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将棋道場

私は若かりし頃。偶然見つけた将棋道場に通い詰めていた。ほったて小屋のような小さな道場。将棋好きの皆さんが協力して、この場を作られたと後に聞いた。
あの頃。私は仕事が終わるとすぐに道場へ向かっていた。最初に門を叩いたときは、本当に指せるの? という目で見られていたが、毎日のように通う私に、じいちゃんたちも「こいつは本気で強くなりたいと思っているな」と。いろいろアドバイスをくださるようにもなった。
じいちゃんたちがぼそぼそつぶやく言葉たち。私の心に響くことが多かった。
「将棋はどちらも正しい手を指していたら、永遠に終わらない。どちらかが間違えるから、勝ち負けが決まる」
「諦めたらそこでお終い。最後まで全力で考え抜く。悪くなった時にどう良くもっていくか。よく考えてみなさい」
女性は私ひとりだったこともあり、じいちゃんたちから、可愛がってもらった。「女に負けたら恥だ!」と言われたこともあった。
趣味の場だから楽しい。仕事での悩みもここに来て無心で指していると、何もかも忘れられる。
ここはゆったりした時間が流れている。じいちゃんたちのお人柄がそうさせるのだろう。
ここはいつしか私の心のオアシスだった。

こうやって人と指していた時代を思い出すと、やっぱり将棋道場で人と指すのが好きだ、私、と思った。



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