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【考察】野手の実力を見極めるのに必要な二軍打席数は?

こんにちは。過去数回に渡って各球団の機会配分に関する投稿をしていますが、今回は改めて二軍打席に関してフォーカスし、「野手の実力を見極めるのに、二軍打席は何打席必要か?」という点についてnoteしたいと思います。

1. 導入: 二軍打席は選手の実力を見極めるための投資である。

前回までの記事内でも言及していますが、改めて機会配分の重要性について以下を引用したいと思います。

◆なぜ機会配分が重要か?
・打席やイニング数というのは、12球団に等しく与えられたリソースで、それをどう配分するかは球団にとって重要な戦略の一つ
・我らが中日ドラゴンズのような予算が限られた球団は、ドラフトで獲得した選手を一流プレーヤーに育て上げることが、王道のチーム強化法になる
一軍の機会配分で最優先すべきはチームの勝利。そのために若手に無理して機会を与える必要はないが、先行投資的な考え方も必要
二軍の機会配分で最優先すべきは若手選手の育成。ファームは一軍選手の調整の場の側面もあるが、育成のための出場機会は意識的に確保した方が良い
・各球団は限られた打席・イニングの配分を、それぞれの球団にとってのもっとも効率的な「育成と勝利のバランス」を考え配分していると思われる

以上の引用の中から今回フォーカスしたいのは、「二軍の機会配分で最優先すべきは若手選手の育成」という点についてです。一軍の機会配分については兎にも角にも勝利が最優先されるためなかなか育成のために機会配分するのは難しいですが、二軍の出場機会は育成が最優先されると考えてまず間違いありません。一軍の勝利のため選手に調整の機会を与えるのも大切ですが、それ以上に多くのウエイトを若手への投資に当てることが、選手の戦力化の王道となります。

一方で多くの方が理解されているかと思いますが、機会を与えれば与えるほど選手が育つわけではありません。毎年のドラフト&戦力外でデプスの入れ替えが発生する以上は、一軍で戦力化する前の若手〜中堅選手に対し「どのタイミングで投資(二軍での機会配分)を終了するべきか」というシビアな判断が球団側には求められるわけです。その判断基準は各チームによって様々かと思いますが、その判断の成否が効率的な機会配分デプスの健全化に大きく関係してくるのです。

今回の記事においては、野手の二軍打席配分にフォーカスした上で、野手の実力(将来性)を見極めるために何打席与えるべきなのかについて、考察したいと思います。ドラフトで野手を獲得しまず二軍での育成が必要と判断されるプロ1年目から、二軍で優先的に打席を投資する「育成対象」ではもうないと判断する際の目安は何だろうか。

ここからは高卒大卒社卒と入団時の経歴別に分けた上で、規定打席に到達経験のある選手たちが初めて規定打席に到達するまでに与えられた、二軍打席数をnoteしていきます。その結果を見た上で、各経歴ごとの「育成対象として今後も打席を優先的に与えるかどうか」判断すべきタイミングを考察します。

2. 高卒野手: 1,000打席経験 or 6年目到達時

まずは高卒野手から。2008年のドラフト以降入団した高卒野手195人のうち、規定打席に到達経験のある選手は18人。その18人が規定打席に初到達するまでに要した年数と打席数が上記グラフに示されています。
グラフを見ると1,000打席前後で大半が規定打席に到達しており、1,000打席を超えても二軍での修行期間は6年まで大田泰示は例外ですが、基本的には二軍通算で1,000打席を経験するか、プロ6年目=24歳のいずれか早いタイミングが、未だ芽の出ない高卒野手に今後も打席を与え続けるかどうか判断する時期になるかと思います。

ただこれは一般論的な話で、育成球団として名高い日本ハム「高卒野手を中心にドラフトで獲得し、1,500打席以上打席を与える」という青田買い的な投資を行なっていたりもします。彼らの高卒野手の育成戦略については、またいつか機会があればnoteしたいと思っています。

