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【考察】ナゴヤドームにホームランテラスは設置するべきか?

こんばんは。日曜の夜ですが久しぶりにnoteを更新したいと思います。今夜は「ナゴヤドームにホームランテラスは必要かどうか」についてざっくりとnoteします。

1. 背景: ホームランが12球団でもっとも出ない、「魔境」ナゴヤドーム

まず今回のテーマを考えるに至ったきっかけは、我らが中日ドラゴンズにおける長年の貧打ぶりとパワーレスな打撃スタイルにあります。与田新政権1年目にあたる今季は村上打撃コーチのもと「強い打球を打つ」ことをテーマに掲げ打撃改革を行ってきましたが、現時点でまだまだ結果が出ているとは言い難いのが正直なところです。

その原因の大きなところが「魔境」とも称される本拠地ナゴヤドームの存在。12球団屈指の広さと外野フェンスの高さから、12球団でもっともホームランが出にくいのはよく知られているところと思います。中日ドラゴンズは長年このピッチャーズパークを本拠地としてきたことで、そのナゴヤドームに合わせた投手中心の守り勝つ野球を志向してきました。

(注: このnoteでは触れませんが、中日ドラゴンズが強かった年はいずれもリーグ平均以上の攻撃力を備えた打ち勝つ野球をしていた、というのは一応コメントしておきます。)

引用元: 日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog

守り勝つ野球を志向する中日ドラゴンズは、ドラフトでは上位で投手中心、野手はアベレージタイプ&広いナゴヤドームでも十分守れる守備力を備えた選手を指名することが多くなりました。ときに平田良介、堂上直倫や高橋周平などその年の目玉高卒野手を指名することもありましたが、前述のチーム事情から高校時代に発揮していたパワーツールはプロ入り後は影を潜め、よりナゴヤドームに適した好守の中距離ヒッターに変貌することもしばしば。その結果、現在チームを悩ます深刻な長打不足と、同じようなタイプの打者しかいないパワーレスな打者が揃ういびつな構成に陥ってしまいました。

野球は点取りゲームなので、如何にたくさんの得点を効率的に取るか?を追求することが重要です。得点するためには出塁すること(安打+四球)進塁すること(走塁+長打)が重要ですが、ナゴヤドームを意識しすぎた結果、走者を進める長打力をおざなりにした中日ドラゴンズは、他球団と比較して打撃面で大きなディスアドバンテージを負ってしまいました。

そこで近年ネット上でよく議論されているのが、「ナゴヤドームにホームランテラスをつけるべき」という主張です。ヤフオクドームにあるホームランテラスやZOZOマリンスタジアムに今季から設置されたホームランラグーンのように、ナゴヤドームを狭くすることでホームランを増やしてチームの長打力をアップさせるべき、というのがその主張。確かに上記2チームはテラス/ラグーンを設置することで本拠地でホームランを量産しています。ホームランテラス肯定派は「球場が狭くなることで打者はより長打を狙うようになり、投手はホームランを打たれるまいとその投球をより進化させようとするため、投打に好影響をもたらす」と主張しています。

一方で、ホームランテラス否定派は「ナゴヤドームを狭くすることで、投手の被本塁打が増えて失点が増える、中日野手の持ち味が失われる」と主張。どちらも確かにそうだと頷きたくなりますが、ナゴヤドームのホームランテラス設置にどのような効果が起きるかは個人的にはよくわからないなと思っています。

よって今回の考察を通して、過去の事例を元にナゴヤドームにホームランテラスはアリかどうか、について考えてみたいと思います。以下では、まずヤフオクドームのホームランテラスとZOZOマリンスタジアムのホームランラグーンが両チームの打球傾向やホームランの出やすさにどう影響したかを考察します。次にナゴヤドームにおける中日ドラゴンズの打球傾向やホームランの出やすさを確認した上で、ホームランテラスをナゴヤドームに設置した場合どのような影響が出そうか考えてみたいと思います。

2. ホームランテラスは投打にどのような影響をもたらすか?ヤフオクドームとZOZOマリンスタジアムを例に考える

それではまずはじめにヤフオクドームのホームランテラス(2015年設置)ZOZOマリンスタジアムのホームランラグーン(2019年設置)が、ホークスとマリーンズの打球傾向やホームランの出やすさにどう影響したかを考察します。

検証はデルタのデータサイト1.02より、両チームの本拠地におけるFB% (フライ打球の割合)HR/FB (フライ打球におけるホームランの割合)が、ホームランテラス/ラグーンの設置によりどのように変化したかを見ることで行います。前者は「テラス/ラグーンの設置により打者はフライを狙う打撃スタイルに変わったかどうか」を確認するため、一方で後者は「ホームランの出やすさがテラス/ラグーンの設置でどのように変化したか」を確認するためのものです。こちらの2点について、両チームの打者と投手の成績がそれぞれリーグ平均と比較してどう推移していったかを見ていきます。それではいってみましょう。

①打者 FB%
ホークス: テラス設置前はリーグ平均以下のフライ割合が、テラス設置とともに平均レベルへやや上昇。大きな変化はないが、テラスに適応した打撃ができるようになってきた(?)のか、2016年以降は一貫して上昇し、現在ではリーグ平均を上回っている。
マリーンズ: ラグーン設置前から一貫してフライ割合は高く、設置後の今年2019年はリーグ平均から大きく乖離している。もともとラグーン設置に適した打球傾向だったと言える?

