36歳から歯列矯正をする話①

紅茶王子という漫画をご存知だろうか。
満月の夜に、ストレートティにお砂糖をひとつ。
カップに映るお月様をティースプーンでひとまぜすると、紅茶の精があなたの願いを叶えてくれる。
実際にこのおまじないで呼び出された紅茶王子は、ささやかな願い事を3つ叶えてくれる。

もし私の元に紅茶王子が来てくれたなら、私は迷わずこうお願いするだろう。

歯並びを良くしてください。

いや、

歯をください、と。

言っておくけれど、若気の至りで喧嘩して殴り合い、歯を折ったりしてないし、酔っ払って転んで顔面強打したこともない。
だけど、私には歯がないのだ。

先天性欠如歯。
これが私の症状名である。
簡単に言うと、生まれつき永久歯の数が足りない症状のことだ。

ーーー3歳くらいで完成するといわれる乳歯の歯並び。乳歯がすべて生えそろうと、口の中には20本の歯が並ぶことになります。それが6歳から12歳くらいにかけてあごの成長とともに永久歯へと生えかわり、親知らずを除くと28本の歯並びに。永久歯に生えかわるスピードには個人差があるため、人より1~2年遅くても早くても心配無用ですが、乳歯がいつまでも残っている場合は注意が必要です。
(日本臨床矯正歯科医会HPより)

この先天性欠如歯の子どもは、近年増えているらしいが、原因ははっきりしない。
私の母親も同じような症状があるので、遺伝は関係ありそうな気がするが、現状よく分かっていないということだ。

私の場合は、小学校高学年くらいからその可能性を指摘されていた。
ただ、実際に何本足りないかというのがわかったのは成人してからである。

その数、実に9本。
さらには、7本の乳歯が抜けずに残っている。

ばっちり生えた永久歯もあるので、大人の歯と子供の歯が口の中で共存しているのだが、当然大きさや高さはバラバラだ。
だから、普通の人みたいに上の歯と下の歯がガッチリ噛み合わない。
奥歯に隙間ができる。
つまり、生えてるだけで噛めていない歯があるのだ。
よく噛んで食べるためには歯の数が不十分だし、残っている乳歯の中にはぐらぐらしてるものもあって、思い切り噛みちぎったりすることもできない。
食べるのが大好きなのに、年齢と共に思い切り食べられなくなってきている。
これが一番悲しい。

他にも、歯の高さが違う部分は虫歯になりやすいので健康にも悪い。
そして何より、今は何とか鎮座してくれている乳歯も、いつかは必ず抜けてしまうのだ。
もう36歳とはいえ、まだ36歳なのにどんどん歯が抜けていくなんて、見た目的にも辛いものがある。

そういうわけで、現在通っているかかりつけの歯科医からは、できるだけ通常の人の永久歯の数に近づけることを提案され続けてきた。
元々、インプラント治療に力を入れている歯科なので、最終的にはインプラントを初めとする義歯を入れて、足りないところを補っていくことで、正常な歯の状態に近づけるということになる。
そのステップの第一段階が歯列矯正だ。

そんなわけで私は、現在かかりつけとは別の矯正歯科へ通っている。
まだ矯正自体はスタートしていないが、自分なりに調べたり感じたりしたことを書き記していきたいと思った。

まだ矯正をするかどうか迷っていた頃、Twitterで成人してから歯列矯正をした人の投稿をたくさん見て回った。
私と同じ症状の人は見つけられなかったが、矯正のつらさやちょっとした喜び、ケアの仕方などとても参考になり、最終的には矯正治療に踏み切ることができた。
もしかして、近年増えているという先天性欠如歯の人が大人になった時、私の記事が参考になることがあるかもしれない。
そう思って、気軽な気持ちではあるが少しずつ投稿していくつもりなので、興味のない人はスルーして欲しいし、できたら励まして行って欲しい。

私は矯正治療を決意するまで、自分の歯のことを、歯科医以外の人に話したことがない。
それくらい触れられたくないことで、受け止めたくない現実で、本気で誰かに魔法で助けてもらいたいと思っていたのだ。

わかってはいるけれど、矯正治療は魔法じゃない。
怖いし不安だし、正直今でも紅茶王子を呼び出して…と考えてしまうこともある。
だけど何とかスタートラインに立とうとするところまで来た。
とりあえずはそんな自分を褒めつつ、次のステップへ進んでゆくつもりだ。

頑張ろう、私の歯。

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