プロヴァンス1

サントマリー・ド・ラ・メールの祭礼

南仏を旅行中、ロマの聖地、プロヴァンスのサントマリー・ド・ラ・メールの黒マリア祭に行き合わせたことがある。

サントマリー・ド・ラ・メールの祭礼にはヨーロッパ中からロマの人々が集まってくる。黒マリアについては諸説あるが、ロマ民族の発祥地インドの女神サラスヴァティではないかという説がもっともらしく聴こえる。黒いのはマリアと同行するサラだからだ。サラはマリアの侍女だというが、ここでは既にマリアとサラは同格というか同一視されているように見える。


祭列を先導するのはカマルグ産の白い馬に乗った男たち。


後方から山車に乗せられたマリア像とサラ像がゆっくりと進んでくる。


マリアとサラの後ろ姿。


砂浜で。民族衣装の親子。


このツアーは帰りがけにちょっとした事件に遭遇した。
迷子のおばあさんを拾ったのである。彼女はオランダ人だった。バスツアーに参加してアムステルダムから一人で来たが、自分のバスがどれだか分からなくなったのだという。なにしろ町の外の道路には各国の観光バスがぎっしり停車しているのである。おばあさんでなくてもツアーからはぐれたらどのバスに帰ればいいのか分からなくなるのは必至。おばあさんはフランス語がひとことも話せないうえ、ツアー名も、さらには宿泊しているホテルの名前も覚えておらず、ツアー要項の書類もホテルに置いてきてしまったという。ただひとつ、宿泊地が近郊の町アルルだということだけは覚えていた。
私たちのツアーはアヴィニヨン発だが、帰り道にアルルに寄ることになっていたので同乗させてあげようということになった。アルルの警察署に下ろしてツアーからの連絡を待つか、ホテルを探して貰おうというのである。

おばあさんを乗せて一人増えたツアーはサントマリーを後にし、ランチをとるため街道沿いのレストランに入った。ランチはツアー料金に含まれ、つまり街道沿いの契約レストランで食べることが決まっている。既に大型の観光バスが何台も停まっている店先でバスを降り、ツアコンが一人増えた旨をギャルソンに伝えていたときだった。突然おばあさんが大きな声で叫んだ。

「あの人を知ってる!」

なんと、彼女の参加ツアーもこの店でランチで、一足先に店に入っていたのである。おばあさんは何度も礼を言って元のツアーに戻っていった。ちょっと感動的な別れだったのだが、30分後、次の休憩所でも再びこのオランダのツアーと一緒になり、これにはお互い大笑いしてしまった。


サントマリー・ド・ラ・メールの黒マリア祭は5月25日。この日は、私の誕生日でもあった。