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病は爪先にまで達している。自由意思の一部を奪おうと必死で奔っている。それはウイルスや毒の類ではない。それは金属だ。金属は体に毒だけれども、なにも金属が体を回るというわけではない。体自体が金属になるのだ。原因は未だ明らかになっておらず、抵抗は全て応急処置の域を出ない。命を落とした者もいる。魂は金属に侵されてはいまいか。それは死者に自由意志はあるかという問いと同義。病は爪先にまで達している。下手な嘘は却って進行を早める。誠実さは特効薬にはなり得ない。痛みはない。実は痛みは金属を融かすものの一つだが、必ずそうというわけでもない。はしたない言葉は金属を融かす。しかし一緒に内芯の臓器すらも融かす。病は爪先を通り過ぎ、外の世界との繋がりを求める。体の金属は外へは出ない。病は奪った自由意思を乱雑に扱って、形を生むことはしなかった。それは人間の最大の失敗であると教えられていた。誰からか。もちろん人間の自由意思からである。病は人間が生きる意味を知っていた。それは週刊少年ジャンプ2029年11号に掲載される読み切り漫画の掲載だった。人間ではないどこかの誰かにとって、それはとてもとても大事なことだった。セックスをして子供を産むこともそのために仕組まれたことだった。その読み切り漫画が掲載されたことで人間を生かす意味はなくなった。体が金属になるという適当な病でも仕組んで片付けてしまいたくなった。邪魔ではあったが、人間は愛おしかった。馬鹿げた自由意思だけでも残しておきたかった。病は爪先にまで達している。人間はもがいている。ペニスまで金属になっていくのを見て泣いている。涙で体が融けている。救済はない。しかし過去があり、未来もある。



「……うーん。これはつまり自殺を比喩的に表現しているんじゃないか?」


ボカロ曲みたいな考察すんな!

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