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プレ・ゴールデンエイジに覚醒する天才性、恐るべき子供達

「プレ・ゴールデンエイジ」という単語に聞き覚えがあるだろうか。

3歳頃から6歳くらいまで、主に神経の発達が著しい時期を指し、ゴールデンエイジの前段階とされている。スポンジのように吸収するこの時期を生かすか殺すかで、今後の能力の伸びが大きく変わるとされており、子どもの理解の深度が尋常ではない深さになる一生に一度の時期である。今回、誰しもに訪れたこの「神がかかった成長」について、私の身近にヤバイ成長を遂げた人間がいたので、併せて紹介したい。

この時期の子ども達は、皆誰もが天才である。
※プレ・ゴールデンエイジについてご存知の方は②まで飛ばしてください。

①プレ・ゴールデンエイジ

先述したように3〜6歳前後の、ゴールデンエイジ突入の前段階とされる時期である。この時期の子ども達は新しい刺激を多く求める上に、大人が考える以上に自分が興味のある新しいことに対しての理解が恐ろしく早い。大人は物事を理解するとき、要素として分解して再構築して理解しようとするが子どもは違う。「やらせてみたらできてしまう」パターンがあるのだ。

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サッカーにおいて、「天才」や「神童」と呼ばれる子ども達はほぼ例外なく、このプレ・ゴールデンエイジの時期から、ボールタッチの感覚と人を使う感覚を遊びや簡単なゲームを通して体得している。勿論、この時期を逃しても習得できないことは無いが、同年代のライバルたちには相対的に差がつきやすい。

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スキャモンの発育曲線に沿えば、20歳までに体は上のスピードで順番に出来上がる。

何よりも神経の成長が早く、6・7歳ごろに成長率がピークを迎える。ゴールデンエイジとされる8〜12歳のうち、10歳以降はもはやオマケといっても良い。
親としては判断が難しい時期になる。言うようにやらせてみても、子ども本人に興味がなければ続かない。中途半端に継続すれば辞めどきが難しい。この時期を最大限活かすためにジレンマは避けられない。
さらにスポーツで言えば、メジャーであればあるほど生存率が低くなる。特にサッカーは、先述の「神童」と呼ばれた子ども達を何人も見てきたが、育成時代のふるいにかけられて消えていくのを見ると年代に見合わない残酷さが確かにある。

「『ゴールデンエイジ』なんて名前がついていても、実際何かに大成することなんて想像できない。そう簡単に天才は生まれない」私もそう思っていた。


私の13才下の三男の弟が生まれるまでは。

②国旗と手品(3〜4才頃)

三男の弟はどちらかと言うとインドアに育った。友達と外で遊ぶ程度のことは普通にあったが、私や次男のように部活やスクールでサッカーをしていたわけではない。性格は明るいが比較的おとなしいタイプである。

弟が3歳頃のとき、母が国旗のフラッシュカードを買ってきた。世界地図をお風呂に貼って覚える程度のノリで、ゲーム感覚で使えるものだ。カードの表面には国旗が、裏面には国旗のルーツと国の位置が記された地図が記載されている。

最初のうちは兄弟3人揃ってギャーギャー言いながら遊んでいた。「何この国旗のデザイン!笑」「国名長すぎる!覚えられん!笑」「この名前さぁ!かめんらいだーに出てた!(出てない)」・・・いや、正直飽きるだろうと思っていた。確かに見た目はカラフルでとっつきやすいが、ゲーム感覚といえども流石に勉強みたいにしか使えない。数日経つと予想通り、母とクイズ形式で遊びつつ国旗を覚えるルーティンがなんとなく始まり、飽きた兄貴どもはそのやりとりを遠くで見ているだけになった。

2週間ほど経った頃、いつも通り母と三男のやり取りを何気なく聞いていると白目を剥くハメになった。彼はいつの間にか190以上ある国名と国旗のデザインを完全に一致させることができるようになっており、更に1ヶ月後には地図上の位置とも結びつけてしまった。こうなると完全に立場が逆転する。弟(3)が母にクイズ形式で問題を出し、呆気にとられている母に全部教えるという構図が完成するまでそう時間はかからなかった。

そんなこんなで弟は国旗と国名を極めることを通して「人を驚かす」ことに興味を持ってしまった。ある日、弟が「にーちゃん、マジックしたろか?」と言って私の部屋に入り、いつの間に仕入れたのかトランプを取り出してきた。人生一回はマジックに憧れるのが「男の子」の性なんだろうか。カード当てに巻き込まれたわけだが見切り発車が過ぎたため当然失敗。「まあ、もうちょい上手くなってからまたやってや(・∀・)」と言い放ちその日は追い返した。

忘れもしない。3日後、彼がまた部屋にきた。日を空けずにきたなと思い振り返ると前回と違い手ぶらである。「何をしに来たのか分からない」顔をしている私を無視し、何も言わずにポケットから500円玉を取り出し、おもむろに宙に放り、完璧に消してきた。この3日でマジックの見せ方、技術、一発で成功させる方法を自分なりに練習してきたらしい。マジで未だにネタがわからない。しかし真に恐るべきは、この後彼(4)は一人で腕を磨き続け、小学生になる前に祖母に連れられた韓国旅行のクルージングで、カードとコインのトリックで外国人相手にその技を披露し喝采を浴びていたということだろう。一体何をどうしたらそうなるのか・・・。

