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酔って思ったことを連綿と書き残す④「酒豪先輩の凱旋」

書き初めの時間が19時36分。もう酔っているのは、珍しく昼飲みをしたからです。

ことの始まりは数週間前、東京時代の職場の先輩で、郷里が同じであるその人からLINEが来た。
「国元に帰ってきた。家の事情で夜はあけられないからお昼に会いませんか」

先輩は私よりも立派な酒豪だ。
東京時代は一緒に飲みに行ったことはなかったけれど、先んじて郷里に引っ込んだ私に、帰省した先輩が必ずお声をかけてくださって、数度酒席を共にした。
酒豪なのは東京時代に話には聞いていたけれど、実際にはものすんごい酒豪だった。
私も細やかながらに酒豪だと自負していたが、この人には勝てそうにもないと思ったのを覚えている。

加えてその人は、情報通である。東京通信というあだ名をつけるに相応しい、ネットワークに優れた人である。
そして、悪人アンテナに優れた人でもある。

私がその東京時代に、別の先輩Aさんがご当人のミスを「私に嵌められたものだ」と言いふらし、ちょっとした面倒ごとになったことがあったのだけど、その最中に
「一体誰に喧嘩売ってんだろうね。莫迦だね」
と云ったのも、その酒豪先輩だった。

私は職場では基本的にのほほんとしたキャラでいる。
誰の味方でもないし、敵でもない。出来る人でもないし、出来ない人でもない。頑張らないが、
「やらなきゃいけない時は人にやらせるように仕向けてやらない」

それを看破した「同じタイプ」の人。
私と違うのは、先輩には裏表がないことだ。先輩は出来ることはやって、やらなきゃいけない時はやる人だ。
もしかしたら、私が何かと「やらせた」から、見抜いたのかもしれない。今思うとだけど。
それ以外の経緯は思い至らない。

その出来事の顛末としては、悪人らしいやり口で喧嘩をのほほんと買収めた。
噂の真相を知りたい人たちがあれこれ調べて、A先輩が言い訳を募らせて自爆するのを待っただけ。
先輩は「莫迦だなあ」と笑ったように記憶している。
大したことではなかったから事細かなことはうろ覚えなのだけど、先輩の「誰に喧嘩売ってんだ」発言は、救われたのと、バレてるぞ、の両方の意味で忘れられないのだよね。
そのあたりから親睦がちょっとずつ生まれて、残ったというか。

私には郷里に友達がいない。
そこにその酒豪な先輩が越してきた。
つまり、最早友達っちゃあ友達なのだが、そんな先輩が現れた。
これは面白い、のだが。

とはいえご家庭の事情で夕方にはお帰りになるのだからせいぜいビールを1杯ぐらい引っ掛けるランチみたいなことになるのかな?
そんな可愛らしいことを思いながらお会いしてきたのだけど、酒豪を甘く見ていたよね。

待ち合わせで再会した時に先輩が「じゃあちょっとひっかけて、ぶらぶらしよう」とおっしゃった。
酒豪の「ひっかけて」は、他人曰くの「ガチ」です。

というわけで正午から4時間かけて、それでも酒豪にとっては軽いお酒を10杯ずつ酌み交わして帰ってきた。
夕刻が迫ってきて、あと1杯ぐらいかな、というタイミングで、足りないねえ、と思ったのか、先輩は日本酒をガッといって、遅れつつも私はジョニーウォーカーのロックをガッといった。持ち酒のなくなった先輩は、さらに酒を購って、ガッといった。

そんなケラケラした状態の時に、自分→先輩→アレの中の人たち、というすごい話が出てきて、LINEで先輩がそのアレの中の人になんやらしてた気がするのだが、ジョニーウォーカーをガッといった私には、ちょっとよくわかっていない。結末も分からないまま終わった。嘘でしょ?と思ったが、アニメを見ていない先輩からそんなガチな名前がガッと口をついて出るはずもない。夢ではなく、どうやら私は愛する世界と繋がっていたらしい。先輩経由で。
世界は狭いのか、とほろほろとした。
そして、なぜこんな逸材が郷里にいるのだろう、これは面白くなってきたぞ、と思って、ひとりジョニーウォーカーのロックを、これを書きながら5杯ほど呑んでいます。
郷里で人と会って、こんな莫迦ができるようになったのだからね。それも、自分を見透かした人と。
それだけでも嬉しい。
酒豪は4時間では飲み足りないが、それでも全然いいよ。
面白くなってきた。

のほほんなんて彼女の前ではやりようもなく、それが面白いし、そして先輩そのものがとても面白いのだから。
面白い。
とても楽しいと思いました。

*※*

追記として。

私は不断はお腹も減らないし、なんかを食べたいという欲求がないのだけど、先輩と別れたあと急にお腹が減ってしまって、適当に入ったお店で塩ラーメンを食べました。

美味しい塩ラーメンってすごいんだね!
もうずっと、体のあちこちから塩ラーメンの残り香が漂っていて、なんだこれ、と思ってる。美味しいって罪なのだな、と思いました。

ちゃんと飯食え、と、別れ際に先輩に怒られたのだけど、うん、食べよう、と思いました。

なんとなく「今度東京で飲もう」みたいな話が、ケラケラした時にあったような気がするのだけれど、悪くないなあ、と思いました。


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