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青天の霹靂

子育てをするということは、

「可愛い、愛おしい、幸せなことばかりではない」ということは頭ではわかっていた。

健康で無事で、毎日笑顔を見られることを切に願いながらも、身を切られるような想いをする日がいつかくることを。


12月15日夜

眠っていたR君が突然、激しく嘔吐した。


ミルクが多すぎて吐き戻しをするのとは明らかに違うことはすぐにわかった。

まさに噴水のように吐く。


その様子に慌てた我々夫婦は、吐瀉物を素手で片づけたのだが、

皆さん、このような場合には慌てずゴム手袋、マスクの着用をお忘れなく。

吐いたものや拭いた雑巾、ペーパー類は別途ごみ袋へ。

汚れた衣服も同様に捨てられるものならば捨てるか、ハイター系の洗剤を入れて自分たちのものとはわけて洗濯しましょう。

一家全滅しないためにも。

慌てないために日頃からの備えは大切です。


翌日、R君はノロウイルス感染と診断された。


飲んでももどす、下痢。

腹痛に悶絶するR君を見ていられない。

ウイルスを外に出すしか治療法はない。


赤ちゃんの医学本を読むと「脱水」に細心の注意を、と書かれている。

肌にハリが無くふにゃふにゃしている、ずっとトロトロと眠たそう。

ミルク、麦茶を飲んでももどすから追っつかない。


改めて診察を受けるため「アイチケット」という病院で待たなくても良いシステムを使って予約を入れるも、病院に到着してから「別の病院のアイチケット」を取ってしまっていたという凡ミスまでおかす始末。


ようやく改めて受診し、

「20時までにまた吐くようであれば夜間救急で点滴を打ってもらいなさい」と。

予約を間違えなければ、その時に点滴を打ってもらえていた。

R君に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

辛い時間を長引かせてしまった。


辛さに耐え頑張るR君と、お世話に奮闘する妻を置いて仕事に出なければならない私は、たまらない気分だ。

正直、仕事をしている場合じゃない。

とてもじゃないが正気ではいられない。

「便りが無いのは無事な証拠」

妻から連絡が来るのが怖かった。

じりじり進む定時までの時間をなんとか過ごし、帰路につき電車に飛び乗る。


乗車中、妻から着信。

電車だ、出られない。

普段、LINEのやり取りで済ませているので嫌な予感しかしない。

「どうした?」とLINEを返す。

何度もスマホのチェックをするも返事が無い。

手が離せないほど、緊迫しているのか。

不安を煽られる。

「後続車両が遅れているため、この電車は間隔調整のためしばらく停車します」

この時ほど、そんなアナウンスを恨んだことはない。


最寄り駅からのバスの待ち時間も惜しく、タクシーへ。


乗車中、妻からの電話。

「救急に連れて行く」と。

その電話の向こうでR君がムニャムニャ喋っている声が聞こえる。

大丈夫、まだ声は出せるようだ。


乗ってきたタクシーに入れ替わりでR君を抱く妻を載せ見送った。

私は家で待機し、入院が必要になった場合の準備をするために動く。


あとを追って病院に着くと、R君は点滴を打たれていた。

まあまあ元気そうなR君の様子と妻の顔を見て、少しほっとした。


点滴を待つこと2時間。


血液、尿検査も終え医師の話を聞く。

脱水症状は思っていたほど重くはなかった。

ウィルスも少なくなってきている。

入院の必要もないらしい。

夫婦ふたりとも胸をなでおろす。


山を乗り超えてすこしスッキリした様子のR君と家に戻り、

「もう少し、もう少し」と自分に言い聞かせ、ひとまず落ち着いた。


翌日から、相変わらず下痢は続いているものの、もどすこともなくなり、

キャキャっと笑うR君が戻ってきた。

この笑顔、笑い声がどんなに貴重なものか。

やっぱり愛おしくてたまらない。


発症してから2週間ほど経つが、下痢が長引いていて、少し血も混じる。

胃腸炎をした乳幼児にかかりやすい他の病気も心配で受診を重ねるも、

毎回医師が変わり、明確な診断が出ない。

心配が頭を離れない日々。


先日、ようやく詳しい医師にあたり検査もしてくれた。

明日、結果を聞きに行く。


下痢以外は以前と変わらないR君。

ミルクも飲むし、良く笑う。

新しいおもちゃでうれしそうに遊ぶ。


R君も早く全快したいだろうし、我々もほっとしたい。


明日から私は年末年始の長期休暇に入り、一日中R君や妻のそばに居られる。

幸い、夫婦ともに感染も無し。


大丈夫、すべてうまくいく。

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パパ業界新規参入の36歳。長男Rくんとの日々を、そこそこゆったり綴って参ります。