Koichiインタビュー#001 | 荒川土手夕日シルエット写真誕生秘話

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約1年前、Twitterから爆発的に広がったこの奇跡の一枚は様々なメディアで取り上げられ、多くの人が目にした記憶があるのではないかと思います。しかし、この写真がどうやって生まれたのか、誰が撮ったのかをあなたは知っていますか?

今回は2019年12月14日(土)に荒川土手シルエット撮影会を企画するKoichiくん(@Kfish1882)にこの写真が生まれた日のストーリーと今回の企画についてお話を伺いました。さらにKoichiくんはインタビューが進む中で写真を楽しむ人に向けてKoichi流夕焼け写真編集術やアイデアの生まれ方についても語ってくれました。

なお、本インタビューはKoichiくんと共に、写真をきっかけに仲間を作り、写真を楽しむ人を増やしたいR&K Photo Guildを一緒に運営するMaikoが担当します。よろしくお願いします。

Koichiプロフィール

こういち

出身は飛騨高山。高校時代まで地元で過ごし、大学から上京。大学2年生の頃から写真を始めたが、実はその前の趣味はアクアリウムというちょっと変わった一面も。現在は24歳でフリーランスフォトグラファーとして日々新しい写真を求めて奔走している。
Instagram:@hakuchuu1882
Twitter:@Kfish1882

奇跡の出会いと話題になったシルエット写真はどうやって誕生した?

Maiko:
Koichiくん今日はよろしくお願いします。さっそくだけど、このスカイツリーと人のシルエットが写った写真、一時期めっちゃ見たなぁという感覚があるんですがいつ撮られた写真だったっけ?

Koichi:
これはね、去年の12月25日!クリスマスの日だね。たまたま東海の方から知り合いのフォトグラファーが2人来ていて、俺と3人で荒川の土手を歩いてこの写真の撮影スポットに向かってたんだよ。そしたらそのスポットに近づくにつれてこっちにカメラを向けてる人いるなって気づいたの。何回もここに撮影に来たことがあったから、確実に俺ら今めっちゃいいシルエットになってるだろうなって思ったわけ。それで、あのカメラマンきっと俺らがここ通る時シャッター切るから、どうせならめっちゃ面白いポーズしてあげようって話になったんだよ。

Maiko:
さすがKoichiくん(笑)
実際どんなポーズしたの?

Koichi:
ジャンプしたりとかヒーローもののポーズしたりとか(笑) あとは並んで歩くシルエットが映るように歩いたりめっちゃ手を振ったりした。向こうとこっちは声が届かないところにいるから、全然意思疎通はできないんだけど、そういうところから身振り手振りで伝えてやってあげてたんだよ。

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それで後から知ったことなんだけど、その子は普通に高校生で写真が趣味の男の子だったみたいで。
「なんか普通に写真撮ってたら、いきなり愉快な人たちが来たからこれは撮らなきゃと思って、全部のポーズを撮りました。凄い可愛いポーズありがとうございました!」
って撮影スポットに行ったら高校生くんと直接話せてね。

Maiko:
あ、直接も話したんだね。

Koichi:
そうそう!俺らも撮る側になりたかったからさ、その現場に行ったんだよみんなで。そこで俺らみんなが、その高校生の子とインスタとツイッター交換して、そしたらその子が
「今日の夜投稿してもいいですか?」
って聞いてきてくれたから
「全然構わないよ〜」
っていう話をしてたんだよ。

世界に広がる奇跡の写真

Koichi:
夜になってまたその子から連絡が来てて、内容見たら
「すみませんめっちゃバズっちゃってます。」
って書いてあったの。それで確認したら投稿して2時間か3時間なのにもう6万もいいねくらいがついていて、ええヤバっ!?ってなって(笑)

Maiko:
めっちゃすごいね。Koichiくんもシルエット写真撮ったと思うんだけど、その写真は反響はどんな感じだった?

Koichi:
俺の撮ったやつも投稿はしたけどいいねが1万いくかどうかぐらいだった気がするなぁ。俺のやつはひとまず置いておこう。そんでその子がね、
「よかったらKoichiさんのこと紹介させてもらえませんか」
って言ってくれて、その日荒川であったこと全部書いてバズってるツイートにセルフリプライで吊るしてくれたの。
「荒川で撮影してたら向こうから突然愉快な人たちが歩いてきて、その人たちが実はすごい有名なフォトグラファーさんたちでした!InstagramとTwitterはこのアカウントの方です!すごくいい写真撮るのでぜひフォローしてください!」
みたいな感じでメンションにしてくれて、嬉しかったなぁ。それでね、その時点ではさっき言ったように6万いいねぐらいだったんだけど、一晩で15万とか20万いいねくらいになって。。。その時点でえ?待って!?何事!?って感じだったんだけど、結局5日間で36万いいねがつくツイートになったんだよ。

