Sailing Before The Wind 『REVISED STANDARDS』インタビュー 02

<Interview : Ryohei Wakita / Answer : Bitoku Sakamoto>

●本作のソングライティングについて、お聞かせ下さい。

"オンリーワン"の音楽を創るのであれば、最低でも「Aに影響を受けたB」であるべきだと思っています(厳密には「A、B、C~に影響を受けたZ」)。
どういうことかというと、Sailing Before The Windの場合は「メロハーに影響を受けたメタルコア」です。「メタルコアに影響を受けたメタルコア」だけでは何も新しくはない。

これはどのジャンルにも言えることで、例えば「ジャズに影響を受けたジャズ」と「パンクに影響受けたパンク」。
それぞれ、「ジャズに影響を受けたパンク」、「パンクに影響を受けたジャズ」にすると一気に新しい風が吹く。伝統芸能的な良さは良さであるとして、それが"オンリーワン"かはまた別問題、という話です。

そもそもAをやるのであれば、一部の天才を除いて、「Aを知っていてAに影響を受けている」というのは大前提。
仮に「僕ら最強のロックバンド〇△□です!」というバンドが出てきて「でもLed Zeppelinは知りません」と言われたら疑問符が浮かびます。
弁護士が法律を知っていること。医者が医学を知っていること。これって当たり前のことですよね。
〇△□のコンポーザー(=表現する側)が、Blue CheerやAtomic Roosterを知っていることを、"詳しい"というのはちょっと違う気がします。
曲を書く人間が、ある程度のラインまで知っていることは、当然のはずです。

ここに、そんな考えのもと自分が聴いてきた、"A"のメロハーのプレイリスト全20曲を用意しました。
特に影響を受けた10曲に加えて、もっと"詳しい"リスナーの方でも「それ名曲だよね!」っとなってくれる10曲を入れました。
このプレイリストを聴けば、Southern Crossで表現していることを、より深く楽しめます。SBTWが追求してきたことが、何なのかつかめます。同世代やさらに下の世代には、浸透率がかなり低いジャンルなので、今作からメロハーにハマる人が1人でも出てくれたら、本望です。

●Bitoku君は自身でサウンドメイクにおけるポイントなどをnoteにまとめていたり、オリジナルの制作ルーティーンやこだわりがあると思います。本作におけるサウンドメイクのポイントやレコーディング環境を教えてください。

ベースとミックス・マスタリングを自分が、ギターレックをKosukeが行いました。前作で孝哉(ex-SBTW,現SLOTHREAT)に弾いてもらった時と同じ分担です。
任せられる範囲は任せた方が、こうして良い結果になりますね。2人ともサウンドに理解がありますし。
レコーディングには、ベースとギターどちらも、ライブで使っている機材と同じものを使用しています。
僕個人はエンジニアとしても活動しているので、今回のサウンドにピンと来たバンドはぜひ一緒に制作しましょう。

●いわゆる一般的な流通とは異なる販売/配信経路で本作をプロモーションしているように感じますし、ファンはそれを楽しんでいて、誇りに思っているようにも感じます。これらに何かこだわりや戦略はあるのでしょうか?

"CDが売れなくなっている"という決まり文句は、本当に事実なのか。
実際に確かめるため、CD先行販売を行いました。現状結果どうなのかというと、"CDも"売れます。
ほぼ東京でしかライブしていないことを考慮すると、想定よりも影響はなく、かなり手に取ってもらっています。
「仕事終わりに走ってきました」と息切らせながら買いに来てくれた人もいて、強く印象に残っています。
礎(通販委託)で扱ってもらった初回分は、1週間経たずに完売。すぐに追加要請の連絡がきました。
このタイミングでSBTWのことを知ってくれた人も多いみたいで、SANCTUARYのCDも売れています。

CDを先行で出したのは、音楽的な理由もあります。
今作は"1曲目の1秒目に流れるのが何か"、というのを重要視しました。ストリーミングだと手軽に再生できる分、何か行動と並行して流すシチュエーションが多いですよね。

CDは少し手間ですが、再生の前に「インポートするぞ」という一瞬が絶対発生します。あの準備運動(?)があるかないかで、1秒目のインパクトは倍増すると思います。先行CDを買いに来てくれる、その期待感に対して、然るべきインパクトを届けたかった。

一方で、CDを出した直後「読み込むためのドライブがない」との声を数多くもらいました。環境的にデジタルしか聴けない人や、CDと合わせてデジタルでも聴いてくれる人が多いのは明らかです。配信開始日にiTunes(国内)メタルチャートで1位をとったことや、Apple Music(国内)メタルチャートでも最高2位まで上がったことが何よりの証拠だと思います。

バンドとしては、CDで買ってくれたらもちろん嬉しいですが、何より聴いてくれるのが一番です。なので、フィジカルとデータで優劣はないです。先の通り、それぞれの環境と聴き方次第で。

僕やメンバー自身が、ストリーミングで音楽聴いてるので、デジタル配信や新しいサービスに対して抵抗はないです。今後のリリースも、その時々の状況に合わせて柔軟にやりたいですね。

●現在はフィジカルとして作品を発表しないケースも多いですが、CDなどフィジカルアイテムとして作品を残すことへの想いなどはありますか?

フィジカル作品の長所って記憶とリンクするところだとも思ってます。
CDを手に取ると、色々思い出せますよね。「タワレコ〇〇店で新品として買った」とか、「ディスクユニオンの特価ゾーンから見つけ出した」とか。
場所以外に感情もある。「すごくつらかった時期に聴いてた」とか、「毎日が楽しかった頃聴いていた」とか。…もちろん今も毎日楽しいですけど笑。

デジタルだとそれが難しい気がしますね。データが入ったフォルダ開いても、記憶に若干モヤがかかっている感じがあります。名前忘れたら見つけるのが難しいですし。例えば、「あの、斧持った戦士が立ってるジャケなんだっけ…」って。とりあえず「viking metal album」で画像検索して…みたいな笑。
CDなら、名前忘れても、フィジカル見て思い出すことができます。見つけるのに時間かかっても「この棚のどこかには絶対ある」ので笑。

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