クリエイティブLARPに参加してLARPシナリオを作ってきたお話

9月30日クリエイティブLARP「紡ぎ手と冒険者たちのエチュード」開催決定! - 体験型LARP普及団体CLOSS

去る2017年9月30日、CLOSS様主催のクリエイティブLARP『紡ぎ手と冒険者たちのエチュード』(hashtag: #クリLARP) が開催されました。

「紡ぎ手(GM/NPC)」として当イベントに参加させていただいた次第なのですが、いかにして「PCが扉の前でマッスルポーズを取る」というシナリオが誕生したのかについて、つらつらと記したいと思います。

なお、今回のLARPゲームにおいては、CLOSS様作成の国産LARPルールブック「エピック・オブ・プレアデス(β版)」を使用しております。

シナリオ作成の流れ

当日、シナリオ作成に用意された時間は、昼食なども挟みつつの約3時間。
下記の流れで「オリジナルのシナリオ」を作成する流れです。

1. 「盗賊退治」の基本的なシナリオを提示される
2. シナリオにギミックなど追加要素を盛り込んでいく
3. 追加要素をシナリオに再反映して、小道具を選定する
4. 遊ぼう!!

……あの、3時間ではさすがに無茶では?(開始時点の素直な感想)

1. 基本となるシナリオの提示

無茶か無茶でないかはさておき、作り始めないことには始まりません。
シナリオのベースとして最初に提示された「盗賊退治」のシナリオは、おおよそ下記のような内容でした。

***

1. 冒険者たちの滞在する街の酒場に、依頼人がやってくる。依頼人は「ラルク村」の住人であり、「山賊が村の近くに現れて商人を襲うので困っている。退治を依頼したい」という

2. 冒険者たちはその依頼を受け、盗賊ギルドなどでラルク村の近辺に現れた山賊たちの素性などについて情報収集を行う

3. 情報収集を終えた冒険者は、依頼人ともにラルク村に向かい、村長からさらに詳しい話を聞く

4. 山賊が居座っている街道に向かい、山賊を退治する

5. 街の酒場に戻り、依頼金を受け取る

***

たとえばこれがTRPGだったとしても、お手本かというようなたいへんスタンダードなシナリオですね。
しかし、これだけではやはりちょっと薄味なところがあるのは否めません。ここに「オリジナルの要素」を追加して、今回だけのシナリオを作成していきます。

2. シナリオに追加要素を盛り込んでいく

シナリオに、設定面・ギミック面で様々に追加要素を盛り込んでいきます。

以下は記載の都合上、かなり整理した書き方をしていますが、実際には「紡ぎ手」として集められた5名にCLOSSの熟練GM様を加えた6名で、ああでもないこうでもない、と和気藹々、相談しながら進んでいきました。

追加要素①「山賊団を社会派にしたい」

「山賊団を単にヒャッハーさせるのではなく、やむにやまれぬ理由でヒャッハーしているんだ、という話にしたい」という話だった……と記憶しています。

「社会に不満がある」
「村長のドラ息子が、村長のやり方は古臭いと言って暴れだした」
……など、山賊団を社会派にするためのいくつかの案が出ましたが、最終的には下記のところに落ち着きました。

・「村の領主からの税の取り立てが重く、それに反発する村長の息子が、若い衆を率いて暴れだした」という設定を追加
・上記を踏まえて、「山賊」ではなく「レジスタンス」を名乗らせる

***

追加要素② 「ダンジョンを追加したい」

冒険者といえばダンジョン攻略、せっかく冒険者になったからにはダンジョンに挑みたいですよね!(個人の意見)

「エピック・オブ・プレアデス」は、もちろんダンジョン攻略にも対応。TRPGでおなじみの「鍵開け」「罠解除」のようなルールもサポートされています。それならダンジョンに潜るしかありませんね!!

