シルク・ドゥ・ソレイユ

観た。
一言で言い表わせる文章表現力を持ち合わせていないため、例の如く長たらしい感想を垂れ流すことになるが、敢えて言うのならば「素晴らしいものに心が触れること、それもまた素晴らしいこと」だと感じた。

*以下ネタバレ*

元々サーカスに興味を持ったのはダレン・シャンの影響で(この人またダレン・シャンの話してる)、そんな中世界一のサーカスの来日公演!という好機に恵まれ鑑賞できたことはとてもラッキーだった。

まずテント。サーカスと言えばこれ!と言わんばかりの存在感にテンションが上がったが、会場に入ってさらに大興奮。この空間に居るだけでアドレナリンが出る。余談だが、飲食販売やお手洗いの列は結構並ぶと覚悟していたのだが、すごーくスムーズでちょっと感動した。仮設トイレの綺麗さにも感動。地元の公民館のトイレより綺麗。

一点、鑑賞前にあらすじを見ておくべきだったなと思った。ストーリーテリングがメインではないので、「こういうことかな?」というふんわり理解(しかも推測)で話が進む。それはそれで面白いが、やはり"意図された"話の背骨やキャラクター性を知ることで、より制作側の思い・拘り・熱をダイレクトに感じられる気がする。

ミスター・フルールのさぁ〜ビジュアルがとてもすき。マッドハッターみたい。チャーリーとチョコレート工場のチャーリーみたいでもある。そういえば堂本光一さんのチャーリーは10月に帝劇(メモ)

【長い棒の】
単にミスター・フルールを捕える表現を浮き上がらせる小道具だと思って見ていたが、ここはサーカス。あれこれどれもショーパフォーマンス!つんのめるように倒れるのも後ろに向かって飛び上がるのも、受け手との強固な信頼がないとできないことで、なんだかそこに感動してしまった。

【でっかい輪っかの】
あんな風にぐるぐる回る感覚ってどんななんだろう。私がこの先80年生きる中でおそらくは一度も知り得ないであろう感覚を知っていること、その得も言われぬ尊さ…これがパフォーマンスの美しさを一層強く感じさせた。Disneyのターザンを思い出していたのだけどその理由がわかった。

【ファイヤーナイフダンス】
個人的大ヒット。心臓のド真ん中撃ち抜かれた。かっこよすぎる。かっこよすぎる。かっこよすぎる。私もこれできるようになりたい。どこで習えるの?調べたらハワイアンズで習えるらしい。笑えるほど地元。なお流石にノー着火らしい。まあね、そうだよね、分かる。でもファイヤーしたいよね…

今度はパラオやハワイで、炎への動物本能的な恐怖を感じるくらい間近で観てみたい。
それにしてもかっこよかった。シュッ!ってしたら炎がボオッ!って付くのとか魔法みたい。そういうの大好き…。床に炎がブワァッ!って広がるのあれヴィランの登場シーンみたい。そういうのも大好き…。最後に儀式のように、あるいは信仰のように、ファイヤーナイフを掲げて深く一礼したのを観た時は胸がギュンッてなった。そういうのも大好き…過ぎて泣けてくる。

【空中ブランコ】
エンジェル2人の。スイングのタイミングを2人で合わせることから難しそう。技の動きが速すぎてスローカメラで観たい。
空中にたった2人のパフォーマンス…。バディ?ペア?呼び方が分からないけどそんな2人の関係を思うと、尊さとは何か?その答えが見える気がした。フィギュアスケートなどのペアも同様だと思う。ブロマンス…は男性同士だから違うけど、恋でもない。共に過ごした時間と苦楽、その中で構築された尊敬と信頼に基づく精神的繋がり……今の私の表現力ではこれが限界である。一言では言い表すことができない。でもだからこそ外部者が触れる・荒らす・奪取するなんて到底できない。ここまで全部想像です でもそれくらい息があっていた

【シンガー】
上手には主に白いシンガーさんがいらして、素敵な衣装が良く見えた。でも歌声を聴いて思わず声の主を探すと、大体黒いシンガーさんだった。しかしお二人並んでいるのが一番すき。やはり見世物としてメインなのはパフォーマンスで、シンガーはステージの高いところから動かないけど、歌を響かせるこのお二人こそ正にシルクドソレイユ・テントの支配者だった。

【クラウン】
みんな好きになっちゃう。一挙手一投足可愛くて面白くてチャーミング。トイ・ストーリー3のダキバニが好きなのだけどこれはそれと同じベクトルのラヴ。あと、ステージに上げられたお兄さん!お兄さんもチャーミングだった。あの空間にチャーミングが溢れてた。