②打者 HR/FB
ホークス: テラス設置前にリーグ平均以下だったホームランの出やすさが、設置後からリーグ平均を大きく上回るように。
マリーンズ: ラグーン設置前にリーグ平均以下だったホームランの出やすさが、設置後からリーグ平均並に。

③投手 FB%
ホークス: テラス設置前にリーグ平均以下だったフライ割合が、テラス設置後は平均を上回るように。今年に関してはまだシーズン途中だがリーグ平均を下回っている。
マリーンズ: フライ割合は2018年を除いてラグーン設置前がリーグ平均並かそれ以上で、今季もシーズン途中ながらリーグ平均並。

④投手 HR/FB
ホークス: テラス設置前にリーグ平均以下だったホームランの出やすさが、設置後からリーグ平均を上回るように。
マリーンズ: ラグーン設置前にリーグ平均以下だったホームランの出やすさが、設置後からリーグ平均並に。


以上の結果から、以下のことが言えるかと思います:

・ホームランテラス/ラグーンの設置により、ホームランの出やすさは打者・投手ともにリーグ平均以上にアップする。

・一方でフライを狙うようなアプローチの変化が短期的には起きるかどうかは不明確。ホークスのように中長期的にはそういうアプローチに変化していくと思われる。

今回の考察ではFB%とHR/FBの推移しか確認できなかったためアプローチの変化がどう起こるか深く考察できませんでしたが、一般的に言われているホームランの出やすさは明確に投打に影響すると言えそうです。

3. ナゴヤドームにホームランテラスを設置したとき、投打にどのような影響が予想されるか?

次に前項の考察を踏まえて、同様にナゴヤドームにおけるドラゴンズの現状を確認してみます。

①打者 FB%
2014年以降一貫してリーグ平均を下回っており、リーグ平均との差は年々広がっている。

②打者 HR/FB
こちらも2014年以降一貫してリーグ平均を下回っている。2017年に突発的に上昇しリーグ平均に近づいているのは、その年にホームラン王を獲得したフライヒッターゲレーロの影響?

③投手 FB%
基本的にはリーグ平均並かそれ以下だが、自チームの打者ほどは平均と離れていない。

④投手 HR/FB
2014年以降一貫してリーグ平均を下回っている。若干だが自チームの打者ほどは平均と離れていない。


以上の結果から、ナゴヤドームにホームランテラスを設置した場合どうなるかについて、私は下記のように考えました:

・ナゴヤドームへホームランテラスを設置することで、ホームランの出やすさは打者・投手ともに少なくともリーグ平均並にアップする。

・打者は現時点でのアプローチだとゴロ割合がかなり高いので、短期的には劇的にフライ割合が増えることはなさそう。つまりテラスの影響でホームランは増えるが、期待している以上の効果を「短期的には」もたらさないのでは?

・投手はフライ割合がリーグ平均並のことを考えると、打者よりもテラスの悪影響を被ってしまいそう。打者のゴロ割合の高さから考えると、短期的にはテラス設置の影響はマイナス収支となりそう?

4. 結論とホームランテラス設置までの課題

以上、簡単ではありますがFB%とHB/FBの推移からナゴヤドームにおけるホームランテラス設置の是非について考えました。

結論としては、「ホームランテラスの設置により明確にホームランは増えるが、投打のフライ割合を考えると短期的には自チームのホームランより被本塁打の方が増える結果となりそう」です。

中日ドラゴンズ野手陣のゴロヒッターぶりを考えると打撃アプローチの変化は一朝一夕では難しいように思いますし、ナゴヤドームの広さと高いフェンスに守られてきた投手陣は大きな影響を受けそうです。

一方でホークスの事例からも分かるように、短期的には難しくても長期的にはチームの育成方針やスカウティングの刷新等により、フライ割合を高めていけると考えられます。よってチーム方針によっては短期的にはマイナスを被っても、長期的にはホームランテラスのメリットを最大限活かせるような打撃アプローチへ改善させることは可能だと思います。

よってドラゴンズの場合はまず村上コーチが掲げる「ナゴヤドームが広いからというのは関係ない、ホームランを狙って欲しい」という方針からブレずに打撃スタイルの改革を行う。編成はスラッガータイプの打者を積極的に獲得し、コンタクトヒッター揃いの打撃陣のバリエーションを増やす。まずはこの方針を1-2年単位で行い、改善を促してから例えば2021-22年のホームランテラスの設置でも遅くはないのではないでしょうか?球界トレンドの目まぐるしい変化によりホームラン・長打力の改善は急務ですが、性急に行うのではなく戦略的かつ段階的に行うべきと思います。

以上、簡単な考察ではありましたがナゴヤドームにおけるホームランテラスの是非について考えてみました。FB%とHR/FBの推移のみをベースとした考察のためイマイチ浅い内容になってしまいましたが、この考察結果について皆様のご意見・疑問など頂ければ嬉しいです。

以上、ここまで読んで頂きありがとうございました!

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