というわけで、ダンジョンを出すために、山賊、もといレジスタンスの出現場所について手を加えていきます。

・ 「街道で山賊と遭遇」するのではなく、「レジスタンスのアジトに襲撃をかける」に変更
・ アジトには見張りを立てておく。また、アジトの中には「警報が鳴って敵がやってくる」などの罠などを仕掛けておく

***

追加要素③「PCに、報酬について悩んでもらいたい」

たとえば「ダンジョンの奥にはマジックアイテムがあって、そのマジックアイテムを高く売りたい盗賊ギルドと、研究をしたい魔術師ギルドで、両方とも欲しがったとしたら、PCはどちらに報酬を渡せばより美味しいか、などを考えてくれるのでは」という案が出たので、盛り込むことになりました。

これを受けてシナリオに下記の追加・修正を加えました。

・アジトにはマジックアイテムがあり、レジスタンスのボスを倒さないとマジックアイテムは手に入らない

***

全体的にシナリオの整合性を取る

これまでの追加要素を踏まえた上で、シナリオに全体的に追加の設定などを加えていき、話の違和感が少なくなるよう、バランスを取っていきます。

・領主とは貴族であり、たかがいち村人風情が領主に反発することは死をまぬがれない大罪である。→なので、村長は対外的には「山賊退治」としつつも、息子たちを内々で説得して丸く収めることを真の目的としていた

・上記を満たしてハッピーエンドにするために、村長の息子が「遺跡に眠るマジックアイテムを手に入れたことで豹変してしまった」ことにして、「マジックアイテムを手放させれば正気に戻って説得に応じる」とする。→マジックアイテムの効果は「負の感情を増幅させて、暴力的にさせる (村長の息子を豹変させるため)」「周りの人間を魅了して従えてしまう (村の若い衆を引き連れていくため)」というものを設定

・戦闘中にボスに、魔法の効果を解除する「ディスペル」の魔法をかけてしまうと、急に正気に戻ってしまう懸念がある。→「ディスペルした場合、魔力が消えるのでマジックアイテムの価値が下がる。そのため各ギルドはマジックアイテムの買い取りをしてくれない (あるいは値下げする)」という条件を追加。その上で、ディスペルを使うかどうかはPCの任意とする

・ディスペルをすることなく、マジックアイテムの効果を無効化するための手段が必要。→マジックアイテムを無効化するコマンドワードをアジトの最奥に配置する

3. 追加要素をシナリオに再反映

上記の結果を踏まえ、最初に提示されたシナリオに反映します。
(以下、太字部分がベースとなったシナリオからの主な変更点です)

***

1. 冒険者たちの滞在する街の酒場に、依頼人がやってくる。依頼人は「ラルク村」の住人であり、「山賊が村の近くに現れて領主への税金を納めた馬車を襲って近くの遺跡に立てこもったため退治を依頼したい」という

2. 冒険者たちはその依頼を受け、盗賊ギルドや魔術士ギルドなどでラルク村の近辺に現れた山賊たちの素性、遺跡などについて情報収集を行う。そこで遺跡に眠るマジックアイテムの情報を手に入れる

3. 情報収集を終えた冒険者は、依頼人ともにラルク村に向かい、村長からさらに詳しい話を聞く。実は税金を奪ったのは領主の息子と若い衆であり、彼らが罪に問われるのを避けるため、対外的には「山賊のせい」として冒険者たちに内々に処理をしてほしい旨を告げる

4. 領主の息子たちが居座っている遺跡に向かい、領主の息子たちマジックアイテムの影響から解き放つ

5. 街の酒場に戻り、依頼金を受け取る

・村長の息子は、領主からの税の取り立てが重いことに不満を持っていた
・ある時、彼は村の近くに古代遺跡があり、そこにマジックアイテムが眠っていることを知る。そのアイテムを使うことでなにかを解決することが出来るのでは……と考えたことから遺跡に向かい、マジックアイテムの魔力で豹変してしまった

***

うん、元の話からも随分と変わった、とてもシリアスなシナリオですね!!
というわけで、これでシナリオは完成です。

え、そうじゃない?

