『結婚の条件』を読んで、ううんと唸る。
今日は、私が感銘を受けまくった小倉千加子さんの『結婚の条件』(朝日文庫)について書こうと思う。この本は、大学のジェンダーゼミの教授が「あなたに読んでほしい。オススメ」と教えてくれた本だ。
先生、私まだ大学3年生なんですが。しかも、なぜ名指しで…。と当時思ったが、いざ読み出すと、止まらない止まらない。なんだこれ、面白すぎる。目からウロコが多すぎる。
この本は「結婚はこうすればできる!うふ!あは!モテる女はこうするのよ!」という類の本ではない。むしろ世の女性たちに「あなたたちは、だから結婚できないのよ」と一貫して冷静に、コミカルに、厳しく説いている本だと思う。
そう。結婚という究極の人間関係の構築の見方を通して「女」について様々な角度から論じている本が本書だ。ここではいろんな「女」が登場する。著者の言葉の表現は的確で、とにかく刺さる。痛い。でもめちゃくちゃわかる。
例えば
<結婚の条件は、女性の学歴に応じて「生存」→「依存」→「保存」と変化する>
著者は、学歴によって女性が結婚に求めているものは異なると指摘する。
端的にまとめると
高卒:結婚=生存
短大卒:結婚=依存
4大卒:結婚=保存
高卒者の女性の労働条件は、劣悪だ。著者は「日本にいて、健康で、しかし結婚しなければ食べていけない層が現実に存在するのだ」と言及する。
短大卒の女性たちが結婚に求めた条件とは「要するに、自分たちは専業主婦になるので、安心して子育てができるような給料をきちんと運んでくれる男」だという。
4大卒の女性が求めたことは「経済力は求めない。ただ私が一生働くことを尊重して、家事に協力的な人であれば」と答えたという。
私が特に印象的だったのは、短大卒の女性たちに対する言及について。
著者は短大卒女性を「高卒者の堅実さとも4大卒者のキャリア志向とも違い、家庭でのパワー拡大を目指し、自分の女性的ジェンダーの特権を決して捨てず、一見保守的な生き方を目指している」と指摘。
女性らしさ(女性的ジェンダー特権ともいう)をしたたかに使って、男性を籠絡していく女性を見るの、私は割と好きだったりする。けれどこれって保守的でもあるのか、と思った。積極的であるけど、保守に回ることに積極的だったのか、と。
そして、4大卒の女性たちが求めたことは、まさに私が求めていたことそのもの。心底納得させられてしまった。結婚して今の生活以下になることが、生活水準が上にならないことよりも嫌。だって今でも十分幸せだから。つまり保存なのか、と。
この章だけ読んでも、色々と考えさせられる部分が多くて、ううんと何度唸ったことか。そもそも、現代って恋愛結婚が主流だけど、本書を読むと、私は恋と結婚の相容れなさが如実に現れたように感じざるを得なかった。
結婚は自分以外の誰かと一緒に暮らすことだ。ライフスタイルや人生観がそのまま出る。それって「好き」だという気持ち一つで賄えるものなのか。
私にはそうは思えない。
やっぱりある程度、理想と現実のすり合わせができる「信頼関係」が必要だと思う。でもこのすり合わせをしている時点で、相手に対して冷静になっていないか。それって恋って言えるの?
高卒者も短大卒者も4大卒者も、結婚に求めた条件はすごくリアルだ。その条件のもと、恋する「好き」な人を見つけるって至難すぎないか!
「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」がいかに幻想であるのかは、また後日、書かせていただく。そもそも日本語の「恋愛」という言葉は好きじゃない。「恋」と「愛」は全くの別物だ。「恋愛」とかややこしい言葉作ったから、ごっちゃになって人間関係がドロドロするのだと私は思ってる。
脱線したので話を戻すと、なるほど、だから「結婚は難しいのだな!」と。こんな社会の現実があって、貴女達はこうで、相手の男性達はこう思ってるのよ、ま大変よね。と本書を読めば読むほど著者の言葉がわかりやすく伝わってくる。
本書は最後こんな言葉で締め括られている。
女子学生は、現在の自分の生活水準を保証してくれる男を探し、男子学生はユートピア的場所となる女を探す。しかし、そんな理想の相手はどこにもいない。いやしかし、理想の相手を見つけて幸福な結婚をしている人が現にいるではないか。自分はなぜそこから締め出されるのか。なぜ夢を追ってはいけないのか。夢を実現した一部の者への復讐の時代がこれから始まると、私は密かに覚悟しているのである。
当たっている。間違いない。この本が出版されたのは2007年。まだスマートフォンはそれほど普及していなかった。ネット(掲示板等)があったとはいえ、コミュニティも自分の知っている範囲の限られたものだったはずだ。
現在はSNSで様々な人の様子が一目で見られるようになった。インスタグラム、ツイッター、フェイスブック。オフラインで繋がっていなくても、簡単に見知らぬ人へアクセスできる。魅力的な人は、たくさんのフォロワーから支持され、時にアンチに攻撃される。
え、これやん!すごい小倉さん、的中しすぎ!と私は最後まで感嘆させられ、本書を読み終えた。この他にも、面白くて納得させられて、時に当たりすぎていて読んでいて辛くなる、そんな魅力的な内容がたくさん詰まっている。
私の感情ダダ漏れのこの拙い文章で、「ん、ちょっと気になるな」と思った人は、おそらく読んで後悔しない本だ。ぜひ、手に取ってほしい。
本日はここまで。
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