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キューバで出会った秘儀の占い(1)

キューバに興味を持っている日本人は多いですね。いまでも、50年代、60年代のアメリカのクラッシクカーが堂々とハバナの町中を走っているし、よく映画や写真にでてくるハバナの海岸通りは、とても絵になります。資本主義世界ではあたりまえである広告やイルミネーションがまったくないからです。渋谷の駅前や、ニューヨークシティのタイムズスクウェアと対極をなす、手つかずの風景です。

世界遺産になっている旧都トリニダーを散策し、チェ・ゲバラが少数のゲリラを引き連れてバチスタ軍を壊滅させた伝説の町サンタ・クララの革命広場に行き、ぼくのハバナの親友が世界一きれいだと自慢したバラデロのビーチで遊び、東のサンティアゴの「カサ・デ・ムシカ」のライブ音楽、ソンのリズムに合わせてサルサを踊り、それでキューバとさよならするのは、なぜかさみしい。

まるで、フレンチレストランに行って、メインデッシュを食べずに帰ってしまうみたいで

ぼくにとって、キューバでのメインディッシュだったは、アフリカ系の人たちがひそかに継承してきたアフロ信仰でした。なかでも、ババラウォbabalawo(秘密の父)と呼ばれる司祭たちがおこなう秘儀の占いに魅入られました。ババラウォに会って、自分の守護神や運勢を占ってもらいたかったのです。

なぜなら、かれらの祖先はアフリカ(とりわけ西アフリカのナイジェリア)のヨルバ族のひとたちで、奴隷としてアメリカ大陸やカリブ海に連れてこられ、奴隷としての毎日に心折れるひともいた大勢いたなか、いままでたくましくサバイブしてきたからです。

ぼくはそうした信仰にかれらのサバイブの秘密があるのではないか、と直感しました。毎日の苦しい生活のなかで、メンタルを鍛えるヒントがその占いの中にあるのではないか、と思ったのです。

そうしたいきさつの一部は、数年前に「あっけらかんの国 キューバ」(猿江商会)という本に書きました。

本物のババラウォたちは、外に看板をだして商売しているわけではありません。こちらからは口コミだけで出会える、ある意味、秘密の世界なのです。ぼくのハバナの白人の友達から悪いババラウォがいると脅されるし、正直なところ、ぼったくられるのが怖くて、本物のババラウォにはなかなか出会えませんでした。(つづく)




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