苗字への主観を集めてみた-1

こんにちは。あざばて。( https://twitter.com/bateaza )です。苗字が趣味です。
いきなりだが、苗字のありふれ度合に関するアンケートを取ってみることにした。

日本の苗字ランキングの11位から20位までの予想を書き込む」というものだ。今も回答は受け付けているので、暇な人はここから投稿してみてほしい。どしどし応募してほしい。こういうデータは多いほど面白い。
この記事には大いにネタバレが含まれるので、回答する際は記事を読む前に回答することを推奨したい。



経緯

先日、友人と話していた時に、「古賀ってそんなにいないんですか!?」「難波ってそんなにいないんですか!?」というフレーズが飛び出してきた。

古賀」をトップ20に入っていると感じた彼は福岡出身。
難波」がトップクラスに多いと感じた彼女は岡山出身であった。

この感覚は、出身地に集中する苗字と相関がある。古賀は九州北部、難波は岡山県に集中する苗字で、それぞれ県内では3位・11位に位置する非常にありふれた苗字なのだ。全国順位はそれぞれ200位くらいと500位くらい。

無題

   ↑難波姓の集中具合(引用元:「苗字マップ」立命館大学)

人間だれしもが全国トップの苗字を覚えているわけではないし、自分の身の回りでやたら見るなあという苗字を覚えていても、それが実際にはどれくらいの割合でいる苗字なのかを知っているわけではない。世の中の人々は日本の苗字ランキングトップ10を覚えていない
私とて、「辰巳」は身の回りでは20番目くらいに多い苗字なのだが、奈良に集中する苗字だと知ったうえで全国順位500位以内には入っているだろうとつい最近まで思い込んでいた。実際には1500位くらいだ。嘘やろ? クラスに一人はおるぞ。


結果と分析

10/7現在、回答は17個ほど集まった。
回答者の所在地はざっくりと、
東京都:4人 その他関東地方:4人(埼玉2・千葉2)
大阪府:1人 その他近畿地方:2人(奈良1・兵庫1)
福島県:1人 静岡県:1人 岡山県:1 福岡県:2
不明:1人
という内訳だ。もちろん、居住地が幼少期と今とで変わっているという人も多く存在した。北陸・甲信越と北海道・沖縄が存在しないが、おおむね全体を広くカバーできている。もっと多くのデータがあれば面白そうだ。


ランキング

選出者が多かった苗字をピックアップしてみる。

1位:「吉田」8人
人口比ではわずかに東北地方に多い傾向にあるが、全国どこででもみられる苗字の代表格だ。全国順位は11位。正解者多数だ。圧巻のランクイン。
2位:「佐々木」7人
打って変わって今度は東北地方を代表する苗字。7人中5人が東日本からの選出であった。西日本の回答者は、身の回りにあんまり居なさそうなのだが、二人も選出者がいて個人的には驚いている。「最も多い漢字三文字の姓」であることが有名だからか?
3位:「木村」6人
青森県にきわめて集中するくらいで、他ではどの地域でも見られる、かなり地域性の少ない苗字。全員が東日本からの選出であった。

ここまででは、地域性はそこまで出ているような感じはしない。
では、地域性が出ている回答とはどのようなものだろうか。
特徴的な回答を見てみよう。

「三浦」2名
回答者は千葉県・東京都の2名。東京都の回答者のほうは幼少期を東北地方で過ごしている。三浦は東北地方に集中する苗字で、全国順位は50位くらい。東北各県では10位台にランクインしている。
11~20位という上位の苗字を思い浮かべた時にこれを思いつくのは、東北~東日本の証左であろう。西日本に住んでいると、なかなかこの苗字は思いつかない(中国地方にはそこそこ居るが……)
こういう、ベスト100あたりに入っている苗字への印象が地域によって変わるだろうことを確かめたかった。今回の模範のような回答である。

「石井」1名
全国順位は40位くらい。ほかの地域でもよく見かけるレベルではあるが、関東地方に集中し、東京や千葉なんかではトップに近いありふれ苗字だ。選出者は福岡県の1名。ただしこの回答者は関東に住んでいた経験があるので、何も不思議ではない。

「西村」2名
選出者は兵庫県・静岡県の2名。ただし静岡県の回答者は幼少期を三重県で過ごしている。西村は近畿を中心に西日本に多く分布する苗字で、トップ10に入っている県も多い。これも実情に合った回答の分布だった。

「岡本」2名
選出者は兵庫県・岡山県の2名。これも関西を代表する苗字だ。北日本では全くといっていいほど見ない苗字で、全国順位は50位くらい。しかし近畿から中国地方にかけては10位前後にランクインしている県が多数ある。ぼくも苗字への知識が無ければ確実にこれを入れて回答していただろう。


それぞれの回答を見てみる

居住地別に、どんな苗字を思いつくか見てみよう。

東北
東北に住んでいる人の回答には、「斎藤」「遠藤」「阿部」などが含まれた。どれも全国ベスト50に入るありふれ苗字だが、特に東北を代表する苗字たちで、東北では本当にトップクラスに多い。
個人的には、近畿では本当に見かけないので、「遠藤」やら「阿部」やらがランキング上位に居るのをまだあまり信じていない。自分が回答するならこの辺りは確実に入れないのだが、東北では容易に思いつく苗字の筆頭なのだろう。非常に興味深い。

関東
面白いのは埼玉県の選出した「新井」。これは埼玉~群馬に非常に集中する苗字。
また、「金子」は関東に居住経験のある人が4人選出しており、他の地域からは選出されていない。全国ランキングは50位くらいだが、金子は関東地方に集中する苗字。そのほかの地域では字面があんまり多そうに見えないこともあってなかなか思いつかないだろう。
「清水」も関東圏から3名が選出していた。これも関東圏に多い苗字だ。

