『あ、あの。これって、どうしたら…』

『もうそれはいいから、次のことやってくんない？』

『は、はい…』

辛い、苦しい。

最大限の気を使い、当たり障りない言葉を選び。

何を言われても嫌な顔一つせず、みんなが嫌がることを引き受けた。

そして私の心は少しずつ、

コワレテイッタ。

『できました。これでよかったでしょうか？』

『ここの文字を消してくれると助かるかな。』

『わかりました、やってみます。』

数分後、

『これでどうでしょう。』

『ああ、もういいや、そのデータを俺のPCに送っといて。』

『あーあ、こいつさあ、細かいからねぇ。気に入らなかったら、全部直しちゃうよー。フヒヒ。』

『…わ、わかりました。送っておきます。』

あの時間はなんだったのか、やっておいてと、時間がないからすぐに直してほしいと言ったのに、結局、全て自分でやってしまうのか。

グズで間抜けな私が悪いんだろうけど、そんなのは酷すぎるんじゃないか。

でももしかしたら、あの言葉には違う意味があったのかもしれない。

だとしたら、その事をちゃんと伝えないと、相手には伝わらないのではないか。

疑心暗鬼と言えばそうかもしれないけれど、しかし、何が真実なのかはわからない。

私は助けになれたらと、少しでも身を削ってみたものの、そんなものは相手には関係のないことなんだろう。

あの子が好きでやっているだけのこと。俺はそんなことを頼んではいないと。

イジメとかハラスメントとかそういうことじゃないけれど、

でも相手にかけた自分の心が全て打ち砕かれたような気がした。

それでもあの人は結局会社の上の人に怒られて、ストレスが溜まって、何にもできないのでしょう。

人を動かすセンスがない。

自分がやったほうが早い。

自分でやったほうが綺麗。

自分でやったほうが結果が得られる。

誰の手も借りず、一人で全てを抱え込み、それを周りに悟られているのも知らず、から回っているだけのこと。

やるならもっと上手くやらなきゃ。

周りに悟られるくらいなら、周りの心遣いに感謝して、手を借りたらいいのに。

きっと悟られてることも知らない。

なんなら自分だけが辛いんだと思っているのだろう。

自分だけが辛いことなんてない。

周りに手を差し伸べれば、必ず掴んでくれる。

そういう集まりだったと私は思ってる。

それぞれの思いで動き、支え合っているはずなのに、全く噛み合わない。

こんなに悲しいことってあるんだろうか。

人の心は難しい。

今自分の心に抱えているものを文字に起こしている。

これは私の壊れた心の破片。

そして自分が壊れるに至った出来事。

文字に起こしながら、気がついた。

私は勘違いしていた。

私が一番心を打ち砕かれたのは、この出来事だったんだなと。

人は完璧ではない。

自分の理想を他人に押し付けることで、意図も簡単に他人の心をぶち壊せる。

理想を求めるのはとても素敵なことだと思う。

しかしその方法を間違えるな。

人の心を壊すのは、いつだって人でしかない。

壊すのは簡単。

そこから治すことはとても難しいんだ。

私は1週間も職場を休み、残り1週間しかない勤務だけれど、それでも職場には行けない。

行かないという選択肢を取っていることが正しいのかも。

直接的な暴力が振るわれるわけでもない。

しかしあの場所に行けば、自分がもっともっと酷い有様になることを本能的にわかっているのだろう。

世間からしたら、これは逃げだと言われてもおかしくはない。

しかし戦略的撤退と言えなくもない。

人の心は一つだけ。

その心を一度壊せば、社会復帰は難しくなる。

そうなれば人生そのものが終わりに等しい。

私はそんなのは嫌だ。

そこで得られた経験は、

とても自分にとって貴重なものだった。

今まで当たり前のように働いてきて、疑問に思ったことを全て解消してくれた。

これからは違った面から人を支えることができる。

心のダメージはかなり大きいけど、それでも私はまだ生きている。

私にできることがまた一つ増えたね。

辛かったね、苦しかったね。

自分の行動の答えあわせなんてしなくてもいいんだよ。

どんな経験も次に繋げていけたら、それだけでもう充分すごいことなんだ。

お疲れ様。

ゆっくり休んでね。

そしてありがとう。