2.5 シナリオに追加要素を盛り込んでいく

急に増えたマジックアイテムには名前などは必要です。
マジックアイテムの効果を無力化するコマンドワードも必要です。
あとは、ダンジョンに仕掛ける罠についても考えていく必要があります。

このあたりの設定も作り込んでいきます。

***

・マジックアイテムの名称:暴れるようになるから『アバ・レールの首飾り』

・マジックアイテムの設定(?):『以前の私は何も出来ない貧弱な人間でした。しかしこのアバ・レールの首飾りを手に入れて、私の人生が変わりました。首飾りで手に入れた何者にも負けない強靭な肉体(マッスル)で、私をバカにしていたジョンにも目に物を見せてやりました! 今では異性にもモテまくりです!』『ワーオすごいじゃなーい!!』『この素晴らしい首飾りについて、詳しくはこちら (画面下の電話番号を指し示すアクション)』

・マジックアイテムを解除するコマンドワード:大丈夫です、雑誌の怪しい広告のアイテムを買ってしまっても『クーリングオフ』すればいいんです。

・罠の効果:強靱な肉体を押していきましょう。『床を踏むと5秒間マッスルポーズを取ってしまう』『遺跡の扉はマッスルを示すことで開く』

***

……………………あれ??
(なんで急に怪しい筋肉系通販番組が始まってしまったんだろうという顔)

3. 追加要素をシナリオに再反映(アゲイン)

1. 冒険者たちの滞在する街の酒場に、依頼人がやってくる。依頼人は「ラルク村」の住人であり、「山賊が村の近くに現れて領主への税金を納めた馬車を襲って近くの遺跡に立てこもったため退治を依頼したい」という

2. 冒険者たちはその依頼を受け、盗賊ギルドや魔術士ギルドなどでラルク村の近辺に現れた山賊たちの素性、遺跡などについて情報収集を行う。そこで遺跡に眠る『アバ・レールの首飾り』の情報を手に入れる

3. 情報収集を終えた冒険者は、依頼人ともにラルク村に向かい、村長からさらに詳しい話を聞く。実は税金を奪ったのは領主の息子と若い衆であり、彼らが罪に問われるのを避けるため、対外的には「山賊のせい」として冒険者たちに内々に処理をしてほしい旨を告げる

4. 領主の息子たちが居座っている妙にマッスル押しな遺跡に向かい、領主の息子たちを『クーリングオフ』の呪文でマジックアイテムの影響から解き放つ

5. 街の酒場に戻り、依頼金を受け取る

・村長の息子は、領主からの税の取り立てが重いことに不満を持っていた
・ある時、彼は村の近くに古代遺跡があり、そこにマジックアイテムが眠っていることを知る。そのアイテムを使うことでなにかを解決することが出来るのでは……と考えたことから遺跡に向かい、『アバ・レール』の魔力で豹変してしまった

……これらのシナリオを図解したのが、上記のホワイトボードとなります。

4. 遊ぼう!!(そしてシナリオをやってみた結果)

まあ、そうなりますよね。

雑感

シナリオ、出来ちゃったんですけれど。

「そもそもLARPに不慣れな人間が当日のうちにシナリオを作って遊ぶ」とかどう考えても無茶なのでは、というのが当初の印象に反して、本当に3時間でシナリオが完成してしまいました。しかも、わりと原形から離れて、オリジナル要素も組み込んできた形で。

CLOSS様がこれまでに培ってきた「シナリオ作りのノウハウ」「シナリオを円滑に進めるための下準備」「見立てのための小道具の数々やテクニック」が、一見して無茶とも思えそうな試みを難なくクリアさせてしまったのでした。
今ひとつGMが正気を失っている時のシナリオになっている感が否めないのはともかくとして。

また、実際のゲームに際しても、最初の数シーンは熟練GMのお手本に始まり、それ以降のシーンは熟練GMのサポートを受けつつGMを体験出来る安心安全仕様。LARPのGM初心者であっても (GMどころか当方LARPからしてまず初心者)、アドバイスを受けながらGMとしてシナリオを進めていくことが出来ます。
本当に1日で、しかも手ぶらで、様々な「LARPの楽しさや奥深さ」に触れられる、とても楽しいイベントでした!

改めまして主催のCLOSS様、そして冒険者・紡ぎ手の皆々様に御礼申し上げます。
ありがとうございました!

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