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【36節vs京都サンガ】下関乃風

 台風が遥か彼方にありながら、異様な強風のもとで行われた一戦。残留はほぼ確定、ひとつでも上の順位を目指す山口と、昇格戦線真っただ中の京都。結果は、地の利を味方につけた山口が西京極の雪辱を果たす格好となった。

 31節岡山戦から3バック(5バック)に布陣を変更していた京都。今回も[5−3−2]ないし[5−4−1]のシステムが予想されたが、蓋を開けてみると[4−3−3]に戻してきた。中田監督のコメントによると「今日に関してはそれが嵌まるというところで」とういうことだったが、前回の山口戦で退場者を出しながら快勝していること、チームに流れていたと思われる停滞感も関係したかもしれない。山口はこの週、3バックを想定し練習を進めていたが、この奇襲?に対してスムーズに対応してみせた。
 山口の布陣はこのところ定着してきた[4−2−3−1]システムだが、守備時は攻撃的MFの三幸が1列目に出る[4−4−2]の並びとなる。FT宮代と三幸による第1守備ラインが京都のビルドアップを制限することで、後続の鋭い出足を誘発。京都を自由にさせなかった。

 京都の攻撃を封じるためには、司令塔である庄司悦大の仕事をいかに減らせるか、センターバックからアンカー庄司へのパスをいかに阻害するかが重要となる。ただシステムの噛み合わせ上、京都の2CBに三幸宮代がそのままアタックすると庄司が浮いてしまう。

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 なので、例えば宮代が左CBにアタックして右にパスが出た場合、三幸は庄司へパスが出しづらい角度を取って右CBにアタックする。このように、庄司へ直接マークをつけるのではなく、庄司へのコースを切る、いわゆる「背中で消す」ことを意識する『カバーシャドウ』で制限することにより、仮に庄司にパスが通ったとしても余裕を持った状態にはならず、高と佐藤のダブルボランチが1列前に出て迎撃することもできた。前半のほとんどの時間帯でこの形が機能しており、試合はレノファペースで進んだ。

 また、京都のビルドアップが上手く行かなかった理由として、レノファの守備以外にピッチ状態も影響が大きかったと思われる。試合後コメントで小屋松が僅かに言及しているが、下関陸上競技場は国内でも有数の「ポゼッション殺し」なピッチだ。下関市の尽力により、芝の状態は一昔前と比べて大幅に向上しているが不整地もままある。何より地面が硬く、ゴロのパスは綺麗に転がしたつもりでも跳ねてしまいトラップやコントロールが微妙に難しくなり、全体として攻撃スピードが落ちる。映像を見返してみると、京都がピッチ状態に苦労しているシーンが随所に確認できる。これは山口も同様なのだが、ピッチ経験値の差と、よりポゼッションに重きを置いていることで京都サイドのほうが影響が大きかっただろう。
 あまりにも前進できないので、20~25分あたりから庄司がCBの間に下りる動きや、連動して福岡も位置取りを下げることでどうにか出口を作り始める。が、ようやく前へ運びながらも精度やスピードを欠き、前半の京都のチャンスは僅か。ほとんどが山口の自陣でのミスによるものだった。

 ただ山口も、守備は100点満点に近い出来ながら攻撃は単発に終わるものが多く、35分過ぎあたりからは強度が低下していた。

 後半立ち上がり、京都はロングボールを多用してくる。強力な前線に早めに当てることで、前半とは逆に前で時間を作ってもらおうという狙いか。蹴らせる前に蹴られてしまうことで、山口のプレスもやや空転気味に。「持たせる」のではない「持たれる」時間が長くなり、押し込まれる展開になってきた。前半に猛威を振るった高井和馬のカウンターで再び反撃に出たいところだったが、久しぶりのスタメンということもありガス欠寸前、足もつりそうになっている。さらに前半にも増して楠本vs仙頭のサイドがあやしさを増してきていたが、決定機はほとんど作られず、水際一歩手前で防げていた。

 こうして、京都は主導権を取りつつも最終局面での精度と速度を欠き決定機をつくれず、山口も守備に手ごたえを感じながら、攻撃はいよいよ単発気味となりお互い決め手を欠く状態に。引き分けムード漂うなか、78分に均衡が崩れた。

プレスバックした一美のデヘンスがファウルの判定、ジャッジに不服を唱える一美。
その刹那、カピタン三幸が右足を振り抜く。
キレイなバックスピンの掛かったボールは、上空の向かい風も相まって京都デヘンスラインの裏、ペナルティエリアの手前にぽとりと落ちた。
そこへJ2屈指のコラ職人・田中パウロ淳一が走り込み左足一閃。

 最後はそのパウロをウイングバックに下げて[5-3-1-1]の逃げ切り布陣に。菊池がなんか吠えたりとかして守り切り、1-0で勝利を飾った。

 加藤順大のコメントにあったように、ボールの位置とかボールが止まってないんじゃないかとか京都側からすると不満もあるだろうが、山口は3年前、酷似した場面でゴールが取り消されてしまった。巡り巡って、今回は認められたのである。ちなみにその時ロングキックを放ったのは庄司だったので、何というか因果は巡るのものだ。

 京都には申し訳ないが、シーズン終盤で無駄に上位に勝ってしまうのがレノファである。あと上位との対決で残ってるのは山形・徳島くらいなので安心して欲しい。

【残された課題】

 そんなわけで、京都戦の勝利でますます残留は確定状態。あとはひとつでも上の順位を目指すことになるが、勝ち点差の関係で上限もちょっと限られている。なので、勝敗よりもシーズンの残りで解決して欲しい課題について少し触れておきたい。私が特に気なるのは以下の3点。

①後方からのビルドアップ
②三幸のプレー精度
③スローイン

①については、ボリスタの寄稿記事でも触れたが未解決事項となっている。強くプレスを掛けてくる相手に対して繋げない、後ろで回していても結局詰まって蹴ってしまうシーンが多い。なんとか向上に努めて欲しい。

②については、本当に頑張っている、攻撃も守備も頑張っているのだが、昨季の活躍ぶりと比べるとやはり物足りなさが否めない。攻撃では決め打ちでのパスミスだったり、味方との意思疎通で疑問符が付く場面が散見される。守備については上下動や体を張る部分では本当に頑張ってくれているが、例えば第1守備ラインを突破された後に浮遊気味になっていたり(攻め残りのタスクもあると思うが)、ボランチに下がった際に軽さが顔を覗かせる場面がある。もっとできる選手だと思うので頑張って欲しい。

③については、京都戦の前半ではピンチないしややピンチが4回あったと思うのだけど、その半分は自陣のスローインであっさり失ったものだった。せっかく前線からのプレスを頑張っているのに、プレスの圧力で得たスローインをみすみすロストする場面が多い。ここは昨年もあまり練り込まれていない感じがあったので、ぼちぼち向上が必要なフレームではないだろうか。


と、いうことで、個人的には上記の3つに注目して残り試合を楽しみたいと思っています。降格も昇格もなくなったチームは何をモチベーションに応援すれば良いのか?

ひと試合ひと試合の勝敗・内容とともに、選手個人でもチームでも、自分なりの何かしらの視点をもって観ればたとえ消化試合(失礼)だとしても楽しめるものです。残り少ないシーズンを堪能しましょう。

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最後はこの方、知り合いでも来てたのかめっちょスタンドに手を振ってた中山元気コーチの写真でお別れです。

それでは皆さん、Até breve, obrigado.(・∀・)

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