怪談王2019イベントレポ

8月24日、名古屋の東建ホールにて開催された怪談王2019の見学にいったので、その様子をイベントレポートという形で残しておく。
出演者の皆様について、以下敬称略で綴らせていただく。

「怪談王」について


最恐の怪談師を決定するべく、怪談を「構成力」、「パフォーマンス」、「怖さ」、「間合い」などの項目から点数化し、作家・山口敏太郎の総指揮のもと行われるトーナメント形式の怪談バトル、それが怪談王だ。
初回は2016年に愛知県犬山市の博物館明治村で開催され、以後名古屋の劇場やホールで開催され、4年目となる今回古屋市丸の内の東建ホールで開催された。
 北海道・東北ブロック、関東ブロック、東海ブロック、関西ブロック、中国・四国ブロックの5つのブロックで地区大会が行われ、各ブロックを勝ち抜いてきた精鋭8人が集うのがこの決勝大会である。
 決勝大会のメンバーは大赤見展彦(ナナフシギ)、渡辺裕薫(シンデレラエキスプレス)、渋谷泰志、由乃夢朗、志月かなで、竹内義和、早瀬康広(都市ボーイズ)、三木大雲の8名。
怪談イベントでタイトルを獲得するような有名怪談師ばかりだ。
 今回の怪談王決勝大会はトーナメント形式をとっている。1回戦第一試合から第四試合まで行い、その後準決勝、決勝というような形をとる。決勝まで勝ち残った出場者は3話分話すことになる。
 
今回の怪談王2019の舞台となる名古屋市丸の内の東建ホールはほぼ満席で埋まっていた。
前日の急に思い立ち、前売り券を買った自分は一番後ろの席。
場所としてはかなり悪い席だった。
若干の不満を覚えながらも自分の行きあたりばったりの計画性のなさを呪い、始まるまでの数分間、携帯を触りながら静かに待つ。

 今回の審査員はウルトラマンティガなどを手掛けた脚本家の小中千昭、伝説のホラーゲーム「クロックタワー」を手掛けたゲームクリエイターの河野一二三、金城学院大学文学部教授の小松史生子、声優の野水伊織という豪華メンバー。

怪談王2019決勝大会


まずトップバッターを務めたのはお笑いコンビ「ナナフシギ」の大赤見展彦。彼が話したのは自分の卒業アルバムの集合写真の話、友人の引っ越しの話など、短編の小話をいくつか。自身の苗字と自身の家系が短命である、そして大赤見という苗字が怪談王決勝大会の地、愛知にゆかりのあるものであるという、今後の話の展開を見せる戦略をとり、会場の注目と、期待を誘った。
対するのはお笑いコンビ「シンデレラエキスプレス」の渡辺裕薫。こちらは正統派の怪談を語る。友人の僧侶が体験したマンションのエレベーターでの怪談話。「The 怪談」というような正統派怪談だった。
一回戦第一試合の結果は、渡辺裕薫の勝利。正統派怪談が評価を受ける結果となった。
個人的には大赤見の愛知にまつわる怪談が聞きたかったが、審査員の心には響かなかったようである。

一回戦第二試合は先手・渋谷泰志、後手・由乃夢朗。ベテランの渋谷が話した怪談は人形怪談。人形のもつ不気味さと、話の終盤に登場した人体のある一部に底恐ろしさを感じた。一方若手の由乃が話したのは香川の彼女の話。今でもこの怪談を話すと由乃の元へその霊が現れるという、まさに身を削った怪談を披露した。
一回戦第二試合の結果は由乃夢朗の勝利。実在する地名を話に盛り込んだことで、より一層話のリアル感が増し、より深い恐怖感を演出することができた、という点が由乃が勝った大きな要因だろう。また今なお続くという点にも恐ろしさを感じる。

一回戦第三試合は先手・志月かなで、後手・竹内義和。今大会で唯一の女性出場の志月。彼女が話した怪談は群馬の怪談。志月の語る怪談は怪談というよりも一人芝居という方がしっくりくるきがした。それほどまでに演技力が高く、話に人を惹きつけるような魅力があった。今回の大会で鳥肌がたったのは、唯一彼女が語った怪談だけだった。彼女が優勝するに違いない、そう思うほど自分の中では圧倒的だった。
後手の竹内は子供の頃の肝試しの話を語った。子供がもつ無邪気な悪意と、どんでん返しのオチ。話の構成は抜群だった。
一回戦第三試合はベテランの竹内に軍配が上がった。自分は志月が勝ったものだと思っていたため、この結果は正直ショックだった。だが、審査員による公正な審査のため、この結果に物申すこともできない。二回戦以降、彼女がどのような怪談を語るか気になったが、いずれ彼女自身のライブで語られることを楽しみに待つことにする。

一回戦第四試合は先手・早瀬康広、後手・三木大雲。今大会で私が一番楽しみにしていた組み合わせだ。というのも、自分は早瀬がPodcastで配信している「都市伝説 オカンとボクと、時々、イルミナティ」のヘビーリスナーで、早瀬の大ファンだからだ。
また一方で三木の「愛犬家連続殺人事件」にまつわる怪談が実話怪談の中で一、二を争うほど好きな怪談で、それを知って以来三木の怪談を(youtubeでだが)よく聞くようになったこともあり、どちらの出番も心待ちにしていた。
早瀬が語ったのは「人怖」という、幽霊の怖い話ではなく「人間」の怖い話を語った。内容は仕事で出会った霊能力者の話。霊能力者が話す場面では身振りを加え、より恐ろしさが伝わってきた。
後手の三木が語ったのはマンションに住むある夫婦が霊障に悩まされる話。正統派の王道怪談であり、説法のような語り口が印象的だった。
どちらの話もハイレベルで甲乙つけがたいものであったが、一回戦第四試合の結果は三木が勝利。

二回戦に駒を進めることになったのは、渡辺、由乃、竹内、三木の4名となった。
果たして最恐の怪談王の称号は誰の手に渡ったのだろうか。


今回の怪談王2019の決勝大会の様子はホラーSVODのOSOREZONEで独占配信中されているようだ。
気になった方はぜひこちらをご覧になってはいかがだろうか。

 怪談王2019の個人的な総評

どの語り手の話も怪談として面白く、楽しむことができた。一人十分という持ち時間の中、実話怪談という枠組みで、全国から集まった怪談の語り手が用意した珠玉の怪談を互いにぶつけ合うという、血湧き、肉躍る怪談バトルに立ち合うことができたのは非常に光栄だった。
 自分が「明治怪談」として語るのはあくまでも創作実話風怪談であるため、怪談王に出ることはかなわない。
だが野望はある。
願わくは来年私もあのステージの上に立たんことを。

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