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へなそうるとの出逢い

感動した。心震えた。
それは不思議な出逢いに導かれて、自分が子どもの時代に一瞬タイムスリップしたような。
懐かしくて、優しくて、愛に満ち溢れている空間に触れたからだ。


図書館通いがよいリズムになって一年ほど。
知れば知るほど奥が深くて、数珠繋ぎのように新しい興味が湧くことばの世界。

最初のブームは自分が読む小説だった。
擬似体験のもと、知識や感情を得ては自分と重ねて心を動かすと日々が活性化する!と気づいてから。なんでもっと早く本の魅力を知らなかったのかと悔やむほど。

図書館では絵本とともに児童教育に携わった人たちを知り、ますます興味が広がった時。ズドンとわたしの胸に矢を放ったのは中川李枝子さんだ。

ぐりとぐらの作者として有名な中川さんの『ママ、もっと自信をもって』


この本を読んだおかげで、わたしの考え方は間違っていないのだ!と自分の芯を一本手に入れた気がしている。そして中川さんの感覚に心底共感・納得した。

彼女の教育観は『いやいやえん』に詰まっていると知り、娘との初めての児童書デビューも果たした。

尊敬する方が関わった人をもっと知りたくなって影響を受けた方々の本も読むようになる。
石井桃子さん、松井直さん、松岡享子。
遡って北原白秋や野口雨情、サトウハチロー。
童謡の作詞家とのつながりもまた面白い。うん、止まらない。

そんな中ハマったふたつめの児童書は、渡辺茂男さんの『もりのへなそうる』だ。

渡辺さんのお名前は認知していたものの、年末のラジオで上白石萌音ちゃんが紹介をしていたことがきっかけでとても興味をもった。

渡辺さんは石井桃子さんとの関わりも深く。
この本は中川李枝子さんの妹・山脇ゆりこさんの挿絵。

更に更に。
わたしが小学生の頃に読んだ本で記憶に残っている内のひとつ。『エルマーの冒険』シリーズの翻訳を手掛けられていた。

いろんな角度からバチッ!とハマって、これは買わねば!!と本屋で見つけてレジへ向かう。

するとレジの脇にチラシがあった。

「もりのへなそうる 人形劇」
そんな巡り合わせってあるのだろうか。運命以外の何者でもない。何かに導かれていると感じた。


2月だけの公演。
次はいつ開催されるか分からない。
ならばとチケットを予約し、遂に行ってきた。



結果、大きな声で言いたい。
「行ってよかった!!!」


早めに着いてほんちゃんと劇場で開演を待つとき。
ふとした瞬間に胸がキュッとして鼻の奥がツンとして、なぜか分からないけど涙が出そうになった。冒頭に書いた通りだ。

人形劇団プークさんのあたたかな空間。
作り手の皆さんの素晴らしい創意工夫。
物語の果てしなく広がる世界観。

デジタルな時代。テクノロジーの進化に感動することもたくさんあるけれど、手作りの舞台装置や人形たちが人間の手で動く。
書いてしまうと普通だけど、ここにある全てのものに関わる人がいることを実感してしまう空間なのだ。

子どもたちも笑ったり、喋ったり、夢中になって観ていた。娘も例に漏れず。
わたしからちょっと離れた子ども専用の席で、モジモジしながら家で何回も読んだへなそうるに会えるのを楽しみにして座ってる。

その後ろ姿だけで、なんだか尊くて。愛しくて。
大変な思いをしてでも電車に乗ってきてよかったと思ってしまう。


劇は影絵の演目と休憩を挟み、お待ちかねのへなそうる。
1冊の本が40分にまとまって、あっというまの舞台だった。

それで分かったことは、ほんちゃんは自分自身を驚かすものにはあまり動じない。
でも共感力はわたし譲りなのか高いらしく、へなそうるが夢のなかでカニにクビやシッポを切られたらどうしよう!!と妄想するシーンで。
へなそうるの恐怖と共鳴しまくっていた。
シクシクと泣きながらわたしの膝に移動してくる。

そんな娘がたまらなく愛しかった。
そんなほんちゃんにわたしが感情移入する、という訳のわからなさでわたしも泣いた。。笑


まだまだ観ていたい。またすぐに会いたくなる。ちょっと別れが惜しい切なさも感じつつ。
今日やっと会えた可愛い可愛いへなそうるとの出逢いへの喜びも。
言葉にできない感情を全部包み込んでくれるラストの爽やかで優しい音楽もわたしにはグッと込み上げるものがあった。庄子智一さん、拍手である。


多分同じ気持ちのほんちゃんと目を潤ませながら会場をあとにした。心がいっぱいなほんちゃんはそのまま眠ってしまいわたしは久しぶりに特急電車に乗って4歳児を抱えたまま家まで帰った。すでに腕には筋肉痛がきている。


とにかく、素敵な体験をさせてくださった人形劇団プークさんへ感謝の想いでいっぱいだ。
ずっとずっと尊い活動を続けていっていただけるよう、微力ながらもまた何度も足を運ぼうと心に決めた。

ものがたりの力で親子や兄妹、お友だち同士…などたくさんの絆が生まれるんだな。

へなそうるが連れてきてくれたこの世界は、またわたしに大きな影響を与えてくれた。

ありがとう、へなそうる。また会いに行くね。


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