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「弱い」バルセロナ、本当の力。(前編)

私は16年クレだが、「バルセロナは強い」という考えでいるファンは、そろそろ認識を改めた方がいい。

10年前、バルセロナは鬼のように強かった。

グアルディオラという名もなき監督がスペイン初の3冠を達成し、欧州を席巻した。

アンリがいて、エトーがいて、メッシがいた。中盤はイニエスタとシャビが蹂躙した。襲いかかる強豪に65%の支配率を誇りながら圧倒するサッカーに全世界が勘違いしたろう。

「バルセロナには勝てない」

だが、シャビが言うように、「クライフが来るまでは転換期はなかったし、ロナウジーニョが来るまではバルセロナは大したことなかったんだよ。暗黒期だった。」

いい時代を生きすぎた。

長すぎる奇跡がチームを大きくした。バルセロナの歴史を辿らずに「強さ」だけに憧れたファンがつきすぎた。もういい加減に認めよう。

「バルセロナは弱い」

前編ではオサスナ戦に焦点を合わせる。後編は、どうしてこうなったかを改める。

①ベティス戦、オサスナ戦

19-20シーズンに入ってバルセロナは手こずっている。

メッシがいないからだのスアレスとデンベレがいないからだの、果てにネイマールがいないからだのと話が出ているが、違う。

そんなことは根本的な問題を見れば、本当に些細な問題でしかない。

ベティス戦でぶち込んだ5点の中でグリーズマンが2G1Aと大暴れしたこともあるが、今の彼らは状況さえ整えば得点できる力を持っている。

グリーズマンだけでなく下部組織叩き上げのFWも暴れられるし、さらにはサイドバックもハーフレーンに侵入させれば得点できることを証明した。

問題は、その「状況」を作れなければ沈黙することにある。原因はプレッシャーをパスでかわすという発想がないこと。グアルディオラが最も嫌悪した「持つためのボール回し」である。

ベティスもオサスナも「持たせる」という点では共通した狙いがあった。ただ前者に限っては守備意識にムラがありすぎた。最終ライン1枚で90分耐えるだけでは守備を保たせることができず、バスは勝手に退いてくれた。

ではオサスナはどうだったか。

②6分間で1点獲る覚悟

バルセロナボールで始まったキックオフ直後から、オサスナはデフォルトの4-4-2ではなく4-3-3で相手陣地に侵入。最終列とアンカーめがけて前線3枚を突進させた。左サイドに押し込まれたバルセロナは前線にボールを逃がすため、逆サイドのピケにクリアを任すが、エセキエル・アビラが直前に猛然と走って追いつきボールを弾き飛ばした。この間わずか27秒。

なんじゃかんじゃでオサスナのコーナーキックになり、前線に放り込むも弾かれ、セカンドボールの競り合いになった。ここまではよく見る。

その直後、ボールはファイナルサード付近まで上がっていたオサスナのSBエストゥピニャンの目の前に転がり、彼はそれをバルセロナ側のエンドラインへむけて思いっきり蹴り飛ばした。試合開始から1分15秒後のことである。

この時点からオサスナははっきりと1つの方針を示していた。

「奥に押し込んで、相手陣地深くで獲る。」

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直後のゴールキックでオサスナは前のめりに守備配置。これが試合を通して継続されることになる。

キックオフ直後からボールを落ち着かせることすらできていないバルセロナ、テア・シュテーゲンはロングフィードではなくピケへのパスを選択する。後方から組み立てる伝統の形だが、パスを出したその瞬間、先ほどクリアを阻止したアビラが間合いを詰め、ピケからロングフィードの選択肢を奪う。

セメドはR・ガルシアにチェックを受け、縦で受けたセルジ・ロベルトが潰される。完璧なスライドと守備連携だった。

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