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【シリーズ摂食障害Ⅲ・#6】 当事者への就労実態調査の結果

【シリーズ摂食障害Ⅲ・#6】 当事者への就労実態調査の結果
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害の症状が、当事者の社会生活に与える影響について連載しています。前回から、「摂食障害と就労」というテーマについて論じていますが、今回からしばらくの間、日本摂食障害協会による「摂食障害当事者への就労実態調査と社会復帰支援」報告書を読み解きつつ、当事者が抱える就労の困難と支援のあり方について、考えてみたいと思います。

1.日本摂食障害協会による調査とは


 日本摂食障害協会(以下、協会)は、摂食障害に関わる情報提供や啓発、当事者や関係者支援を行う、専門家有志を中心とした一般社団法人です。

 協会は平成29年度三菱財団助成のもと、摂食障害当事者の就労状況に関わる実態調査を行い、報告書(「摂食障害患者の就労実態調査と社会復帰支援 報告書」)を公表しています。本記事は、その報告書に基づき、独自の解説を行うものです。

 調査は、協会の理事・参与らが募り、郵送での回答があった91名(有効回答)、協会ホームページでのWeb調査に回答した195名(同)、当事者とのワークショップ(2回)を通じた回答19名のデータが用いられています。回答者の平均年齢は32.8歳、72.9%が現在も症状ありとしています。ちなみに、全回答者の中で男性は5名で、女性に偏ったデータであることに留意が必要です。

 回答結果は、数値化され統計的に処理されたものと、当事者の自由記述によるものとが含まれています。

2.調査結果の概要


 報告書の「摂食障害患者の就労実態①」の項目に、結果の概要がまとめられています。

 「摂食障害のために、仕事に関連した困難がある」とした人は79.9%、「摂食障害のために仕事探しの困難があった」(報告書では「仕事探しに困難を感じている」としていますが、質問の大意は“経験の有無”であり、報告書の表現は不正確)とした人は58.7%でした。

 「現在症状あり」と回答したものの中で、就労中の者は76.2%、「摂食障害のために仕事・アルバイトを辞めたことがある」としたものは約半数(58.2%)、フルタイムの仕事に就いたことがある」とした人は78.5%(2割以上の人がフルタイムの就労歴がない)でした。

 摂食障害が当事者の就労状況に大きく影響していることが、結果の概要からも伺えます。同時に、当事者の方がハンデを抱えながらも就労に取り組んでいる姿が垣間見えるように思います。

 次回から、報告書の内容を詳しく読み解いていきたいと思います。

(つづく)

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