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【バイタルサイン】運動時の心血管反応はどうなっている?

どーも!りょーです!
今回は運動時の心血管反応について書いていきます。
心機能に問題のある対象者では、離床と同じく運動自体がリスクになってしまうことも多々あります。そのため、運動時に身体の中ではどういった反応が起こっているのかを整理していきます。

| 運動時に必要とされる心血管反応

運動時には以下の現象が必要となります。

肺の血流量増加→ O2の取り込み量とCO2排出量を増加
活動筋の血流量増加→ 酸素とエネルギー源(グルコース)の供給を増加

運動時には酸素を多く取り込み筋肉にエネルギー源ともに送り込まなければいけません。そのためには心拍出量を増やす必要があります。加えて、末梢血管抵抗も変化させて血流量を増やすことも必要です。これらのキーワードを聞くと大事な式を思い出さないといけませんね。

血圧=(心拍数×1回拍出量)×末梢血管抵抗

この式は色々なところで思考の糧になるので覚えておきましょう。


| 心拍数の増加

皆さんも感覚的に分かると思いますが運動している時には普段よりも心臓の鼓動が早くなっていますね。そうです、運動すると安静にしている時よりも心拍数が増加するのです。これは運動開始時には副交感神経(迷走神経)が抑制され心拍数が増加していき、その後交感神経の活動によりさらに心拍数が増加します。

若い人では1分あたり最大180〜200回にまで増加すると言われており、これは年齢が高くなるにつれて低下していきます。年齢に対する最大心拍数は以下の式によって予測できます。

予測最大心拍数=220−年齢

すなわち運動によって20歳の人であれば220−20で予測最大心拍数は1分あたり200回、70歳の人であれば220−70で予測最大心拍数は1分あたり150回となるわけです。


| 1回拍出量の増加

運動すると筋肉を使うため筋ポンプ作用(特に下肢の筋肉の収縮と弛緩によって静脈が圧迫・拡張され血液が心臓に戻りやすくなる作用)や呼吸ポンプ作用(呼吸運動によって腹腔内圧が高まり胸腔内圧が低くなることで血液が心臓に戻りやすくなる作用)、腹部内臓の静脈が収縮(交感神経活動によるもの)することによって心臓に血液が戻りやすくなります(静脈還流量の増加)。

心臓にはFrank-Starlingの法則といって“心筋が引き伸ばされるほど心筋が発生する張力は大きくなる”という特性があるため、血液が多く戻ってくること(静脈還流量の増加)によって1回拍出量が増加します。

加えて、運動により交感神経活動が亢進すると心臓の収縮性が上昇するため単純に押し出す力が上昇することによって1回拍出量が増加します。


| 各部位での血流変化

運動を持続するためには筋肉へO2とエネルギー源を供給し続けなければいけません。そのために身体各部位の血液を送る優先順位を変える必要があります。

筋肉への血流は増加
筋肉の血流量:安静時1000mL(配分率20%) → 運動時21000mL(配分率84%)

肝臓や腎臓への血流は減少
肝臓への血流量:安静時1350mL(配分率27%) → 運動時200mL(配分率2%)
腎臓への血流量:安静時1100mL(配分率22%) → 運動時250mL(配分率1%)

心臓と脳への血流は配分の割合は減少するものの血流量は増加
心臓への血流量:安静時200mL(配分率4%) → 運動時1000mL(配分率4%)
脳への血流量:安静時700mL(配分率14%) → 運動時900mL(配分率4%)


| 運動時の心血管反応の調節

運動時の心血管反応は主に自律神経系が関与していると言われています(一部代謝性血管拡張による調節)。ひとつはセントラルコマンド仮説で、もう1つは末梢反射仮説。

セントラルコマンド仮説は高次中枢から循環器系をフィードフォワード的に調節している定義されている。フィードフォワード的調節なので運動開始より前から血圧や心拍数を上昇させる反応です。

末梢反射仮説は筋肉に存在する機械受容器や代謝受容器からの入力によって、自律神経を介して心拍数増加や血圧上昇を引き起こします。


| 心機能障害例での運動時の反応

心臓の大きな役割であるポンプ作用が何らかの要因によって障害された状態を心不全と呼びますが、この心臓の役割を果たせなくなった状態では運動時の反応はどうなるのでしょうか。

心拍数の増加の項でも書きましたが、通常は運動開始時に副交感神経(迷走神経)が抑制され、その後に交感神経活動が亢進するといった流れで心拍数が増加します。しかし、慢性心不全例では安静時から交感神経活動が亢進しているため運動開始時から交感神経活動が亢進しているために心拍数の伸びしろ(心拍予備能)が少なくなり、運動耐容能が低下してしまいます。

また、狭心症などで冠血管への血流が少なくなってしまう病態があると、運動時の心筋への血流が増加しにくくなるため心筋の収縮力が発揮できなくなってしまったり狭心症症状が出現してしまうのです。


以上のように運動時には様々な心血管反応が起こることで身体の中でのO2やエネルギーの供給や排出をしているのです。心機能が障害されている対象者は私たちが思っている以上に運動がきつく感じていることが多々あるので、何が身体の中で行われているのかを考えながら評価や運動処方を行きたいですね。


| 参考文献

1)J ロドニー レヴィック:心臓・循環の生理学.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011.
2)玉木彰:リハビリテーション運動生理学.メジカルビュー社,2016.
3)安達仁:心臓リハビリテーションスタッフのための心電図ハンドブック.中外医学社,2011.


【バイタルサイン】特集
1.総論:理学療法士に必要なこと
2.血圧をどう捉える?
3.重力に対する心血管反応はどうなっている?
4.運動時の心血管反応はどうなっている?

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