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【シリーズ摂食障害Ⅲ・#3】 低体重と労作制限の実際

【シリーズ摂食障害Ⅲ・#3】 低体重と労作制限の実際
「サイコロジー・メンタルヘルス&日々のあれこれ」

 摂食障害の症状が、当事者の社会生活に与える影響について、各論に入る前に、まず、摂食障害による低体重に対して、社会生活における制限を医療がどのように考えるか、という点について、前回に引き続きご説明します。

4.ガイドラインにおける労作制限の実際


 ガイドライン(神経性食欲不振症のためのプライマリケア・ガイドライン 2007)に示された、やせの程度と労作制限について、画像をご覧ください(ガイドライン中の注や補足を省略したもの。私(りらの中のひと)が作成し、病院在職中に心理教育の資料として用いていたものです)。

 標準体重からの逸脱(やせ)の程度について表す、最もポピュラーな身体指標はBMI(ボディ・マス・インデックス)でしょう。体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められる数値で、22を標準値とし、25以上を肥満、18.5未満をやせすぎとします。

 例えば、標準体重の55%を下回ると、入院による栄養療法の絶対適応とされていますが、これは身長160cmの人であれば、体重30kgを下回るような数値であり、甚だしい低体重の状態であることは理解できるでしょう。

 摂食障害当事者の方の体重は、病状・病勢の変化や食生活の改善への取り組みなどによって、変動しています。実臨床では、ガイドラインに示された労作制限を、状況に合わせて強めたり緩和したりしながら、回復を見守ることになると思われます。

 労作制限は、病状の回復とるい痩の緩和のために“やむを得ず”行うものです。労作制限が長引けば、それだけ社会生活への影響も大きくなってしまうことはいうまでもありません。回復に向けたたゆまぬ取り組みが求められます。

5.標準体重の考え方


 先に示した、標準体重(BMI22)と肥満(同≧25)・痩せすぎ(同<18.5)の基準は、日本肥満学会などによる基準です。ただ、単純に身体的健康(例えば死亡率)だけを考えれば、最も望ましいのは標準体重よりやや上であることが、各種調査で示されています。逆に、日本やアジア諸国では、若年女性の痩せすぎが指摘されているのですが、上記基準では、若年女性のおよそ2割は痩せすぎとなってしまいます(例えば、健康日本21の各種報告書などに示されています)。体重と健康に関わる評価は、実態に合わせた柔軟な判断が必要だという指摘もあることを付け加えておきます。

(つづく)

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