大学の時に宗教団体の学生組織に勧誘された話

2022年7月8日。
安倍晋三元内閣総理大臣が演説中に凶弾に倒れた。
安倍元首相を狙撃した山上徹也容疑者は「特定の宗教団体に恨みがあり、その団体と関係の近い安倍元首相を狙った」と供述していた。

当初は大手マスメディアは公表していなかったが、その特定の宗教団体とは世界平和統一家庭連合(旧通称:統一教会)のことだった。

統一教会は全国の各大学(有名大には必ず)に学生組織を置いている。

今回はその統一教会の学生組織に学生時代に勧誘をされた話を書きたい。


大学1年生の夏前のちょうど今頃の季節、5限の授業を終えた私は、図書館で本を借り、家路につこうとしていた。

時刻は19時をまわり、普段は人で賑わっているキャンパス内もまばらだった。

空腹もあり、早く帰ろうと足早にキャンパスを去ろうとする私に、爽やかイケメンの大学3、4年ともみえる男子学生が声をかけてきた。

「こんばんは! 1年生か2年生の方ですか? 学生団体で、学生の生活の調査をやってるんですけど、今ってお時間大丈夫ですか?」

急に話かけられ、きょどる僕。
大学1年生の頃の生粋の田舎ボーイで典型的なお上りさんだった私はキャッチとかこの手のアンケートに慣れておらず、咄嗟に言葉が出なかった。

「5分くらいで済むので、ぜひ!」

何も言えず、黙ってうなずく僕に、爽やかイケメンさんは質問を始めた。
質問の内容としては、「どうして早稲田を選んだのか?」、「所属学部は?」、「出身は?」、「サークルは何やってる?」等の当たり障りのないものだった。
しどろもどろになりながらも答えた私に、爽やかイケメンさんは唐突に自分の所属している学生団体について話始めた。

「うちの学生団体はボランティアやってて、地域の清掃活動とかしてるんだよね。あと国際交流で韓国に研修しにいったり、アカデミックな面もあるから、真面目な君にはきっと向いてると思う。ラウンジで集まって話したり、ご飯食べにいったり、アットホームな感じでやってるよ。ちょうどこれからご飯食べに行くんだけど、一緒に来ない?」


あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

「おれは奴にアンケートを取られているかと
思ったらいつのまにかサークルに勧誘されていた」

な…何を言っているのかわからねーと思うが…

おれも…何をされたのか…わからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…


というような具合にいきなり勧誘が始まったのである。

「あ、お金のことは安心して!君がきてくれるなら歓迎会ってことで、うちの団体が出すから気にしなくていいよ!」

「いや、寮でご飯残してもらってるんで…」

僕はボソボソと呟く。

「そっかー、残念だな。あ、じゃあ時間少しある? 10分くらいでいいからさ、うちの団体についての話聞いていってよ。時間は全然取らせないから」

「いや、ちょっと急いでるんで…」

「いやいや、ほんとに少しだけだから! 今うちのメンバー集まってて面白い人もいっぱいいるからさ、ちょっときてよ!」

「じゃあ少しだけなら…」

岐阜から東京の街に飛び込んだイモ男に、強引な勧誘を断わるスキルはなく、連れられるがまま学生会館のラウンジに向かう。

連れられた先には男女5人が集まっていた。
外見的な特徴はこれといってなく、本当にどこにでもいそうな大学生という感じだった。

席に座ると、先程僕を勧誘した爽やかイケメンさんが、パソコンを取り出し、パワーポイントを開いた。

どうやら団体名は早稲田カープというらしい。

「カープってあるけど、別に広島ファンの集まりとかじゃないから大丈夫だよ。僕巨人ファンだし」

この男は心を読めるのか?
考えていたことをさっと言い当てられ、恥ずかしく思った。

内容は先程口頭で説明されたとおり、
ボランティア活動を行なっており、早稲田祭では活動報告と喫茶店を兼ねたスペースをやっている。
アカデミックな面もあって、毎年韓国に研修旅行にいき、スピーチ大会や交流会を行なっている。
他大学にも同様の団体があり、大学間での交流も深い。

アイ○ックのようなものかな、と思い軽く聞き流していた。


団体の設立背景の説明では、文鮮明という早稲田に留学していた韓国人が設立をし、団体の目的は「原理を追求して世界平和に近づくこと」であり、そのため勉強界などを定期的に行なっているという。

このあたりから、この団体に疑問を感じ始めた。
原理?世界平和?
学生団体でそんな規模の大きい理念を掲げるか?


怪しさを感じ始め、一刻も早くこの場を去りたい頃にちょうど文キャン前のサイゼへと移動することになったので、頃合いを見計らいダッシュで逃げ出した。

逃げるために全力ダッシュをしたのは後にも先にもあの時だけだろう。

家に帰り、スマホで文鮮明のことを検索すると、出てきたワードは「統一教会」。
カープで検索しても広島カープしか引っかかってこないが、「統一教会 カープ」で検索すると、Collegiate Association for the Research of Principles=原理研究会がサジェストされた。

ディグればディグるほど、統一教会にまつわるヤバい噂が出るわ出るわで、逃げ出した自分を全力で褒め称えるとともに事の恐ろしさに慄いた。

この件で何が1番恐ろしいかというと、安全なはずの大学のキャンパス内で、宗教団体の下部組織による勧誘活動が堂々と行われていた、ということである。

宗教団体が学生団体の皮を被り、何も知らない純朴な若者たちを勧誘し引き摺り込むのだ。

たまたま自分は怪しさを感じ逃げ出したが、そのまま食事に行き、彼らと対話を続けていたらどうなっていたかわからない。

恐怖は常に身近にあることを実感した出来事だった。

現在でも早稲田カープは学生団体としてボランティア活動を主に活動を続けているようだ。
自分のような田舎から出てきたばかりの無知な学生が餌食にならないことを切実に願うばかりである。

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