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ウナギの呪い

長くてクネクネしたものが大の苦手なのに、鰻と穴子の蒲焼が大好きという一貫性のない私。

ある時、食卓に大好きなウナギの蒲焼が登場!(^^)!
やったー!とばかりにパクついた。
と…しばらくして、何かしら喉に異変。

ん!何か刺さった?
魚の骨の時と同じ対処法で、大量のご飯を一気飲みしてみる。
取れない。
食パンをギュッと固めて飲み込んでみる。
取れない。

時間が経てば自然に溶けてなくなってしまうかもしれない。
何の根拠もない気休めで自分を納得させ、その日は寝た。

翌日
朝一で確認するも、のどの違和感は昨日のまま。
何か、すごく気持ちが悪いし気になって仕方がない。

ご近所さんにその話しをすると「あらあー大変!刺さった骨って溶けてなくならんとってよ。そのままにしとったら、傷になって酷くなっておおごとになるって!」
※長崎弁のまま再現

えーーー!ほんとに?
ご近所さんの脅しにあっさり乗っかってしまった私は、速攻でバスに乗り友人お勧めの耳鼻咽喉科を尋ねた。

受付のお姉さん「今日はどうされましたか?」
私「あ。それが…ウナギの骨がのどに刺さっちゃったみたいで」
受付のお姉さん「え?ウナギ、ですか?」
「かけてお待ちください。」と言いながら明らかに、目が笑ってる。

診察をしてくれたのは、病院の老先生。
何となく嫌な予感。
「あーこりゃあ…結構奥の方かなあ~。良く見えんねえ~。」
だからね、若先生が良かったのよ。

蒸気のような麻酔をされて診察台へ。
見かけない器具を人の喉に突っ込んでは、「あー。こりゃあ~どこかね~見えんねえ~」ばっかりの老先生。

何をどうしても骨の場所さえ確認できないとなり、一旦、待合室で待つように戻された。

こんなんでほんとに大丈夫か?ジワジワと不安になって来る。

数分後
「こちらへどうぞ」と案内された先は、何と!「第1手術室」
えーーー!ナニコレ!ウソでしょ?

私が今日この病院を訪ねたのは、のどに刺さっているであろう、ウナギの骨を取って欲しい、ただそれだけのとてもシンプルな望みなのに…。

心の準備も出来ぬまま、仰々しい手術台に寝かされ、目を開けていられないほどの照明があてられ、あっという間に、グリーンの手術着を着た老先生と看護師さんに囲まれてしまった。

自慢じゃないが、出産以外でこういうシチュエーションになったことは一度もない。ウナギの骨ごときで、なんでこんなとこに来ちゃったんだろう~

心臓バクバクさせながらとんでもない緊張を強いられたのに、手術は約2分ほどであっけなく終了
「これですね~」と、目を凝らさなければ確認できないほど細い骨を見せられた。


私「おいくらでしょうか?」
受付のお姉さん「はい。今日は手術になりましたので、9800円ですね。」
私「へっ?」と、思わず聞き返す。
受付のお姉さん「9800円です」

この日、私は、死ぬまでウナギの蒲焼は食べないと心に誓った。

…はずだったのに。
誓いというものは往々にして破られるものである。

三女がLINEで「すごく美味しかったよ~」と、豪華なウナギの蒲焼の画像を上げて来た。
重箱に入ったふっくらつやつやのウナギの蒲焼が、「あんたも食べたら?」と手招きしている(ように見えた)

よし!
今日はウナギだ!
視覚的効果というものは実に恐ろしい。

土用の丑の日でもないのに、市場の中にある老舗のウナギ屋さんを目指す。
このお店は、店頭販売のみ。
戦後間もない頃から、蒲焼ひと筋で続いており地元では知らない人がいない。

ショーケースにずらりと並んだウナギの蒲焼
見るからに美味しそう~
私「すみません!一匹下さい!」
お店のお兄さんが並んでいる中の一匹をトングで引っ張り出し、薄板に乗せ、計りの上へ。
お店の兄さん「えーッと、3800円ですね。」

ん?今、3800円って言った?
見れば体長約35㎝ほどのこじんまりしたウナギ。
たっかー!

しかし、お店でちゃんとしたウナギを食べるとしたら、この位はするのかな…
何たってココは老舗だし、きっと美味しいに違いないし、たまには良いよね。
それに、ウナギはもう薄板の上だし、今更、予算オーバーだから買いませんなんて言える勇気ないし…
心の中の葛藤を強引に振り払い「それ下さい!」と言ってしまった。

待望の夜ご飯!(^^)!
半分にカットしたウナギを酒蒸しにしてふわふわを目指す。
炊き立てのコシヒカリにウナギを乗っけて、いただきまーす!

え…
小骨がいっぱい…
何か、ほんのり生臭い…

わーん。。

期待を裏切られるとはこういう事なのか。

こんな事なら、どこそこの何を食べれば良かった、とか
欲しかったあれを買えば良かった、とか
3800円が生かされなかったことに腹を立てている私。

ちっちゃいなあ~ワタシ。
とカッコつけてはみるものの、やっぱり悔しいものは悔しい。

残りの半分、どうしよう~
食べ物を粗末には出来ないし、かと言ってこんなに小骨が多いウナギを食べて、万が一また喉に骨が刺さったら…9800円だよ

念のため、愛猫に「食べる?」って聞いてみたけど、見向きもせずにどこかへ行ってしまった。

翌日、仕方がないので、ウナギを細かく切り(小骨が切れる音がした)フライパンでしっかり炒ってから佃煮風に味付けをしてご飯に乗っけて食べた。
もはや、ウナギの蒲焼とはかけ離れた「ウナギ風〇〇」みたいなもの。


もしかしたら、私はウナギに呪われてるのかもしれない。
(呪われるような仕打ちをした覚えは全くないが)

今日、別件で電話をかけて来た鹿児島の伯母にこの話しをしたら、「二度あることは三度あるって言うからね、あんたはもうウナギは食べんほうがよかよ!」と言いながら爆笑されてしまった。

どなたか、骨なしウナギの蒲焼をご存知の方、ご一報ください!


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