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【戦術】なぜ「トップ下」は死に絶えたのか(マニア向け)

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「代表的なトップ下の選手を一人挙げてください」

パッと誰が思いついただろうか。中盤から引いてボールを受けてドリブルやパスを使って前線へ効果的にボールを供給しつつ場合によっては得点する攻撃の中核。プレーエリアはファイナルサード。5レーン理論で言えばハーフスペースとセンター付近。監督の役割はひとまずバイタルエリアに侵入させる戦略を組むこと。別名シャドーストライカー・・・。

文字に起こすなんか凄いスペシャリストに見える。ただ冷静に見てみよう。これ「トップ下」だけの仕事じゃないよな?

①衝撃のダニエウ・アウヴェス

コパアメリカのブラジル代表の試合、36歳の彼はとんでもないプレーを連発していた。本職の守備を完璧にこなしながら、ボールを持ってバイタルエリアまで持ち上がり、相手の守備を抜き、必要であれば右サイドから中央まで斜めにボールを運び、サイドにボールを散らして攻撃の起点になっていた。その上でカウンターを喰らおうものなら本職モードで猛然と戻った。「なんでそんなところにいるんだ」という位置どりの連発。しかもそれが全て効果的であり、先述したトップ下の動きと類似していた。

DAZNで実況解説の戸田さん下田さんペアも「もうこれ・・・サイドバックって言うのやめましょうかね・・・」「ポジション『ダニエウ・アウヴェス』って呼びますか・・・」苦笑気味で完全に困惑していた。ただ、彼は偽9番をフルに使ったゼロトップ戦術時代のペップバルサでサイドバックから攻撃するという戦術的経験と、現在トゥヘルの下で5レーン理論による試合中の変則ポジションを体感している。その上でこの試合を通し、現代サッカーにおける攻撃の最適解を示していた。

②もはや「トップ下」はエリア名にすぎない

変則5バックが浸透していく中で、攻撃と守備両方に関わるウイング以外もマルチロールになる必要が出てきた。そもそも単純に考えて、サイドバックで守備をしていた選手が中に来ようが前線に混ざろうが、元々そこにいた選手はスライドするか別の役割を果たさなければならない。バイエルンが偽インテリオールでブイブイ言わせていた時代、両翼にリベリとロッベンというドリブルお化けが張っており、確実に1対1でほぼ勝算が見込めるという戦闘力から、変則フォーメーションになっても両サイドの前線に居続けられた。そんな化け物がいない限りは、とのポジションの選手がどこに来ようがローテーションを行う必要がある。

この記事の冒頭、皆さんが思い描いた選手はそんなマルチロールを活発に行い、攻撃だけでなく守備にも入れる選手だろうか。万一メッシを考えていたらそれは違うと言わせて欲しい。彼こそポジションが選手名になる数少ない選手の一人だ。

専属的なポジション名ではなく、もうエリア名なのである。「前線より一列後ろの位置」のことを「トップ下」と呼ぶ。それがポジション名になっているとすれば、そのチームは変則的にポジションを入れ替えないことが予想される。少なくとも中盤で入れ替えは発生しない。そうなるとフィールドの外だけが前後に上下しながら入れ替わるサッカーが関の山である。悪いとは言わないが、正直脅威を感じない。

しかもサイドを上下すると一時的に守備が2枚から3枚になる。ミスからカウンターを警戒するならば中盤は守備で残ることになるだろう。そのとき前線に向かう「トップ下」の選手が攻撃起点になることがバレていれば、そこを潰すか邪魔すれば攻撃は止まる。前線の人数を増やして攻撃するのであれば全員がパスを出せてシュートも打てる形がベストである。また、相手の守備が揃っていないカウンター気味の攻撃を中盤から開始するとして、守備が下がっている状態で人の足より速いボールを前線に出せば守備が上がることなく数的同数で攻めることになる。この時「トップ下」にボールを渡して組み立てるだろうか。恐らくいち早く前線にボールを供給するだろう。MSNやBBCがそうだったように、前線だけでパスとシュートをさせた方が速い。どのみち中盤が空洞化するのだ。トップ下は意味をなさない。

③高速化する現代サッカー

試合を圧倒的に試合するポゼッションを維持し、ポールを晒しながら相手を釣り出してスペースを作り攻撃する。世界をティキタカが席巻した後、天下を取ったのはショートカウンターだった。ゲーゲンプレスで奪い返し、局所的数的優位を作り出して波のように攻撃する。カウンターに対して効果的な方法はカウンターである。現在はポジショナルプレーと変則フォーメーションで守備も攻撃も有利にするハイブリッドな戦い方になっており、見た目のプレーがどんどん効率的に、かつ高速化している。

今までもそういう動きが無かったわけではない。ここ数年で言語化が進み、選手やチームの中で理解が進んだだけの話だ。ただそういった理解と再構築がサッカーをより効率的・組織的にし、個の力というよりも集団として強くなる。「判断が早く」、「パススピードが速く」、もちろん「縦への突破が速い」。それは脳の電気信号のようにシナプスが多い方が効率よく速くなる。「トップ下」が持っていた専門性を理解していれば、それを分解し各ポジションに分散し再構築する。もはや1人で組み立てられるほどトップレベルは甘くない。

総評

トップ下が試合をコントロールしたり、起点になる比重が高いチームを見かけなくなった。トップ下はエリア名で、その場所でプレーした選手全般を指して呼ぶ。ポジション「トップ下」は、戦術の進化と役割の属人性排除によりほぼ絶滅した。


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RioSam / サッカーライター

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超サッカーバカ。神戸大学経済学部卒国際教育・自然教育NPO所属の戦術批評家(関係無え)。初心者からガチ向けまでつらつらと書きます。ツイッターからはあらゆる内容発信してます。基本長文で中身がっつりになります。※無断転載、スクショはお控えください。

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RioSam / サッカーライター

だんご三兄弟の一番上。次男は白川郷で料理人。三男は愛媛で全寮制。なかよし。|▶️二度見するネタからマニアな話まで(戦術解析、プレー解説、注目選手紹介、インフォグラフィック作成)|▶️兼業からプロへ|▶️フットボリスタラボ15期生|riosamno10@gmail.com
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