【トランポリン】
何がすごいって、少しでも軸がぶれたら固いステージに脳天から着地する危険性。
突如ミスターフルールがぐるぐる回って技決めたときめちゃめちゃ拍手した。鑑賞しているとつい見入ってしまい、周りの拍手を聞いて思い出したように拍手することがままあるのだけど、これに関しては2800人が手はおひざ状態でも一人で拍手してた。反射的に手が出た。

【フラフープ】
パフォーマーさんが比較的小柄な女性で、正直ステージに立つとなると背丈はある方が映えるなぁと思ってしまった。でも、指先までしゃんと綺麗で(そうしないとフラフープをキープできないのもある)素敵だった。床に置いた輪を足でちょちょいのちょいで身体に纏わせるの、小道具が最早体の一部なのだと感じられて良かった。

【布で飛ぶやつ】
名前がわからん。お兄さんが長身×全身真っ白×ブロンドの長髪と、まるで絵画から出てきたような崇高さを感じる出で立ちだった。それで美しい姿勢でポーズを取りながら空中を舞うんだから、ここは現実か?というレベル。なんというか、崇高だった。崇高。あんまり連呼すると安っぽく聞こえるな

【空中ブランコ】
これぞザ・サーカスなハラハラ感!興奮!規模の大きさ!
受け手のムキムキマッチョお兄さん2人がまたね~かっこよかった…。ずっと逆さ吊りでスイングしてたら頭に血が上りそう。白い妖精さんみたいな飛び手とムキムキマッチョワイルドお兄さんとが、TDSのブラヴィッシーモ!で出会うベリッシーとプロメテオみたいで素敵だった。交わらないと思えるほどに異なる2つが、伸ばした手を取り合う。フィナーレに相応しいスケール感。

【演出・構成】
なんて言葉が適格か分からない。シナリオと、パフォーマンスと、小道具や機械と、演者と、2時間にわたるショーのアップダウンと…そういったショーを構成する要素たちを上手くセットアップして纏め上げること。それが面白いと感じた。歌える人、踊れる人、空中を飛べる人、軟体技ができる人…個々が一流のスキルを持っていても、「このひとつの作品」の完成度はトータルで判断される。観客は足し算のカッコの中を一つ一つ評価するのではなく、計算が終わったイコールの先にある結果を完成度と捉える。いやわかんない。ショーのことなんて全然知らない素人感想だけど。でもでもとにかく、そういう点で演出家・構成家(?)は屋台骨なのだと感じた。生かすも殺すも倒壊させるも屋台骨次第。

いくらシルク・ド・ソレイユ要に作られたテントと言え、思いの他こじんまりとした中で色々な機械を格納しているのにも工夫があるのだろうと思う。使いやすく、しかしコンパクトに、かつ安全第一で、でも目立たないように。
紙吹雪は幕間中に片付けられているものと思いきや、そのまま。後半はステージを白く覆うそれらを効果的に使った幻想的な演出が観られたり、最終的なお片付けも面白くて笑っちゃうものだったりと、一つの演出を無駄なく&余すところなくエンターテインメントに昇華させているところがすごい。流石は世界一のサーカス。

行く前はダレン・シャン云々と騒いでいたが、正直すっかり忘れて鑑賞していた。街外れの古びた劇場でウルフマンが観客の腕を嚙み千切るところを見たら、それこそがダレンの気持ちになって鑑賞する時かもしれない。そんな日が来ることを望んでいるかと言われればちょっと流石に、首を、縦には、振れないのだが、もし友人と二人で観に行ってその終演後に「一人で帰ってろ。俺はここに残る。お前だけは、どんなことがあってもお前だけは俺の…(フェードアウト)」とかなったら「エッ待ってダレン・シャンと同じ展開だ!!!!これは行くしかないッ!!!!」と意気揚々に人混みを逆走すると思う。



何の話?



シルク・ドゥ・ソレイユ素晴らしかったです。本拠地はモントリオールらしいので、ぜひ現地でも見てみたい。巡業という公演スタイルにも心がくすぐられる。一か所には定住せず、行く先々でショーをするなんて面白そう!24/7で大勢と暮らしを共にするなんて私の精神死ぬかもしれないけど、似たような経験もうあったから何とかなる気がしなくもなくもなくもない。巡業の予定は2023年6月現在、ない。

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