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【バイタルサイン】心拍数と脈拍数について考えてみる

どーも!りょーです!
電子血圧計やパルスオキシメーターでバイタルサインを測定する時には必ず脈拍数も表示されます。ここに表示される脈拍数を見ているだけの方も多いのではないでしょうか。また「心拍数と脈拍数は同じでしょ?」と思っている方もいると思います。
私は臨床でよく脈拍は触知します。それは病態や状態の変化を捉えるのに脈拍を触知することは大きな意義があるからです。
今回はその心拍数と脈拍数について話していこうと思います。


| 心拍数と脈拍数はどう違うの?

よく心拍数と脈拍数を全く同じように捉えている人もいるようなので、言葉の意味を調べて抜粋してみました。

【心拍数(heart rate;HR)】1分間の心拍回数。
【脈拍】体表面から触診できる動脈の拍動。
【脈拍数(pulse rate;PR)】1分間の脈拍数。通常は心拍数と一致するが、心室の充満が不十分な時に起こった心拍は血液をほとんど駆出せず、脈として触れないこと(脈拍欠損)がある。

リハビリテーション医学大辞典より引用

心拍数と脈拍数は以上のように書かれています。分かるようで分からないですね。

心拍数は心筋が収縮した時の電気的興奮の回数を指しているため、心電図を用いてカウントしなければいけません。
脈拍数は心臓から拍出された血液が作り出す拍動を指しているため、体表面からの触知でカウントすることができます。

すなわち、心電図を装着していなければ心拍数を測ることができないため、基本的に私たちは脈拍数を見ていることになりますね。
もちろん血圧計にも脈拍数が出てきますが、コロトコフ法やオシロメトリック法では上腕動脈のコロトコフ音や脈波を感知して血圧を測定しているため、表示されるのは心拍数ではなくあくまでも脈拍数なんですね。


| 心拍数と脈拍数は同じ数になる?

基本的には心臓のポンプ活動を直接カウントするか間接的にカウントするかの違いでなので心拍数も脈拍数も通常は同じ数になります。ただし例外もあります。

引用文にもあるように、例外として脈拍数を少なくカウントしてしまう時があるのです。具体的には不整脈を有する例が挙げられますね。
例えば心室性期外収縮を認める場合であれば、心電図上では心室性期外収縮を明確に「1拍」をカウントすることができるます。しかし、末梢動脈で触知しようとすると、心室性期外収縮の1拍が有効な拍出に至らなかった時に1回拍出量が減少するため脈拍が小さくなり、「1拍」とカウントできず脈拍数が少なくカウントされてしまいます。

そのため心拍数と脈拍数は
心拍数≧脈拍数
という関係性が成り立ち、必ずしも同じ数になるとは限りません。

もちろん1回拍出量が少なくなる病態では心室性期外収縮以外でも同じようなことが起こってしまうことはお分かりになるでしょう。


| 脈拍を測定する意義は?

前述したようなことを考えると心拍数を測定できると確実なのですが、脈拍を測定することにも大きな意義があります。実際に私も臨床では対象者の現在の循環動態を考えるひとつのツールとしてよく脈拍を測定しています。

私の中で脈拍測定には…
①不整脈の確認
②血圧の推定
③血圧変化の推測
の3つの大きな意義があります。

【①不整脈の確認】
これは脈拍測定において大きな意義を持ちますね。
基本的にペースメーカー細胞とも呼ばれる洞結節の規則的な興奮が刺激伝導系を伝わり心筋の収縮を誘発しているため、脈拍のリズムは一定です。しかし、不整脈は何らかの原因で心筋が収縮するリズムが崩れてしまうため、脈拍のリズムも不整となってしまいます。
臨床でも入院時の心電図検査では引っかからなかったものの、リハ中の脈拍を測定して初めて不整脈が発覚するというケースを何例か見てきました。その時には脈拍測定に加えて、パルスオキシメーターの脈波波形を同時に確認して不整脈の存在を触覚と視覚のふたつで確認していました。

【②血圧の推定】
これは救急の現場で大きな意義を発揮してきますね。
脈拍の測定は通常、橈骨動脈で行いますが他にも総頸動脈や上腕動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈でも触知することがあります。この中で橈骨動脈と総頸動脈と大腿動脈に関してはおおよその収縮期血圧を推定することできると言われています。
触知できた時に推定される収縮期血圧が低い順番に並べなおすと…
総頸動脈 → 60mmHg以上
大腿動脈 → 70mmHg以上
橈骨動脈 → 80mmHg以上
となります。
そのため、何らかの原因によって血圧計で測定した値に信頼が持てなかった時、これらの部位で脈拍を触知して確認することができます。加えて、血圧計を持っていなかった時の確認方法にもなりますね。

【③血圧変化の推測】
②はその場の血圧推定でしたが③は変化の推測です。
安静時の血圧を考えることは大切ですが、理学療法士としては離床や運動によってどう血圧が変化するかを捉えることが大切になってくると以前の記事で話しました。

それを脈拍から簡便に推測して臨床では判断材料のひとつにしています。
キーワードになるのはやはり血圧を規定する因子【(心拍数×1回拍出量)×末梢血管抵抗=血圧】です。

このキーワードの中で今回の話に出てきた言葉が2つありますね。心拍数と1回拍出量です。
脈拍を触知してまず何を考えるかというと「脈の強さ(脈圧)」です。前述したように1回拍出量が低下すると脈が弱くなり触れにくくなります。例えば、離床を進めている時に脈の強さが弱くなった時には1回拍出量が低下していると予測します。そうなると血圧も低下しているかもしれないと推測できると思います。あるいは脈拍数が増えて頻脈になっていたとすれば代償反応による頻脈が考えられます。
もちろん、離床を進める際にはその都度血圧を測定し自覚症状を聴取することが大事なのですが、それに加えて脈拍から推測することができればタイムリーな反応も観察することができるので知っておくといいと思います。


以上、心拍数の脈拍数の関係や脈拍測定の意義を話してきました。
脈拍の測定はすぐに誰でも簡単にできますが、意外と血圧計やパルスオキシメーターの値だけを見ている人も多いと思います。数値(量的データ)だけではなく実際に触って分かる情報(質的データ)も収集して、対象者の病態や状態の変化を評価していきたいですね。


| 参考文献

1)上田敏,大川弥生:リハビリテーション医学大辞典.医歯薬出版,1996.
2)医療情報科学研究所:フィジカルアセスメントがみえる(第1版).メディックメディア,2015.
3)西川淳一,大瀧侑,三上健太:理学療法における「血圧・心拍数」の理解のポイント.理学療法35(6):499−509,2018.


【バイタルサイン】特集
1.総論:理学療法士に必要なこと
2.血圧をどう捉える?
3.重力に対する心血管反応はどうなっている?
4.運動時の心血管反応はどうなっている?
5.心拍数と脈拍数について考えてみる

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