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規制の銃

 朝から晩まで身を乗り出して鈴木鈴木と叫ぶ声が疎ましいので規制の銃をぶっ放してリフレインを規制した。鈴木は鈴木ばかりを繰り返すことができなくなって、スタッフの名を順に叫んでいる。デモ隊の列に規制の銃をぶっ放して、旗揚げを規制した。彼らは着ていたTシャツにメッセージを書いて、裸になって行進した。なかなかしぶとい連中だ。
 顔を合わせる度に上から説教してくるので、規制の銃をぶっ放してお説教を規制した。「人生の先輩としてのアドバイスだよ」言葉を差し替えて逃れようとする。「経験が足りないね」規制の銃をぶっ放す。「歳を取ればわかるよ」経験を、歳を規制する。「将来のことを考えないと」将来を規制する。「君のためを思って言ってるんだよ」もうたくさんだ。1つ1つ潰してもきりがない。規制の銃をぶっ放してコピペを規制した。これでもう何も言えないね。

 ドラマを見ているとハラハラするので、規制の銃をぶっ放して神の手オペを規制した。医師は無難なオペを確実に行うようになった。犯人がなかなか捕まらないので、規制の銃をぶっ放して捜査に規律を与えた。刑事をあだ名で呼ぶことを規制して、ちゃんと上の名で呼ぶようにした。聞き込み、尾行、張り込み、ありきたりな手法はすべて規制してやった。犯人の想像の上を行かなければ、お縄はちょうだいできないからだ。頭が痛くなるので、科学的な班はすべて解体させた。技術に頼らない人間ドラマを、心して待った。

 そこにもここにもアホがいるので、規制の銃をぶっ放してアホを規制した。一旦落ち着いて賢い人ばかりになったが、しばらく経つとその中の一部からアホが出現して悪さをするようになった。私はまた規制の銃をぶっ放した。そうして安らげる時間はいつもひと時の間にすぎなかった。規制の銃はいつまでも手放せない。「アホと言う奴がアホだ!」アホが捨て台詞を投げていった。アホは私の中にも存在するのかもしれない。私は自分を守るため、私に向かって規制の銃をぶっ放した。

#詩 #小説 #メルヘン

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