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鈴木博志の二軍降格は妥当だったのか?

皆さま、こんにちは。

中日ドラゴンズファンのロバートさんと申します。この度中日新聞プラスさんからお話を頂き、「達人に訊け」のコーナーでブログ連載をさせて頂くことになりました。

私はただの中日ファンのため「達人」の冠が付いたコーナーで連載を持つことはかなり恐縮ですが、せっかく頂いた機会ですので読者の皆さまに少しでも面白いと思ってもらえるような記事をお届けできるよう頑張っていきたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します。

早速ですが第一回目は、

「鈴木博志の抑え剥奪・二軍降格は妥当だったか?」

というテーマについて考えたいと思います。

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中日ファンの読者の皆さまならご存知かと思いますが、今季与田監督にクローザーに指名された鈴木博志は、現在不振のため二軍調整を続けています。

開幕から順調にセーブを稼ぎ長らくリーグトップのセーブ数をマークしていましたが、不安定な投球内容から中日ファンの胃をキリキリさせることは日常茶飯事。内容の改善は見られず、5/31にクローザーの座をR.マルティネスに譲り、6/7には遂に二軍降格となってしまいました。

今回の記事では、そんな「鈴木博志の抑え剥奪・二軍降格が妥当な判断だったかどうか」検証したいと思います。

1. 当時の状況を振り返る

1.1 リリーフ投手の「序列」
まずは当時のリリーフ投手陣の序列について見ていきます。リリーフ投手の「序列」とは要は各投手がどのような展開で投げていたかを表す役割分担のようなものです。

9回に投げるクローザー(例: 岩瀬)や7-8回に投げるセットアッパー (例: 浅尾)は有名ですが、今年のドラゴンズは阿波野投手コーチの元さらに細かい役割設定を行なっています。

鈴木博志がまだクローザーだった5/30時点の序列を見ていきましょう。下図は私が各投手の起用パターンから考察したもので、実際に阿波野コーチがその通りに運用していたと言う訳ではありませんので悪しからず。

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ただ恐らくこのような序列で各投手は起用されていたと思われ、鈴木博志はピラミッドの頂点であるクローザーに君臨していました。
この序列の確認は以下でどう配置転換を行なっていったか考える際のベースになります。


1.2 Wセットアッパー体制は如何に勝利に貢献していたか?
次に4/17 - 5/30におけるチームの勝ちパターンについて考えます。何故この期間について考えるかと言うと、ドラゴンズは4/17以降R.マルティネスをAチームに組み込み、ロドリゲスとのWセットアッパー体制を敷くようになったからです。

鈴木博志の抑え降格はつまりセットアッパーが2枚→1枚から減ることを意味するため、Wセットアッパー体制がどれだけ勝利に貢献していたかを確認することで、当時の判断の妥当性について考えます。

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4/17-5/30の勝敗: 14勝20敗
【勝ちパターン】 14勝中10勝がAチームの3枚全て、もしくは2枚を投入し僅差のリードを守り抜く勝ち方。残り4勝は4点差以上付けた試合。
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このように勝ち試合では3点差以内の僅差で勝利する試合が多いドラゴンズにとっては、7回からWセットアッパーを投入することが有効であったと言えます。

それでは何故この状況を捨ててまで、鈴木博志の降格に踏み切ったのでしょうか?

1.3 直近5試合における鈴木博志の調子
ここでクローザーの座を追われるまでの直近5試合(5/19-30)における鈴木博志の投球内容を振り返りたいと思います。

開幕から5/16までの17登板とその後5/30までの登板における成績を簡単に比較してみると、明確に成績が悪化しているのが分かるかと思います。

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特に被打率は.230から.435と大幅な悪化を示しており、また三振も以前より奪えなくなっているのが分かります。

鈴木博志の成績不振は高めにボールが抜けまくる制球難=四球連発のイメージが強いと思いますが、末期には打者があらかじめ高めに浮くボールを狙い打ちにしていたことによる被打率の悪化が原因だったと考えられます。

