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着回しできない≠おしゃれスキルが低い【おしゃ呪解vol.2】

こんにちは。服装心理カウンセラー・スタイリストの久野梨沙です。
あなたに巻き付くファッションへの思い込み・・・「おしゃれの呪い」をばっさばさと解いていくこの企画、略して「おしゃ呪解」。

第2回目は着回しについてです。

Aさんの事例

「着回しが上手にできない」って悩んでいる人、多いですよね。パーソナルスタイリングを依頼してくださるお客様からも着回しの悩みを聞く機会はとても多いものです。

グラフィックデザイナーのAさんも、そんなお客様の一人でした。
無難な格好で初回打ち合わせに行くと「あー、Aさんってそんな感じなんですねぇ」という、言外にがっかり感がにじむリアクションをされることが気になっていて、とはいえ芸術分野に秀でていたとておしゃれが得意だとは限らない。
クリエイターなら個性的なファッションをしなければいけないのでは? とはいえ時流も押さえてなきゃだからトレンド感も必要では? もちろん着回しもできて、最小限で最大限コーディネートが組めるワードローブを……なんて考えているうちにキャパオーバーとなり、私の元へと駆け込んできたのでした。


いろいろヒアリングさせていただいた上で、1週間毎日違うコーデができる程度には着回しを考えた洋服を一揃え提案した私。
でもわかっていました。
Aさん、きっと、いや必ず、着回ししなくなる。

果たして、予想は当たりました。
季節が変わる頃、次シーズンの買い足しの相談にいらしたAさんは、いざ懺悔!とばかりに「梨沙さん、私、あれだけ着回しできるように選んでもらったのに、それでも着回し全然できなかったんです……」とうなだれたのです。

私「決まった組み合わせでばっかり着ちゃいました?」
A「はい、どうしてもそれぞれのアイテムで好きな組み合わせができちゃって、それ以外のコーディネートに組み替えて着ようって気が起きなくなっちゃって……」
私「そうですか、でも全部のアイテムは満遍なく着たんですよね?」
A「同じ組み合わせでしか着ていないですけど、買った服は全部たくさん着ました。でも着回しはできていないんです。いつも同じコーディネートって、やっぱりダメですよね……」
私「ダメじゃないですよ」
A「へ?」
私「全然ダメじゃないです。むしろAさんに着回しはいらないと思ってました」
A「…え?え?」

着回しのメリット・デメリット

そもそも、着回しするメリットって何でしょうか。
その大きな一つは、「実際の枚数よりも、たくさん服を持っているように見せられる」ということです。
たくさんの組み合わせのバリエーションで見せることで、1枚の服が様々に表情を変える。すると、あたかも1枚の服が別の服に見えて、
「〇〇さんって、いっつも違う服着てるよね〜、おっしゃれ〜」
ってな評価が得られる、と。

でもこのリアクション、ある一定以下の年齢の人が読んだら「え、何でそれがおしゃれなの?」って感じるようです。
というのは、このリアクションの中には「洋服をたくさん持っていること=おしゃれ」という価値観が潜んでいるから。この価値観が通じるのって、そうですね、せいぜいアラフォーの私の世代くらいまでじゃないでしょうかね。それ以下の世代の人には、高い服を持っていたりたくさん服を持っていたりすることがすごいことだという価値観は、元々さっぱりありません。
そしてこのところのミニマリストの台頭で、物をあまり持っていない方が良いという価値観がアラフォー以上にも広がってきました。

つまり今や、服をたくさん持ってる偽装をしたところで、それで得られる評価は極端に減ってきてしまったのです。

2つめの着回しのメリットとして、「コーディネートスキルをアピールできる」というものがあります。
一つの服を様々にアレンジできる技法は、それは素晴らしいものです。私のような職業の者なんかは、それで食べているところもあります。しかし、一つの服を様々にアレンジしていると気づけるのは、日々その人に継続的に会っている人たちだけです。
毎日職場で会う同僚が、ネイビーのTシャツをあれこれ着回していたら「上手だなぁ」とわかりますが、今日初めて会った人がネイビーのTシャツを今日とは違うアレンジで日々着ているということは、知る由もありません。
むしろ、ちょっと無理目なアレンジの時に会ってしまったら「変わった着方をする人だなぁ」という印象で終わってしまう危険性すら。

そう、そして、ここが着回しの一番のデメリットなんです。
一つのアイテムを「着回す」ということは、コーディネートの完成度を担保するものではありません。むしろ、着回しパターンの数と、それぞれのコーディネートの完成度は反比例関係にあるといっても過言ではない。そのアイテムを最も活かすコーディネートというのはそれほど数があるものではなく、そうなると、あれこれアレンジするほど、そのアイテムの良さを生かさない組み合わせも生まれるということになるのです。

コーディネートの完成度を落としてまで着回しをすることは、おしゃれだと言えるのか?

Aさんは結局のところ、この問題に突き当たったのでした。彼女は、そのコーディネート単体の完成度を重視するタイプだった。だからこそ、「このカーディガンはこんな風にも着られるよ」と教えてもらったところで、そうではない着方が一番美しいと思ったら、それ以外の着方をする気が起きなかったのです。

そして基本は在宅ワーク、重要な打ち合わせのみ対面で……という彼女の仕事柄、毎日同じ人に会うわけではなく、多くのコーディネートを作る「着回し」の必要性がそもそもなかったのでした。

Aさんはそのことに改めて気づき、すべての服に決まった組み合わせを作り、それをローテーションするおしゃれの方法に落ち着きました。制服のように決まったコーディネートを繰り返すだけというのはとても楽で、それだけでなく、常に自分の納得いく完成度であるということは彼女の自尊心をとても高めてくれたようです。

さて、ここまで読んで「あれ、そうだよね、私なんでそんなに着回しにこだわってたんだろう……」って気付いちゃったあなた。おめでとうございます。呪いが一つ解けましたね。
そして「要不要に関わらず、着回しパターンを考えるのが好きなのよ!」と胸を張って言えるあなた、元々呪いにかかっていないようです。お読み捨てくださいな。

呪いとは、「自分を無意識に縛る、本来不要な価値観」です。
みんなが。雑誌で。Instagramで。ショップで。
着回し着回しっていうからやらなきゃいけないもんだと思ってた。
それだけなのであれば、あなたにはきっと着回しは不要です。

一張羅上等!!!

好きな服を好きな組み合わせで繰り返し着ればいいじゃないですか。それもおしゃれの形です。

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