この写真のツイートはあまりに話題になったからテレビにも取り上げられて、それだけじゃなくてYahoo!ニュースにもLINEニュースにも『荒川の土手で起きた奇跡の出会い』みたいに取り上げられたんだよね。

Maiko:
ってことは、土手で出会った高校生くんのツイートがニュースに出てたのか!Koichiくん経由でこの写真知ったからてっきりKoichiくんが撮ったんだと思ってた(笑)

Koichi:
そうそう、高校生くんの写真だよ!

この出来事があって、あの頃は写真を通して繋がることってやっぱすごくいいよねとか、初めて会ったのによくそこまでポーズとかしてやりとりが進んだねってフォトグラファー界隈が盛り上がってたなぁ。そんなこんなでこの写真は2018年12月25日に出来上がったんだよ。

一年越しに写真で出会いを | 荒川土手シルエット撮影会

Maiko:
いつもSNSで少年の心を見せてくれるKoichiくんらしい、なんだかワクワクする写真の誕生ストーリーをありがとう。ところで、このインタビューをしている週の週末に荒川土手シルエット撮影会を企画してるよね。この企画はどうやって生まれたの?

Koichi:
今日(インタビュー日)から1週間ちょっと、2週間くらいでまた12月25日がくるんだけど、その日にせっかくだから一緒に企画をしようよって話になって、高校生くんと2人でこの企画をしてるんだよ。

たくさん人を集めて、みんなで影になって遊んでみようよっていう今回の企画をすることで、荒川の土手で写真好きな人たちがまた出会ってくのって素敵だよねって2人で話してて。参加者の人たちと面白い写真を撮れたらなって思ってる!

撮影スポットの探し方

Maiko:
荒川の土手からスカイツリーが見える撮影スポットに向かってる途中、今回の写真が生まれたって話だったけど、Koichiくん最初はどうやってこの場所を知った?

Koichi:
誰かの投稿か、めちゃくちゃ大きいフォトコンテストのグランプリになっていたかそんな感じだと思うよ。インスタ界隈ではかなり有名な場所になってて、荒川の土手ってことまでは知ってたんだけど具体的な場所は知らなかったんだよね。それで、当時荒川の土手あたりに住んでたから自転車で何回か偵察に行ってたね。でもなかなか見つからなくて、どこなんだろうって探し回ってようやく見つけた場所って感じだね!そのときから通うようになったかなぁ。

荒川はインスタで有名だったから知ってたけど、もちろんふらっと歩いてる時にここ良いってなることもあって、最近はいろんなところに行かせてもらえるからその場その場で色々探すことも多いかな。

写真を撮る上で心がけていること

Maiko:
Koichiくんといえば、青とかオレンジが特徴的な"Koichiカラー"を感じる写真が多い印象なんだけど、さっきの有名な場所の写真でKoichiくんがどんな編集してるか教えて欲しいな。

Koichi:
けっこう専門的な話になっちゃうけど大丈夫かな...例えば今回の荒川土手シルエット写真みたいなのだったら、まず青色の色度座標値をマイナスに振ってあげると夕焼けはオレンジの色がすごい自然に強調されて、特にシルエットだとめちゃめちゃ見応えのある色になる。そんで周辺減光かけてあげると一気に作品として仕上がってくるから、いつも俺が夕焼け編集するときはそんな感じかな。

Maiko:
青色の色度座標値をマイナスに振って、周辺減光をかける。普段レタッチソフトをさわらない僕からしたら、もうちんぷんかんぷん(笑)
でも、この話だと編集だけがKoichiカラーの原点じゃない感じがするね。他に気をつけてることはある?

Koichi:
俺は二番煎じじゃない,オリジナリティーが欲しい!っていつも思ってて、荒川の土手で待つ時とかは普通によく見る画を撮るんじゃなくて極力,今まで見たことがないようなタイミングを探してはいるかな。

夕焼けの時間の荒川の土手ってちょうどみんな帰る時間で、散歩の人とか自転車で帰る人とかがいっぱい通るんだけど、その中で今まで見たことがない瞬間はいつだろうって探してるね。例えば、リード外れちゃって犬が逃げるような瞬間だったりとか、まぁいないとは思うけど逆立ちで自転車乗ってるおっちゃんとか(笑)
とにかくね,面白い瞬間がいつか来ないかと思いつつ、撮影の瞬間をいつも待ってるよ。

