【エピファネイア産駒】母父SS直仔種牡馬とのSS 4×3クロスは本当に効果的なクロスなのか?の検討

イントロダクション

昨今はサンデーサイレンス(SS)のクロスを持つ馬が花盛りでございます。今日の有馬記念にも昨年の覇者エフフォーリアを含め、SSクロスを持つ馬が3頭出走します。

  • ボルドグフーシュ(スクリーンヒーロー産駒 SS 3×3)

  • アリストテレス(エピファネイア産駒 SS 4×3)

  • エフフォーリア(エピファネイア産駒 SS 4×3)

エフフォーリアの5代血統表

初年度産駒アリストテレスが菊花賞2着、そしてAJCCを勝利、2年目産駒のエフフォーリアが皐月賞、天皇賞・秋、そして昨年の有馬記念を勝利したことで、「エピファネイアのSS 4×3は優秀だ」という論調が主流になっているという印象を持っています。半弟リオンディーズも種牡馬として一定の成功を収めたこと、そしてエピファネイアの母シーザリオの優秀さが、その論調をさらに後押ししているのでしょう。

テーオーロイヤル(ダイヤモンドS、天皇賞・春 3着)

ただ私が感じているのは、各所で見る論調のほとんどが種牡馬間の比較(エピファネイアと種牡馬A, Bの比較:いわゆる横の比較)であり、エピファネイアを種付けし誕生した産駒の母に注目した比較分析(その母から誕生したエピファネイア以外の種牡馬産駒:いわゆる縦の比較)を読んだことがなかったので、自分でやってみることにしました。

なお、この記事において、いわゆる「エピ×カメ×サンデー」のような「祖母の父がサンデーサイレンス」は対象外です。あくまでも、サンデーサイレンス直仔種牡馬を父に持つ繁殖牝馬との配合でのSS 4×3について言及しています。

分析対象産駒の条件

この分析における産駒の条件は、以下の通りです。

父エピファネイア産駒

  • 誕生年:2017年~2019年(現3歳~5歳)

  • 母の父:サンデーサイレンス直仔

  • 中央で1走以上した馬

エピファネイア産駒を生んだ繁殖牝馬のエピファネイア以外の産駒

  • 誕生年:2019年以前(現3歳以上)

  • 母の父:サンデーサイレンス直仔

  • 中央で1走以上した馬

分析対象のレース

この分析において分析対象としたレースは、中央競馬の平地競走のみ(2022年12月24日まで)です。

「エピファネイア産駒のSS 4×3は優れる」の判定基準

エピファネイア産駒を生んだ繁殖牝馬のエピファネイア以外の産駒の競走成績より、エピファネイア産駒の競走成績のほうが有意に成績がよいこととします。そして判定に用いる指標は以下の指標を用います。ただし#3については父エピファネイア産駒側の分析対象産駒に現3歳産駒が含まれているため参考値扱いとします。

  1. 中央勝馬率

  2. 3歳までの特別勝馬率

  3. 4歳以降の勝馬率(参考値)

中央勝馬率の比較

分析結果は以下の画像にて。

勝馬率に関しては、両者間にほとんど差がありませんでした。したがって平地競走の中央勝馬率において「他の父と、父エピファネイアは同等=SS 4×3の優位性は存在しない」という結論になります。

3歳までの特別勝馬率の比較

先と同じく、分析結果は以下の画像にて。

3歳までの特別勝馬率については、父エピファネイア産駒が10.0%、父エピファネイア以外の産駒が4.8%であり、両者間に有意な差があります(p=0.01)。したがって3歳までの特別勝馬率において「他の父より、父エピファネイアのほうが優れている=SS 4×3の優位性がある」という結論になります。

4歳以降の勝馬率

「4歳以降の」という条件での集計のため、このデータの解釈には注意が必要ですが、ざっくり見るとエピファネイア産駒より他の種牡馬を父に持つ産駒のほうが4歳以降で勝利する馬の割合が高いようです。

結論

以上から得られる結論は、「サンデーサイレンス直仔種牡馬を父に持つ繁殖牝馬との配合において、父エピファネイア(=SS 4×3のクロス)は中央勝馬率に全く影響を及ぼさないが、3歳までの特別勝馬率が高くなる」になります。

追加検討:SS 4×3のエピファネイア産駒の早熟傾向と早枯れ傾向について

エピファネイア産駒の傾向として、世代戦の活躍が目立つことから「早熟傾向」が、そして古馬混合戦での不振から「早枯れ傾向」が言われています。ここでは同産駒全体の傾向を示すことはしませんが、母父サンデーサイレンス直仔種牡馬との配合(SS 4×3)における勝率の傾向を、年齢別に示すこととします。先程までと同様に、比較対象は「エピファネイア産駒を生んだ繁殖牝馬のエピファネイア以外の産駒」とします。

【牡馬・せん馬産駒】カッコ内の数字は、各出走数を表す
【牝馬産駒】カッコ内の数字は、各出走数を表す

どちらかというと牝馬産駒の方が顕著な傾向を示しています。

牝馬産駒における勝率のピークは2歳10月~12月になります。3歳1~3月で一旦低下し、同7~9月でもう一度勝率が上昇するものの、その後は低値推移となります。4歳1~3月、4歳7~9月では勝率ゼロ%と極めて低調なパフォーマンスとなっています。

牡馬(せん馬を含む)産駒の場合、2歳夏(6~9月)で高く、その後は一旦勝率は低下しますが、3歳1~3月から勝率は上昇し続け3歳10~12月でピークをつけます。それ以降、勝率は低下し4月7~9月には勝率がゼロ%となります。

以上の結果から、父エピファネイア×母父サンデーサイレンス直仔種牡馬の配合(SS 4×3)による牝馬産駒は完全に2歳戦向き牡馬産駒は3歳秋~冬の古馬混合戦向きと言えるかと思います。一方で4歳以降の古馬戦、特に3歳馬が参入してくるダービー以降の開催でパフォーマンスが低調になるのは、牡牝で傾向が一貫しています。

私見になりますが、少なくとも牝馬産駒については早熟&早枯れと思われても仕方がないと思います。

余談

父リオンディーズ×母父SS直仔種牡馬の傾向も、結構似ていますよ。


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