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紫色の彼女との想い出 ~閑話 独り言


5月は・・・

散歩してると
つい公園を探す

昔、娘とよく行った公園に
似た所がないだろうかと

近所にたくさん公園はあったけれど
歩いて20分程の、あの場所
公園には殆ど人がいなかった

そこのすぐ隣りに児童館が出来たから
皆、服が汚れるのを気にして公園を避けていた
絵本も玩具もあって雨の日は便利だけれど

だから公園を独り占め、いえ、2人占め

娘は公園のブランコも
彼女にとっては広いであろうグランドを駆けるのも
砂場で水を使って遊ぶことも大好きだった

砂場で遊ぶために
スコップや玩具を編み編みの手提げに入れて
ベビーカーに引っ掛けておく
買い物後で、ふと行きたくなった後にも
いつでも使えるようにと

エネルギーが一杯で
疲れを知らずに遊び続けるから
ママは「疲れたの」って
give upしてしまったの

いつもは薄暗いと思っていた休憩場所
石で出来た長椅子に座って
心地よい疲れを感じていた

影があるから

見上げると・・・紫色の藤の花

ママまで遊びに夢中になって
それまで気がつかなかったみたいね
花に癒されたからか

藤に花の隙間から見える空
射し込んでくる光のせいだからか
なんだか明るくなった気がしたのを覚えてる
気がしただけかもしれない

そこから彼女を見てると
暑い季節ではないのに
汗をかいていたみたい

上の服が体にくっついていた
オーバーオールのズボン(*注)
彼女も私もお気に入りの赤いズボン
何度も履いて洗うから色が褪あせてきていた

彼女は疲れたのか
ニッコリしながら駆けてきて隣りに座る
帽子をとってやると
汗とミルクの匂いがした

「上を見て、【藤の花よ】」

大きな瞳で見上げた彼女は
何を感じたんだろう?
聞きたかったけれど
ちょっぴり知りたかったけれど
聞けなかった

だって、立ち上がって
あんまりずっと見ているから

語彙が少ない時期だったから
聞かなくて良かったかもしれない

彼女の気持ちのほとんどは
まだまだ手ぶり身振りだったから

彼女の汗の匂い
額の髪を整えると微笑んだ
ミルクのことを「ブー」と呼ぶ

遊んで喉がかわくと飲みたがって
抱いて持ってきた
お気に入りのぬいぐるみは
ベビーカーの中に乗せてある
大事な彼女のお友達

藤の花の下に持ってきて
ミルク瓶を近づけて飲ませる真似をしていた
そうやって一休みすると

今度は滑り台
階段をのぼり
滑りたいのにいつも怖がって
上でモジモジしている

私が下で手を広げると
恐る恐る滑って
受け止めて抱きしめようとすると
喜んで私にしがみつく

想い出は・・・

セピア色になっていく
モノクロームになっていく

この時の想い出は

まるでカラーの動画のよう
「ママ」と呼ぶ声
彼女の着ていた服
彼女の笑顔
彼女のお友達
白い帽子
赤いズボン
紫色の藤の花

心の中に
「これはセピア色に」
「これはカラーに」
なんて閉まっておく箱があるのかしら

私はあの公園がとても好きだった

*オーバーオールは、サロペットのことですね。上下が繋がったズボンです。

読んでいただき、ありがとうございました。 心理職以外の仕事の1つとして、DV被害で困ってる方々に情報提供をしています。そちらへの支援に使わせて戴きますね。