例えばTwitterで、「#2度と撮れない写真を貼れ」ってタグが一時期流行ってたんだけど、これも世の中が今まで見たことがない、その時だから撮れた写真を求めてるってことだと思うんだよ。

結局、2度と撮れない写真って物語性のある、ストーリー性のある部分にから生まれると思ってて風景に人が混ざることによってその瞬間をもう一度再現する事って結構難しくなるんだよね。だからそういう瞬間を切り取って行けたら、誰にも真似できないような写真を撮り続けられるんだろうなと思ってて、だから結構俺はそういう心持ちで撮った写真が多いかなぁ。

良い場面に出会うには

Maiko:
2度と撮れない瞬間を探して撮るってなるほど!と思う反面、実際やろうとするとめっちゃ難しそう。Koichiくんの撮影に対する考え方をもうちょっと聞かせてもらっても良いかな。

Koichi:
そうだね〜。例えば、他の例で言うと東京駅のリフレクションって誰もが撮ると思うんだよ。雨の後にさ、東京駅が反転してるやつね。あれはたくさんの人が撮るんだけど、俺がこの前撮ったやつは、部長が部下の結婚式のための余興の動画を撮ってる最中だったから、部下がスーツ姿なのに頭が馬だったりとかして(笑)

やっぱりああいう瞬間ってすごく大事で二度と出会うことがない人たちなわけで。東京駅の前でプロポーズしてるとかもたまにいるんだけど、そういう今しかない大事な瞬間を、いつか撮らしてもらえたらいいなって思いながら見てたりするね。

Maiko:
馬のやつ撮ってたね!あの写真の裏にもそんな物語があったのかぁ。Koichiくんはそういう場面で結構撮らせてくださいみたいに声かけに行ったりするの?

Koichi:
写真撮り始めの頃は、撮影しに行って現地にいる人に声かけて撮影させてもらったことめっちゃあったなぁ。今記憶にある、一番あの頃やばかったなって思うのは、カップルがキスしてて、その間から「めちゃいい感じの雰囲気だからモデルやってくれません?」ってお願いしたやつだね。

Maiko:
それはやばい。えっ、マジで言ったことあるの?(笑)

Koichi:
ある(笑)

ほんとに自分の写真のイメージを達成できるチャンスだと感じる場面があれば、相手の様子を伺って、勇気出して声かけて交渉するかも。もちろん相手の迷惑にならないように、しっかりコミュニケーションとって撮影オッケーしてくれた場合だけ撮影するけどね。

Maiko:
それはさ、ふらっと歩いててパッとここ撮らなきゃって思ったりするの?それとも、常に頭にこういうの撮りたいなっていうストックがあって、それを撮ろうとしてる感じ?

Koichi:
どっちもかなぁ。考えてるって言うか、自然とそういうの見ちゃうような目になっちゃったんだよね。もうやっぱ写真を撮りに行き過ぎて、それで気付いたんだけど、いろんな場面ってさ結局繰り返されるんだよね。だから、過去に同じような場面に出会った事って絶対あるし、だからこそ今ここでこういう選択肢を取れば確実に良いものになるっていうのがノウハウ的にあるんだよね、頭に。

特に天気で夕焼けとか、そういう限られた時に限られた時間のタイムリミットがある中で撮らなきゃいけないときに関しては、どっちの方向に陽が沈んで、どこで撮ったらどういう写真が撮れるのか、が完全に頭の中に入ってる。夕焼けの方向を見つつ、「あ、この方向で、今この色づき具合だったら、きっと何分後にどっち方面が焼ける」っていうのを常に自然に考えちゃってるんだよね。だから例えば、あの焼け方だったら新宿方面に向かえばいいなとか、この焼け方だったら今日はきっと真っ赤には焼けないからおとなしく家に帰るか夜景を撮りにシフトしよう、とかいう判断が頭の中で常にされている(笑)

Maiko:
Koichiくんのこれまでの膨大な経験が、撮影場所検索AIみたいな感じで頭の中で動いてるんだ。なるほどなぁ。

Koichiワールドの起源

Maiko:
さっきの2度と撮れない場面の話に戻るけど、こんな風になったら面白いなぁとか、撮る時にイメージしてることっていうのはどうやって浮かんで来てる?

