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【バイタルサイン】重力に対する心血管反応はどうなっている?

どーも、りょーです!
リハを行う際には運動の前にまずは起きること、すなわち離床が不可欠です。
もちろん、対象者によってはすでに離床しておりそこの問題をパスできる方もいます。しかしながら、治療のために安静臥床が必要な方や徐々に動けなくなってきている方などは離床するときに自覚症状が出現したりバイタルサインの変化があったり思わしくない反応が出現することもよくあります。
そのため、今回は離床時の身体の反応のうちでも特に心血管反応にフォーカスを当てて話をしていきたいと思います。


| 私たちは常に重力を受けながら生活をしている

当たり前の話ですが、私たちは地球で生活しています。
地球で生活をしていると物理学などで説明するような様々な力が私たちの身体には働いています。そのひとつとして重力があります。

簡単に説明すると物体が地面の方向へ引き寄せられる力のことです。
その力が私たちの身体にも働いており、様々な器官が重力に抗ったり逆に利用したりしながら日々の生活を送っているのです。


| 心血管系と重力

早速ですが前述した様々な器官系のひとつである心血管系にフォーカスを当てて話をしていきます。

離床を簡単に表すと寝ている状態から身体を起こしていくことです。
この時に重力を受ける器官の位置関係が大きく変化します。その中でも大事なポイントは脳と心臓の位置関係です。
寝ている時は脳と心臓は横の位置関係となり、重力に逆らうことなく脳へ血液を送ることができます。
しかし、身体を起こしていくと脳と心臓は縦の位置関係となり、脳に血液を送るには重力に逆らって血液を送り出さなければなりません。加えて、血液が心臓より下、すなわち下肢に貯留しているような状態になります。そうなると心臓に帰ってくる血液の量が少なくなり、1回拍出量が減ることで一時的な血圧低下【(心拍数×1回拍出量↓)×末梢血管抵抗=血圧↓】を招いてしまいます。しかし、瞬時に圧受容器が働くことで血圧は直ちに補正されます。


| 圧受容器による調節

前述したように姿勢による血圧の変化を圧受容器が直ちに補正してくれます。
この圧受容器は頸動脈洞大動脈弓に存在し、血圧の変化を常にモニタリングしています。

急速に循環血液量が低下した場合には迷走神経活動を抑制し交感神経を刺激して代償性変化が生じます。
心拍数上昇
末梢血管抵抗増加
【(心拍数↑×1回拍出量↓)×末梢血管抵抗↑=血圧→】
これらの応答は通常、起立後1分以内に起こるとされています。これらの代償性変化が生じることにより血圧の低下あるいは脳への血液循環の低下を最小限に抑えるように調節してくれます。


| 圧受容器による調節が効かない場合

圧受容器による調節が効かなくなってしまうと代償性変化が生じない状態となり、いわゆる起立性低血圧の状態となってしまいます。
臨床の場面では自律神経障害や長期臥床、薬剤による影響などにより圧受容器の調節能が低下することがあります。
起立性低血圧が生じると脳血流が減少してしまい、めまいや一過性の意識消失をきたしてしまいます。

他にも血圧を規定する因子【(心拍数×1回拍出量)×末梢血管抵抗=血圧】で考えてみても分かるように脱水などで循環血液量が減少している状態や迷走神経反射などで著明な徐脈になると結果として起立性低血圧が生じる場合があります。



以上のように、私たちは常に重力を受けながら生活をしており、身体の中では重力に負けないように様々な反応が起こっています。その中で心血管反応は脳血流を保つ上で大事な反応となってきます。そのため、その反応が適切に機能しているかを確認しながら離床を進めていくことができれば安全な離床に近づけると思います。


| 参考文献

1)J ロドニー レヴィック:心臓・循環の生理学.メディカル・サイエンス・インターナショナル,2011.
2)玉木彰:リハビリテーション運動生理学.メジカルビュー社,2016.


【バイタルサイン】特集
1.総論:理学療法士に必要なこと
2.血圧をどう捉える?
3.重力に対する心血管反応はどうなっている?

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