生きと日々を過ごしているようである。

そんな彼が楽しみにしているのは昼休みの時間。6:30前には家を出て7:30から仕事が始まるため、朝食は6:00前に摂るようになる。腹が減っては戦は出来ぬ。きっと昼近くには空腹MAXなんだろうと推測できる。

彼の会社には社員食堂(社食)がある。日替わり定食は確か350円。日替わり麺類(ラーメン・そば・うどんのローテーションらしい)は330円。単品のおかずもある。何というお手頃価格。そしてここで彼なりの流儀が登場。

カレンダーの黒い日はお弁当を持っていく。赤い日は社食のメニューを食べる。

最近土曜日は公休をいただけるようになったので、日曜日と祝祭日は社食を使ってくれるというのだ。母にも休日をという彼なりの思いやりなのかと思いきや、何てことはない。そこに大好物があるから。ラーメン大好き小池さんにも負けないくらいの勢いで、彼はラーメンをはじめとする麺類が大好きだ。

困り果てるほどに偏食だった幼少期から、麺類だけは本当によく食べた。これは外食へ行く場合も同じで「何食べに行く?」なんて聞こうものなら「ラーメン!!」となり、好き過ぎる故に他の選択肢は許されない!といったムードに家中が包まれる。これでよくファミレスへ行きたい派の長女(彼にとっては妹)とモメにモメたものである。夫と長男がラーメン店、私と長女がファミレスへ・・・なんてことも多々あった。家族そろって外食するんじゃなかったんかい!な思い出がちらほら。

もし毎回社食にしてしまったら、彼は間違いなく連日麺類をセレクトしてしまうだろう。定食も食べてみたら?と幾度となくアプローチをしてみるが、頑なに麺類一択。そりゃそうだ。

学校時代の給食のおかげもあり、少しずつ食べられるメニューが増えて昔ほど偏食ではなくなった彼を、再び麺類しか認めん!みたいな嗜好に戻してしまうのはちょっと勿体ないような気がして、母は平日は早起きをして弁当作りに勤しむ。

時々母は意地悪してちょっとキライなもの(野菜全般)も入れたりする。帰宅後お弁当は空っぽ。なんだ、食べられるんじゃん。

「お母さん、今日のお弁当も美味しかったよ」家族の中でこんな風に口に出して言ってくれるのは彼だけだ。素直な一言に涙が出てくる。夫なんてまずダメ出しから入る。今日のご飯は固いとかおかずがイマイチだとか。ちょっとは息子を見習ったらどうか。

今月は4回の日曜日と2回の祝日があった。麺だけでは足りないとのことで、おにぎりだけは家から持っていくものの(社食でおにぎりかライス売って欲しい・・・)、社食を使う日はちょっと嬉しいらしく「オレ、今日社食使うから。弁当いらないよ」ってニコニコしながら言う姿は、何とも微笑ましい。自分の給料で自分の好きなものを食べるんだもんね。最高じゃないか。

そして最近、社食にはカップ麺の自動販売機なるものも導入されたらしい。家ではあんまり食べられないどんぎつねさんが売ってるんだよ!と鼻息を荒くして報告してくれた。
日替わり麺類かカップ麺。その時の気分で選べる贅沢。この一杯のために生きてるな、オレ。

年齢的には立派な大人だけど、無邪気な少年の心を持つ長男。
完全に大人として扱う部分と、フォローがまだまだ必要な部分とのバランスを保ちながら、いつか親元から巣立つ日まで、母は早起きして弁当作りを頑張ろうと思う。

#自閉症スペクトラム
#麺類大好き

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