東海
この人物は幼少期を三重県で過ごしているためか、「西村」「中西」「奥野」などの関西型の苗字を多く挙げている。
思いつく苗字が「水野」「大石」などの東海型の苗字ではないようだ。

近畿
最も回答が迷走していたのはこの地域だ。
特に大阪府の回答者1名は、その回答のうち1つも他の回答者と被っていない
という快挙を成し遂げた。快挙ではない。身の回りの苗字どうなってんだ。
ただし「今西」など、近畿圏でなくては思いつかなさそうな苗字もあった。
奈良県の回答者は、「渡辺」「斉藤」「佐々木」「安藤」といった、近畿地方らしからぬ回答を行っていた。「岡本」とか言わないんだ。

西日本は、東日本に比べて苗字の種類が多いといわれている。「よくある苗字」のあるあるが共有しづらいのかもしれない。東北がかなり「らしい」回答であったことにもうなずける。

中国
ここもかなり面白い回答だった。回答数は1名のみだが、「もっと先に思いつく苗字あるだろ!」な苗字が並んだ。「岡本」を除いて他の回答者と一切被りがない。この人の周りの環境のおかげだろうか?
「久保田」「岩崎」など、身の回りにあまり多そうではない苗字もあったが、これらは全国ランキング100位以内に入るので、メディアなども含めてよく見かけるものだろう。
全体的に、「谷」「橋本」「岡本」「平田」「河本」など、西日本型の苗字が並んだ。このあたりがまず思いつく、と言われれば、関東や東北の人々は首を傾げるだろう。

九州
まずは福岡県の回答者が選出した「古賀」に言及しておこう。
九州北部の人にとっては非常に身近な苗字であるらしい。
また、「永野」といった回答は、なかなか福岡県周辺でなければ思いつかなさそうだ。
また、もう片方の福岡県からの回答者は、幼少期を千葉で過ごしていたらしく、回答は千葉丸出しであった。後述する。
なお、少し前に引っ越すまでは福岡に居た(現在は関東)という回答者もいた。この人物の回答は「松本」「西田」「岡田」と、関西っぽい回答だった。


すごかった回答

これについても言及しておこう。「それ挙げるんだ!?」って回答もいくつか見受けられた。しかしこれらはほとんどが回答者の居住地と一致していることから、マジで上位に居るように感じられているのだろうと推測できる。

関口(200位くらい / 選出者:千葉)
埼玉県や群馬県などに固まって分布する。北関東では10位台や30位台にランクインしている。

板谷(1200位くらい / 選出者:千葉)
ちなみにこれは岡山の苗字。なんで?

早野(1600位くらい / 選出者:幼少期が岐阜)
岐阜県大垣市特有の苗字。この人物も幼少期に大垣市にいた。
大垣市では20番目くらいに多い苗字だ。

梅野(1600位くらい / 選出者:福岡県)
福岡県、特に八女市や久留米市などの南部に集中する苗字。
この人物は南部に縁が深いのかもしれない。

松丸(2000位くらい / 選出者:福岡(幼少期が千葉))
岡野谷(15000位くらい / 
選出者:福岡(幼少期が千葉))
さきほど「後述する」とした人物の回答。いくらなんでも市川市アピールが凄い。どちらも市川市に集中する苗字で、松丸は市川市では20位くらいにランクインする非常にありふれた苗字。松丸はいいとして、「岡野谷」はさすがに20位以内にはいなくない!?!?!?全国に100件くらいしかない珍しい苗字ですよ!?!?!?

多田(200位くらい / 選出者:大阪)
八木(200位くらい / 選出者:大阪)
藤沢(350位くらい / 選出者:大阪)
高島(350位くらい / 選出者:大阪)
松川(500位くらい / 選出者:大阪)
中本(500位くらい / 選出者:大阪)
今西(700位くらい / 選出者:大阪)
澤井(2000位くらい / 選出者:大阪)
この人物に関しては、何を基準に選出したのか、本当によくわからない。思いつくままに回答したのかな、と推測しておく。どれもたしかに、身の回りにいてもおかしくない苗字だ。奇遇にも、多田と八木を除けば、他の苗字はすべて、ぼくの友人知人にもいる苗字である。

伊丹(1700位くらい / 選出者:岡山県)
確かに岡山市に特に多い苗字である。ただ岡山市の中のランキングでも特別上位というわけでもないので、そんなに上位に居るように見えるかな? といったところ。この人物については次の回答の方が度肝を抜かれた。

行森(18000位くらい / 選出者:岡山県)
確かに岡山県岡山市に集中する苗字だけども!
よくある苗字ではなくない!?!?!?
そもそも「ゆきもり」と初見で読めるのかというレベルである。
全国に70件とかそのレベルの、むしろ珍しい苗字だ。

太郎館(全国に数件 / 選出者:静岡県)
これは悪ふざけだろう。

――と言いたいところだが、この苗字は三重県に分布する。この人物は三重県に住んでいた経験があるので、もしかしたら知り合いに居るのかもしれない。
にしても上位には居ないだろ。


まとめ

やはり、それなりに地域の特色は出た。「地元で見かける苗字を書け」と言っているわけではなくとも、思いつく苗字自体に地域性が出るものなのだろう。
これからもデータが増えていくたびにちょくちょく追記したり新しく記事を出したりするかもしれない。よろしくおねがいします。