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デンマークでのデザイン授業レポ#1:Socio-technical Designとは

こんにちは。

昨年の9月から12月、デンマーク工科大学という大学に派遣交換留学をし、Design&Innovationという修士プログラムの授業を3つ受講していました。自分のための学びの整理と、日本では馴染みが薄いであろう考え方の発信を兼ねて、学んだ内容を少しずつ共有していきたいと思います。

今回は、Socio-technical Designという概念についてです。3つ取っていた授業のうちの一つの授業タイトルが、これでした。(今年度分のシラバスがこちら


Socio-technical Designとは、社会的(socio)な側面と技術的(technical)な側面を複合的にとらえたデザインを指します。このSocio-technical Designという概念においては、ユーザー中心あるいは技術中心に偏らず、両者を行ったり来たりすることが重要視されています。

根底をなしている考え方は、「人も、技術も、互いに影響し合っている」ということ。

技術が、人のニーズを創造し、行動を起こさせ、生活を変える。
同時に、人が、技術を生み出し、利用し、改良する。

この両者があるからこそイノベーションは生まれる、と捉えられています。


ペットボトルを例に考えます。

人は、軽くて割れることのないペットボトルを発明しました。
ペットボトルの製造は、人々が買った飲み物をそのまま持ち歩くことを可能にしました。
人々は、多くのペットボトル飲料を買い、またその空き容器を捨てるようになりました。
ペットボトルの製造は、人々の生活環境のゴミを増加させました。
そこで人は、環境にやさしい超軽量の「いろはすボトル」を開発しました。
「いろはすボトル」は、人々にペットボトルをつぶす行為を促し、環境へ配慮することを意識させました。

これがSocio-technical Design的な考え方。「両者を行ったり来たりする」ということのイメージがついたでしょうか。


人間工学専攻の私は、当時考え方がユーザー中心にかなり偏っていました。というか、それしか見えていなかった。

「技術が人を変えている」「技術に何ができるか考える」そんな視点は、私にとってかなり新鮮なものでした。

ユーザーのことはデザイナー、技術のことはエンジニア、といった役割分担ではなく、どちらのことも考えられることの重要性は最近日本においても唱えられ始めています。ただやはり、デザイナーが技術のことを考える際には、「どのように技術を利用しようか」という視点で考えてしまうことが多いように思います。

そんな背景からも、Socio-technical Designの考え方を知ることは、とても有意義であると感じます。


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