こうして、国旗と手品で記憶力と指先の感覚を覚醒させた彼は、勝手に次の段階へ進んでいく

③折り紙(5?〜9才)

何がきっかけだったかは定かではない。弟はある時期から折り紙にハマった。最初は例に漏れず飛行機だったと思う。よく飛ぶ折り方と飛ばし方を教えた覚えがある。

その後私が実家のあった県の外の大学に進学したため、経緯は母と次男からの伝聞になるのだが、彼は完全に折り紙にハマったらしい。それはそれはハマったらしい。四六時中折り紙をいじっており、出歩く時も持ち物はカバンと折り紙、移動中の車の中でも折っており、外出先のレストランでも折っていたこともあったらしい。一周回って恐ろしい。

そしてある日、私が帰省すると彼はどえらいものを作っていた。「ダルメシアンとパピヨン」である。

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・・・見える。というかそれにしか見えない。あ〜みえるね〜よく作ったね〜なんてレベルは超越している。表面が白、裏面が黒の折り紙一枚のみで完結させており、切る貼る塗るといった加工無し、尻尾の先まで細かく再現されていた。

呆然と作品を見ている私に次男は「もうそんなの普通になってるぞ」と言い放つ。優に3桁に届く数を折り、本棚から溢れんばかりになった「作品」は、それまでの折り紙のイメージを完全に覆すものばかりだった。何だ。誰が仕込んだ。母を見ると「何もしていない。この間も専門書・・・みたいなやつを買ってくれって言われて・・・」要は自分でハマりに行ったと言うことらしい。

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完全にどこへ向かっているのか分からない感じではあったが、弟自身は脇目も振らずに折り続けており、全く迷いがなかった。ハマりにハマり、折り紙道の神である神谷哲史さんの分厚いデカい作品集を購入した後は、中身を全て網羅せんとする勢いだった。

そして、折り紙にどっぷり浸かった彼が10才になった頃、とんでもない流れでとんでもない場所に立つこととなる。

④10才の講師

折り紙界には年に1度、世界中のプロアマが一堂に会し講演会や展覧会を行う折り紙の「学会」なるものが存在する。その名も「折り紙コンベンション」である。そのコンテンツの中に、自分のオリジナル作品を披露した上で希望者に完成までの手順を指導する場があるのだが、彼(10)はその折り紙コンベンションで講師を募集しているのをサイトフォームから知ってしまう。ちなみに下はプロの作品たちである。

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本人のノリとしては「これってぼくも教えられたりするんかなぁ」程度だったものの、母からすればせがまれたようなものなので、現実を見せるために応募したらしい。その後運営からは何の連絡返ってこなかったため、母は「流石にスルーされたな」と捉えたらしい。参加費に加え、遠方から交通費と宿泊費を払って来る参加者もいるのだ。10才が教えますというのは無理がある。そうこうしてるうちに当日。あくまで参加者として会場にイン。

わくわくしながら会場を見渡していると、母が弟のネームプレートが鎮座した机を発見。・・・・・え?うそん?

あろうことか応募が通過しており、講師登録されていた。リストに並ぶ弟の名前と燦然と輝く年齢「10」。しかもどの講習に出るかは参加者の任意で決められるにも関わらず、予定参加人数を大幅に超える集客数。

かくして(恐らく)折り紙コンベンション史上初10才の講師が爆誕。

小学生の周りを大の大人が取り囲み、食い入るように手順を見るというとんでもない光景が出来上がった。そこそこ難易度が高いのか、コンベンション終了後ツイッターで練習する人がいる状態である。

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⑤覚醒、本当の原因

その後弟は中学受験を経て愛媛の寮制の中高一貫校へ入学した。今は厳しい寮の中で揉まれているらしい。サイトによっては偏差値70を超える学校だが、弟が勉強で頑張った以上に、ゴールデンエイジの時期にある種の才能が養われ覚醒したと考えている。

彼が勉強している中で、他と群を抜いて成績が良かったのが算数と理科だったそうだ。折り紙を極めてどうこうと言うには流石に年齢が幼かったのか、本気で勉強をする方へ方向転換したが、国旗で記憶力が、折り紙で空間認識力が覚醒したことでかなり応用が利いたようだった。

さらに手品、折り紙から何回もトリックを練習し、数え切れないほどの折り紙作品を何回も何回も作り続ける中で、常に手を動かし、指に刺激を与え続けていた弟は折り紙の学会で自分の作品を発表できるレベルまで発想力が向上していた。少なくとも折り紙に没頭していた頃の彼は、折り紙界では間違いなく天才の部類だった

スキャモンの発育曲線に沿うならば、プレ・ゴールデンエイジの時期に相当脳内神経が作られたのだろう。指の刺激と脳の関係については大脳皮質活性化に繋がる重要なファクターとして各所で取り上げられており、高齢者に関しては認知症防止にも役立っている。指体操でこの威力なら四六時中使っていた彼自身の効果はいかほどだったろう。


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