序盤はたとえ四球は出したとしてもその球威で押しまくって9回を締めくくっていたのが、制球難が悪化したことで高めにしか投げられなくなり痛打を食らうパターンが増えてきた、といった感じでしょうか。

この辺はもっと詳細なデータや映像で確認すべきところかとは思いますが、あまり細かすぎてもアレなので今回はこれくらいざっくりした振り返りに留めておきます。

2. 取りうるシナリオとそのメリット・デメリットの整理

ここでは前述したリリーフ投手の序列をどのように改編する余地があったかについて検討します。個人的には下記4つのシナリオが可能性として挙げられるのではと考えました。

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恐らく当時の状況をベースに、上記のシナリオのメリット・デメリットを念頭に置いた上でどのような配置転換を行うかを考えたのだと推察します。

以下では、実際の判断とその背景には何があったのかについて考えます。

3. 実際の決断とその背景

冒頭に述べた通り鈴木博志は5/31にクローザーの座をR.マルティネスに譲り、6/7には二軍降格となりました。私はその決断の背景には下記の4点があったのだと考えます。

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1. 鈴木博志の不振、短期的な改善の見込みなし (上記で説明した通り)

2. 平田、福田の相次ぐ離脱により打線の弱体化が懸念される

3. 怪我人がまだ戻ってこない手薄な先発陣を考えると、ロメロ降格→アルモンテもしくはモヤの昇格は難しい

4. R.マルティネスが7/16-8/10の期間でキューバ代表として国際大会に参加するため離脱する
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以上を踏まえて、与田監督ら首脳陣は下記のように考えたのでは?と推察します

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投打に怪我人が多い現状では、交流戦からオールスター明け頃までは苦戦が予想される。

→一方でR.マルティネスのオールスター明けの離脱は決定している。

→それまでの期間はAチームを温存しながら鈴木博志の復活を促したい。

→結果限られた勝てるチャンスを逸しても仕方ない、目先の勝利を追いかけず我慢の采配を貫く。
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つまり鈴木博志の抑え剥奪・二軍再調整は、『Aチームの枚数が減ることのデメリットを理解した上で、それでもシーズン後半に戦力が揃ってくる頃に消耗しがちなリリーフをなるべくヘルシーな状態で保ち、反撃態勢を整えるための戦略』だったのではないでしょうか。

上記の理由から私は

「鈴木博志の抑え剥奪・二軍降格は妥当な判断だった」

と結論付けたいと思います。

4. 実際の結果と課題

ここでは鈴木博志の抑え降格後、特に交流戦において実際にどのような結果が生じたかについて簡単に列挙しておきます。

1. 交流戦は8勝10敗と健闘し、大きく星を落とすことはなかった。勝ちゲームでは先発投手が7回以上投げる、打線が爆発するなど上記で議論した仮説よりもいい結果となった。

2. 一方でBチームの課題が顕在化。6-7回のリード時やピンチ時、大量リード時などで抑えきれず、セーブシチュエーションでなくてもAチームの登板を促してしまい、結果としてAチームの負担軽減には繋がらなかった。

3. 鈴木博志は二軍ではキンブレルポーズをやめ、投球フォームも修正することで、低めに150キロ超えのボールを制球できるようになり改善傾向にある。現時点では二軍調整は順調のように見える。

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今後の課題
個人的には当時の判断自体は妥当だったように思いますが、結果はBチームリリーフが期待に応えられなかった誤算もあり想定した通りにはいかず、ロドリゲス&R.マルティネスの負担は減らすことができなかったように思います。

一方で鈴木博志の調整は順調そうなので、彼がR.マルティネスと入れ替わりに戻ってきたときのパフォーマンスが、当時の「妥当」な判断が結果として「成功」だったのかどうかを判断する「最終項目」になるかと思います。


以上、ロバートさんの「データ」で考える中日ドラゴンズ、第一回の記事でした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!

データ参考:
スポーツナビ
nf3 -Baseball Data House-

*2019/6/29 中日新聞プラスへの投稿分を転載

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