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「体の朝鮮戦争」〜戦場は阪急梅田ビッグマン前〜

阪急梅田駅ビッグマン前。
梅田の中でも特に人で溢れかえり、大阪人が待ち合わせとして使う定番スポット。
そんな梅田の中心地でとある二人にスコープ。

「飲み会終わり会社の先輩・後輩」

ビッグマン前はあらゆる交通手段(特に電車)の
分岐点でもあるため、
おそらく、先輩は「地下鉄御堂筋線」
後輩は「阪急線」で帰るのだろう。

そのため2人は中心地・ビッグマン前で、
この日の別れのあいさつをしている様子。


時刻は23時。そろそろ帰りたい時間。
それでも先輩は意気揚々と、まだまだしゃべり続ける。
たぶん飲みの席の時と同じ話だろう。
一方、後輩は先輩の話を一切苦にせず、
「初めて聞きました」というような笑顔で聞いている。


勝手に見ているこちらは「後輩の鑑やわ。さすが」と
後輩君にあっぱれを差し上げる。
自分なら絶対、一瞬は口角が下がっているはず。

こういう後輩がやっぱり好かれるんだろうなぁと感心したところで、
自分も阪急線の方に向けて歩き出そうとしたその時。
スコープが“ある違和感”に反応。

ん?なんかおかしかったよな今?


スコープを少し下に向けると…
人ごみのビッグマン前。先輩の話を聞く後輩。
笑顔が素敵な後輩。両足をクロスする後輩。
・・・・・・

両足をクロス!?

え、あの顔でトイレに行きたがってたんや。
そんなことを微塵も感じさせない表情。

まるで朝鮮半島ぐらい対照的な上半身・下半身。
体の北は韓国。体の南は北朝鮮。
下半身は「尿」という名のミサイルをいつでも発射できる状態。


「先輩の話を無下にしてはいけない」
「梅田のど真ん中」
「漏らしたら大衆の目にさらされる」

この環境で耐え抜く後輩。しかも笑顔。
もうひとつあっぱれ!

今、自分にできる後輩君への助け舟は、
友達を装い、話を切り上げるでもなく、
「よく耐え抜いた」と抱きしめるでもない。

今すぐ「おまる」を持って行ってあげたい。
もう漏らす恥ずかしさよりも放つ安心さが勝つだろう。


そして、この危機的状況に気付いてやれない先輩に
「誠に遺憾であります。」


結果、何もできず健闘を祈るだけの自分にも「喝!」

#創作大賞2023  
#エッセイ部門

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