Koichi:
結構妄想してるね。その妄想が実現できない状況であればむしろ自分がやっちゃったりする(笑) それでよく逆立ちしてるような作品が出来上がったりするんだよ。結局、あったらいいなを実現できないなら自分でやっちゃえばいいやって、そういう思考になるんだよね。

そもそも、自分の中で面白いなと思う瞬間がいっぱい頭ん中にあって。それがね、他の場面と結びついたりしてる。例えば、東京駅の前であった、頭が馬のスーツ姿の人が現れるみたいな事例が、これから今自分がいるシチュエーションでも起こるかもしれないっていう風に組み合わせていくんだよ。荒川の土手にいるけど、もしかしたらこれからプロポーズが始まるかもしれないとか、子供がふざけて頭に馬をかぶった状態で土手で遊んでるかもしれないとか。その子がいきなり土手を歩き始めたらさ、もうね馬の頭のシルエット撮れるわけじゃん!そんなん面白いに決まってるじゃん!(笑)

Maiko:
それは面白すぎるでしょ(笑)
Koichiくんのアイデアってさ、今まで色んな写真を撮ってきたから、頭にどんどんストックが生まれているっていう部分はもちろんあると思うんだけど、元々小説が好きだったり漫画家が好きだったりアニメが好きだったり、みたいなところから生まれてきてることはある?

Koichi:
いや,アニメとかは多少好きだけど、本とかはまったく興味がなかったから...。俺の感性というところで鍛えられてるのは、小さい頃から自然の中で遊びに遊びに遊び尽くしてきたからなんだよね。地元(飛騨高山)で俺はゲームを買ってもらうことがなかったから。自分は絶対外で遊ぶことしかなかったし、遊ぶ内容を考えに考えに考えてないといけないわけ。例えば、木登りしたりとかツリーハウス作ったりとか。

自分で考えないと思いつかないようなことばっかりしてたから、美術とか技術とかそっち系は全部クラス一番だったの!勉強は本当に何もできないし、学力は本当に低いんだけどね(笑)

大人になった今も、アイデアとか楽しいこととか誰も思いつかない発想とかを思い浮かべる習慣がずっとそのまま続いてるの。だから、他の人が思い浮かばない「何でそんなことするの!?」みたいなことばっかり頭の中で考えてるってよく言われるのは、もうちっちゃい頃からなんだよ。

写真をもっと楽しみたい人へ

Maiko:
いやぁ、これからこのインタビューシリーズ化するつもりなのに、初回でめっちゃ面白い話聞けちゃったなぁ。まだまだ話し足りなさそうだけど、今回はこの辺で終わりにしようか。

Koichi:
本当に、俺インタビューされるんだったらどんだけでも話しちゃうんだよ(笑)

Maiko:
それは頼もしい(笑) また次もよろしくね!
じゃあ最後に、この記事を見てくれた人に一言お願いしても良いかな。

Koichi:
最近、「Koichiさんみたいな写真家になるにはどうしたらいいですか?」みたいな質問がDMとかリプライとかでたくさんきていて,「独学なんですか?」とか「どこで勉強しましたか?」とかそういう問い合わせが多いんだよ。

で、そういう質問してくれた人全員に口を揃えて伝えてることは、とにかく好きこそものの上手なれってことでね。マジで本当に好きならどれだけでも自分を磨けると思ってて、実際自分が撮り始めた時も,写真が好きでたまらなかったから、今当たり前に使ってる色んな技をすごい勢いで習得していったんだよね。その技は、周りにいる凄いなと思う人を見て、どんどんそこに近づきたくて練習してたし、今もこの人の写真凄い!って感じる人の思考に近づくことを意識してる。

だから、自分が目指す場所があったり,なりたい姿の人がいるのであれば、そこに近づくためには好きなことを追求して、どこまでも好きであり続ける努力をするのが一番の近道かなと思う。だから、うん、ちょっと恥ずかしいんだけど俺のことを憧れだと思ってくれる質問してくれる人達は、「勉強する!」っていう考えになる前にただ素直に写真を愛してくれたらいいなぁとか思ったりする!(笑)

もっと写真を楽しめる人が増えてくれるのが俺としても嬉しいな!今日はインタビューありがとう。またよろしくね〜!

まとめ

荒川の土手でのシルエット写真は、奇跡的に写真を撮り来たKoichiくんたち一行にカメラを向けていた高校生くんが2018年12月25日のクリスマスに撮った写真でした。そしてこの出来事がきっかけとなり、Koichiくんと高校生くんは2人で1年越しの荒川土手シルエット撮影会を企画しています。

一瞬を記録する写真で大事にしている部分は物語性だというKoichiくん。写真で物語を表現するのは一見難しいようですが、常にこれまで見たことがない画を探す姿勢や、いろんな場面は繰り返されるといったKoichiくんの言葉には写真の中にストーリー性を持たせるヒントのようなものがある気がします。

写真を通じて実際に人と繋がり、企画も生み出すKoichiくんへのインタビューは今後も定期的に行っていく予定なので、次回もお楽しみに。

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