面白さよりも安心さが求められる時代
昔から売れている小説はなるべく読むようにしているのですが、ここ五年ぐらいで、何か自分の中で違和感のようなものが生じてきました。
それは、『読んでも面白くない作品が増えてきた』ことです。
すごい個人的な感覚なので申し訳ないんですが、昔はそこまで面白くないなと感じる作品が少なかったんです。「なるほど、これはヒットするな」と納得感のあるものが多かった。
ところがここ最近は、「えっぜんぜん面白くないのに、なぜこれが売れてるんだろ」と首を傾げる作品が増えてきました。
自分の感覚がずれてきたのかなとも感じたんですが、漫画やアニメはそんなことはないんです。それらのヒット作品は面白く読める。なのに小説だけがそうはいかない。
ジャンルで分けると、ミステリーは大丈夫なんです。ミステリーは高確率で面白い。
問題は、お店系とかおいしいもの系の小説ですね。
そこまで深刻ではない、ちょっとした悩みを抱えた人たちが、個性のあるお店の主人に触れ合うことで、少しずつ癒されていくというパターンが多いです。
こういうのを好きで面白いと感じている方には申し訳ないですが、僕は面白さがよくわからないんです。
ストーリーの起伏もほとんどないし、たいして事件も起こらない。ミステリーのような驚きもない。
なのにそんな系統の小説が売り上げランキングで結構上位だったりするんです。どうしてだろうと疑問だったんですが、ふとしたところから答えが出てきました。
それはひろゆきさんです。
ひろゆきさん曰く『ユーチューブは面白いものをみんなが見ているわけではない。
悪い意味ではないけど、ヒカキンさんの動画の面白いものを5つあげてくださいといって上げられる人はほとんどいない。
あれは面白いことが重要じゃなくて、ヒカキンさんがやっているものを見ると安心するっていうラジオの文化だと思う。
面白いことをやらなきゃと思い込んでいる人たちがわりと失敗する』
これがすごい腑に落ちたんですよね。
ユーチューブの傾向と小説の傾向もかなり近いのかなと。
僕はずっと小説は面白さだけが求められていると考えていたし、ほんの少し前までは実際そうだったんです。
ところが今は小説に、『安心さ』を求める読者が増えてきたんですね。
物語に起伏がない単調な話が読まれるのは、そこに面白さではなく、安心さがあるからなんだと。ほんとラジオに近いんです。
そういえばハラハラドキドキするサスペンスや冒険小説がほんと売れなくなったと思っていたんですが、それは安心と真逆だからです。
安心感を求める読者にそういう面白さは必要ないんです。
お店や食べ物というのは安心感と直結する。キャラが身近なので感情移入もしやすい。読んだ後にほっとできます。
安心感を得られるかどうかという視点で見ると、バチっとあてはまるんです。
だから小説には『面白さ』か『安心さ』かに二極化してきて、安心さを求める人がさらに強まる気がします。
安心感のある小説というのは、これからの作家の新しい方向性ではないでしょうか。
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