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擬態は「生きづらさ」という主観を救えない

こんにちは。藍川理桜です。
別にLGBTの話はしません、オタクの話をします。

みなさん、「擬態」をご存じでしょうか?

擬態
ある種の生物が自分以外の何物かに外見(色、模様、形)やにおい、動きなどを似せることにより、生存上の利益を得る現象をいう。その機能によって隠蔽的擬態、標識的擬態、種内擬態などが区別される。
[隠蔽的擬態 mimesis]
保護色ともいい、外見を周囲の色や模様に似せて外敵から隠れるものをさす。枯葉に似た羽をもつコノハチョウや樹幹と同じ模様のヤガの仲間、小枝と見分けのつかないシャクトリムシなどは保護色の例である。
(世界大百科事典 第2版より)

ふつうは人間に関して使われる言葉ではないようです。しかし、オタクは除く。

オタクはよく擬態をします。オタクであることを隠し、非オタであるかのように振る舞うのです。特に女性のオタクにとって、日常生活における「擬態」はかなり重要なスキルのひとつだと考えられています。
最近は社会全体がオタク趣味にかなり寛容になってきたと感じますが、それでもまだ学校や職場で「オタバレ(オタクであることがバレること)」したくないと思っている人は多いですよね。「うっかりオタバレしかけてひやひやした!」なんてのはオタクあるあるです。

かくいう私も、かつては「オタバレ」を恐れて擬態っぽいことをしていた時期がありました。かつてね。30越えると大抵のことはどうでもよくなります。しかし、一方で、街でみかけた見ず知らずの人の擬態を見抜いてしまうことはよくあります。誰が得をするのか知りませんが、わかりやすいものを3つご紹介します。擬態チェックのご参考にでもどうぞ(?)

・ドルオタの場合
アイドルオタクの人は、色使いの不自然さでわかる。赤とか青とか黄色とか、流行色でもないのにやたら鮮やかな色の小物を持っていたら、「ああ、推しの色なんだな」とにっこりします。アイドルに限らず、キャラクターがたくさんいてそれぞれにイメージカラーがあるアニメやゲームのファンも同じですね。「ロゴ入りグッズや缶バッチ・アクリルキーホルダーはつけられないけど……」という恥ずかしがり屋さんにとっては、擬態ではなく精一杯の自己主張だったりします。どちらも微笑ましいです。

・レイヤーの場合
コスプレイヤーさんですね。これは独特のメイクの仕方と厚塗りでわかります。普段のメイクの加減を見失ってしまっているパターンですね。特に、シャドウやダブルラインの入れ方などが、写真で綺麗にみえること優先なので、自分では確認できないような角度(斜め後ろとか)から見ると、まさに「舞台裏状態」になっていたりします……。服装や髪型とのアンバランスも特徴。
ギャルやゴスロリもお化粧が濃いですが、そういう人たちはそれが日常なので、常に全方向を警戒した完全武装なのです。

・ヅカファンの場合
宝塚ファンの見分け方に最近気づきました。劇場という名のポケストップの近く限定ですが。
私は演劇をよく観に行くのですが、下北沢の小劇場、TVにも出ているような俳優さんが出る商業演劇、2.5次元ミュージカルなど、そのジャンルによって客層や雰囲気は様々です。残念ながら宝塚はまだ劇場で観たことがないのですが(観たい!)、宝塚独特のマナーがあるということはなんとなく知っていました。
で、とある元宝塚トップスターが出ている商業演劇を観たとき、ソワレ(夜の部)終演後に劇場の外の壁際に沿ってやたらと良い姿勢で立っている女性がポツポツといたんです。「なんだろう?」と思っていたのですが、あれは「出待ち」なんですね。宝塚ファンの間には、出待ちは礼儀正しく静かに整列して待つというルールがあって、私語も厳禁だそうです……すごい……。ちょっと擬態とは違うかもしれませんが、醸し出すオータがただ者ではなかったので印象深かったです。

念のため書いておくと、私は「擬態」自体は全然悪いことだとは思っていません。オタクに偏見があるような環境では処世術として必要だし、有効でしょう。でも、趣味や好きなことを隠して生きていくのはけっこうしんどいので、ほどほどにしたほうがいいよ〜とも思います。自分が考えているほど周囲は気にしていないことも多いです。自分を歪めるより、環境を変えるほうがいい場合も往々にしてあります。あと、30越えると大抵のことはどうでもよくなります(2回目)。

それに、いくら上手く擬態してもわかる人にはいつかバレるので、そのへんは開き直ってしまったほうが人生楽しいです。そいつはきっと同じ穴の狢だよ! 

最後に、町田粥さんの漫画『ミキとマキ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』は、擬態をはじめとしたオタクあるあるが独特なテンションで語られていてとっても面白いのでぜひ読んでみてください。オタクではないのですが、「擬態する女子」を描いたはるな檸檬さんの漫画『ダルちゃん』もおすすめです。

ではでは。

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