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南相馬の風になって #訪問体験記

はじめまして!立教大学3年のりなです。今回私は4月5日から7日の3日間南相馬に滞在しました。

南相馬には何の関わりもなかった私は、大学の友人のたまみさんに誘われ今回のプログラムに参加しました。それはひとえに「興味関心へのフットワークは軽く!」というマイルールに従った結果です。

親に連れられ海外で暮らしていた小学校時代や部活動に明け暮れた中高時代では、ある一定の環境内で人と会い、価値観をつくってきたと思います。大学ではその境界から出て、いろんな人と会ってみたいと思い行動してきた私が、4年間のちょうど半分を終えたタイミングで訪れた南相馬で、感じたこと考えたことを中心に記録していこうと思います。

※滞在中にスマホを破損してしまったため、この記事に使った写真は友人たちが撮ったものになります。私はみんなが撮ってくれている間、南相馬の景色を一生懸命目にやきつけました、、


ロボットのまち

近年、南相馬はロボットの町として注目されつつあるそうです。南相馬での1日目はその由来となっている福島ロボットテストフィールド、通称ロボテスとよばれる施設を訪れました。

ここは新たな産業基盤を目指す国家プロジェクトの一環として始められました。インフラや災害現場などが再現されている広大な土地で、ロボットの性能評価や操縦訓練ができるといいます。

私達が行ったときは芝刈りロボットを見たり、小さなロボットと遊んだり、新型航空機を見たりすることができ、今までSF作品でしか見たことのなかったロボットとの生活が身近に感じられました。新たな産業としてのロボットは、新たに人と人をつなぐメディアのような役割を果たしているのではないでしょうか。

また、初日に驚いたのは移動中の車窓から見る景色です。お昼のカレーラーメンでお腹いっぱいの私の目にとびこんできたのは、畑や住宅地のすぐそばや海岸線にひろがる一面のソーラーパネルでした。首都圏では見慣れない景色に衝撃を覚えました。

原発事故後、福島県や南相馬市が企業と協力してメガソーラーを導入してきたのは、塩害で農作物が当分育たなくなってしまった土地を活用するためだそうです。脱炭素が目指される社会で再生可能エネルギーの導入は不可欠です。ですが、元々は人々の暮らしがあったと思われる場所にも設置されているパネルをみると、以前の暮らしがもう当分はもどらないことを示していているようにも見えました。

馬のまち、農業のまち

2日目は朝から坂本ふれあい牧場で、乗馬体験をさせてもらいました。ここの馬たちは南相馬で1000年以上続く相馬野馬追というお祭りに参加しています。震災やコロナで途切れたことはあるものの、馬のまちとして再開させなければいけないという思いから、乗り越えてこられたそうです。

馬とご対面するのは本当にひさしぶりだったので、厩舎から悠々と歩いてくる馬たちには圧倒されました。元々競走馬だったそうですが、とてもおとなしくゆっくり歩いてくれて、初心者でもなんなく楽しめました。甲冑も着せてもらい、馬の背に乗り風を肩で切る感覚は忘れられません。

その後、農家民宿「翠の里」で、ピザ窯づくりをお手伝いしました。これは地震で壊れてしまい放置されていたピザ窯を、民宿に泊まられた建築家さんが直して使えるようにしようと発案したことで始まったプロジェクトだそうです。

ここでは約20人で一緒に作業したり、お昼を食べながら、様々なバックグラウンドを持つ人がここに集まっているのだと知りました。市の職員、建築家、左官職人、会社員、大学生、近くに住んでいる方などとお話する中で、南相馬に惹かれて移住してきた人たちが多く、理由やここでしたいことがさまざまであると知り、自分の生き方を考える上で刺激を受けました。 

震災のまち

農家民宿「いちばん星」では当時市役所に勤めていた星さんから震災のお話を聞かせていただきました。

震災当時、私は海外に住んでいたことと小学1年生だったこともあり、この震災がどれほどの影響をもたらしているのかを知ったのは、帰国後テレビや学校の授業の情報からでした。

そのため南相馬に来るまで、そして星さんのお話を聞くまで、復興はハード面が整備されるにつれて、人々の関係性などのソフト面もだんだんと戻ってきていると考えていました。しかし、実際には震災直後避難した場所や、地域別の復興の進度などの違いは、今もそれぞれの心境の変化にも大きく影響しているのだと知りました。

以前と全く同じ生活を取り戻すことはほぼ不可能で、ハード面でもソフト面でも新しい形になっていかざるをえません。それを踏まえたうえで星さんいわく復興とは、そうした活動の先に皆が自分の地域に誇りをもてることだそうです。

おわりに

最終日は、訪れたみなみそうま移住相談窓口よりみちで、今回参加した5人で感想を話し合いました。初日は芝が敷かれた事務所の居心地のよさにただわくわくしていただけでした。しかし3日間を終えパンフレットや壁に貼られた作品、ポスターをじっくりみていくと、知っている顔の人や場所が浮かび、南相馬がユニークで温かい人達に囲まれた場所だとより実感しました。

ここまでロボット、馬、農業、震災という切り口から南相馬をみてきました。たった3日間風のようにここに暮らす人たちの活動を見てきたにすぎません。それでも人の温かみに惹かれ、その熱量が地域づくりの重要な栄養になってきたのだなと思いました。

今回訪れた場所の多くは、震災後移住者や地域住民によって新しくつくられたものです。行政、地域住民、移住者など外からの人たちが交流することによって生まれるブリコラージュ的な活動は、行政や企業主導の事業がはらむ問題をのりこえて、新たなまちづくりの形を提示しているのではないでしょうか。

*おまけ* 南相馬のすてきなお店!!

最後に、南相馬のすてきなお店を紹介して締めたいと思います。MYSHの方々、南相馬の町のみなさま、本当にありがとうございました。

「小高ワーカーズベース」では、町の新たな生業の現場をみることができました。ユニークな造りの建物の中には「iriser-イリゼ」というガラス工房があります。職人さんたちが実際に作業する姿も見せていただきました。ガラスに向けられた真剣な目線や、青白い炎、きらきら輝く透明なガラス細工をみられる空間は、時間を忘れて見入ってしまうほど魅力的な空間でした。

小高ワーカーズベース

ギフトショップKIRAでは、時計屋さん、花火師、養蚕などさまざまなモノづくりに携わってきた店主さんにお話を聞きながら、選りすぐりの特産品を見て回りました。ちなみに私が買ったものは、松本養蚕総本場のプレミアム100というはちみつと、福島シルクラボ株式会社のFシルクソープです。はちみつは10種類ほどあり、色によって風味が違うようで選ぶのがとても楽しかったです!ソープは名前のとおり、本物のシルクが入っているという珍しい一品です。泡がきめ細かく、何より自然由来の清涼感ある香りがとても気に入っています!(私だけかもしれないですが、カルピスみたいな香りがします笑) 



立教大学社会学部/ 関根凜奈

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