3. 大卒野手: 500打席経験 or 5年目到達時

続いて大卒野手。高卒野手に比べて即戦力としての活躍が求められるため、レギュラー獲得までの年数・打席数が少ないのがわかるかと思います。2008年のドラフト以降入団した大卒野手139人のうち、規定打席に到達経験のある選手は18人。その18人が規定打席に初到達するまでに要した年数と打席数が、上記グラフで示されています。
これを見ると500打席前後で大半が規定打席に到達しており、500打席を超えたとしても5年目までには二軍を卒業し、一軍のレギュラークラスに成長しているのがわかります。

印象的なのはプロ4年目までに1,000打席を超える投資を受けて、一昨年遂に開花した西武山川でしょうか。レギュラー定着までに打席数は比較的多く必要としましたが、今や日本球界を代表するスラッガーに成長し、投資打席数以上のリターンをチームにもたらしたと言えます。選手それぞれの成長曲線は千差万別のため、打撃成績にとらわれず(山川は二軍でめちゃくちゃ無双してましたが)将来性を見通す力が編成側には求められます。

4. 社卒野手: 400打席経験 or 5年目到達時

最後に社卒野手。こちらは高卒社会人も大卒社会人も含んでいます。2008年のドラフト以降入団した社卒野手73人のうち、規定打席に到達経験のある選手は16人。その16人が規定打席に初到達するまでに要した年数と打席数が、上記グラフで示されています。
これを見ると400打席までに大半が規定打席に到達しており、400打席を超えたとしても5年目までには二軍を卒業し一軍でレギュラーの座を担うようになっています。

社卒野手は高卒、大卒と比較してもプロ入り時の習熟度が一段高いと思われるので、プロ1年目からレギュラーを掴む選手も少なくありません。そんな中ロッテ清田井上晴DeNA宮崎は初規定到達までに倍近い打席数と年数が掛かっていますが、彼らの共通点としては「二軍ではやることない」レベルの打撃成績を残していたということ。二軍で無双していればいつか花開くという訳ではないですが、時間がかかっても開花する可能性がある選手は二軍で最低限の成績は残しているということです。これは入団までの経歴に関係ないことではあるでしょうが。

◆ロッテ清田、井上晴、DeNA宮崎の二軍通算成績
清田: 246試合 967打席 打率.324 本塁打42 打点169 OPS.948
井上: 235試合 857打席 打率.344 本塁打44 打点165 OPS1.004
宮崎: 216試合 886打席 打率.319 本塁打24 打点133 OPS.832

5. まとめ

以上、経歴別に「育成対象として今後も打席を優先的に与えるかどうか」判断すべきタイミングを見てきました。考察したポイントをまとめると下記の通りとなります:

高卒: 1,000打席経験、もしくは6年目到達時
大卒: 500打席経験、もしくは5年目到達時
社卒: 400打席経験、もしくは5年目到達時

ただ社会人卒の野手に対して5年も待つと、レギュラーを掴んだ時には30歳間近になるため、これは判断のタイミングとしては遅すぎるのではと思われるかもしれません。こちらは社卒の項でも述べましたが、二軍で圧倒的な成績を残していることが、5年目まで待つための追加条件と言えます。

ドラゴンズを例に出すと、2014年のドラフトで入団した友永、石川駿、井領、遠藤の4年が今季5年目、二軍通算打席数も全員400打席をオーバーしている(友永は1,300!)ため、今季は正念場と言えるでしょう。


以上、二軍打席数をベースに「育成対象として今後も打席を優先的に与えるかどうか」判断すべきタイミングについて考察してきました。今後の課題としては、投手の投球回数における判断すべきタイミングについても調べてみると面白そうです。またドラゴンズの選手にフォーカスして、選手個別に今季二軍で何打席与えるべきかについて提案するnoteも近々投稿予定です。二軍が開幕する3/15までにはアップできればと思っています。

それでは、また!

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