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メルカリのインハウス採用から垣間見えるコピーライターの未来とかの話

●メルカリさんの動きについてちょっと考えてみる

コピーライターなる商売をやってる(株)Rockakuの森田です。
一応、ASCIIさんから書籍も出したり、宣伝会議や中小企業庁、オープンイベントやあちこちの役所、企業研修なんかでセミナー講師やったりもしてます。とはいえ、まあ、ざっくり言うとただの落語好きの靴マニアです。

さてさて、メルカリさんがコピーライターの募集をはじめてて、ああ、ボチボチそういう時代が来るのかなあ……と思い、締め切りや家事の手を止めて筆を執りました。

みなさん、「コピーライター」と聞いたら、まず、どんなお仕事を思い浮かべますか。ええ、そうですね。ポスターのキャッチコピーとか、TVCMとか、そんな感じだと思います。もちろん、それもコピーライターの仕事です。僕自身も関わる機会はあったりします。

●「広告コピー」というジャンル

こうした「所謂コピーライターっぽい仕事」を、業界内では「広告コピー」という不思議なカテゴライズで呼んだりします。これ、今回の本題じゃないのであんまり詳しく書きませんけど、広告業界に馴染みがない人にとっては、ちょっと不思議な言葉に見せるかもしれません。なんか意味かぶってる感じというか……「犬ドッグ」みたいな(いや、ちがうか?)。で、まあ、本題じゃないんですが、後で出てくるキーワードなので、ひとまず「広告コピー」という言葉は覚えておいてください。

で、一端、メルカリさんの話に戻ります。例の募集要項を見ていくと、こんなことが書いてありました。募集要項の一部抜粋がこちらです。

まあ、コピーライターという職種に馴染みがない人にとっては「ふーん」くらいの印象かも知れませんけど、これってけっこうおもしろいというか、画期的な話だなって思いました。

●「広告の外側」で求められるコピーライターのスキル

なにが画期的なのかと言えば、これってつまり、「広告の外側の領域」でコピーライター(的なスキル)を求めているってことなんですよね。ここに関しては「おおっ」ってなりました。僕は常々、コピーライターの仕事は3つのステップで進んでいくだろうと論じてきたからです(主に居酒屋で)。

(1)ADVERTISING
(2)CONTENTS
(3)PRODUCT(+SERVICE)

広告業界から誕生して、「ADVERTISING」の領域を主戦場にしていたコピーライターたちは、今やさまざまな「CONTENTS」の担い手にもなっています。まあ、このあたりまでは実例を出すまでもなく、なんとなくご理解ただけるかと思います。

んで、問題は最後に挙げた「PRODUCT(+SERVICE)」です。要は、広告ではなく、商品そのものやサービスそのものの開発に参加して、例えば、ネーミングを考えたり、コンセプトを言語化したり、ユーザーとのコミュニケーションのルール(主語、視座のポジショニング、言葉遣いなどの設定)をつくったりする……という感じです。つまるところ、広告の手前(上流という言い方は嫌いなので敢えてしません)の領域とでも言いましょうか。あくまで僕の現場感覚でしかないので、信憑性はアレですけど、この領域で、言葉の重要性が叫ばれはじめてます。ただ、上手いこと立ち回れている人は少ないですね。おかげで食いっぱぐれてないですけど。

●僕がコピーライターとして経験してきた「広告の外側」の仕事

僕自身、某スタートアップ企業のプログラミング教材の開発チームに半年間ジョインして、プロダクトとサービス全体の言葉遣いを決めたり、コンセプトを構造化したり、取説の編集をしたり……と、あくまでも言葉の専門家=コピーライターとしてエンジニアやUIデザイナーたちといっしょに仕事をしていた時期があります。

あとはとあるメーカーさんと約10年間契約を続けて、ブランディング、コーポレートサイトの設計、商品開発、販促物制作、経営者の連載記事の編集、セミナー資料、採用試験に至るまで、さまざまな部分で伴走型のサポートを提供させていただいています。

こうした仕事もまた、僕にとってはコピーライターのスキルが必要とされる領域なんですけど、こういう話を、先ほどの「広告コピー」を主戦場にしている人たちに話すと、ちょっとだけ温度差を感じる瞬間があります。

●「広告コピー」と「○○コピー」

僕がやってきたこの仕事は「コピー」なのか? と問い詰められれば、答えは「YES!」です。ただ、「広告コピー」なのか?と言われたら答えは「NO!」です。広告との領域が限りなく曖昧なものも含まれますが、「広告コピー」とは異なります。じゃあなによ? ってコトになるわけですけど、うーん。僕が知る限り、あんまり明確な名前がないっすよね。

半ば強引に「広告コピー」との境界を示すとするなら、「事業コピー」になる……んすかね。あんまりイケてる言い方じゃないですけど。でも、メルカリさんが求めてるコピーライターの領域は、おそらく「事業コピー」の側ですよね。あるいはそれを、編集とか広報とかコミュニケーション設計とかUXとか、いろいろな言い方をするかも知れませんが、それでもメルカリさんは「コピーライター」という職種名で呼ぶことにした。これは今後も注目していきたい部分。これがきっかけになってインハウスコピーライターの波がやってくる!かも知れないんですけど、ぶっちゃけ、話はそんなに簡単じゃないと思っています。

●コピーライターの育成コストとスキルセット

メルカリさんの募集要項にそって考えると、純粋な広告畑のコピーライターさんたちはけっこうハードル高いような気がしてます。少なくとも平均以上の文章力が求められますし、編集力もあった方がよさそうです。さらにはデジタルサイドの知識、サービスデザインの経験、UXとかUIとかIAの知見だって持っていないとしんどそうです。

うん。僕が知る限り、このあたりがまるっとカバーできる人材はけっこうレアです。あと、たぶん、育てるのにすんげえ時間とお金がかかると思います。それでも、メルカリさんには長嶋太陽さんというリーダーがいて、かつ、先進的なサービスやプロダクトを生み出す土壌があるので、僕が心配するような話ではないんです。

でも、これを他社でやろうと思って、とりあえず「インハウスコピーライター募集!」なんてことをはじめると、これ、けっこう危うい気がしています。
何でかというと、コピーライターという職種がいろんな意味で「閉じた」職域だということが大きい。一部のスタープレイヤーを除いて、あんまり表に出てくる職業じゃないんですよね。広告業界自体が守秘義務の世界だし、そもそも職業人口もかなり少ない(はず)。これ読んでる(コピーライターじゃない)あなた、コピーライターの知り合い何人います?

閉じてると、コピーライター以外の人たちは、「コピーライター=何できる人なのか?」ということについて理解が難しいんすよね。つまるところ、スキルセットが不明瞭ってこと。正直、このあたりをきちんと整理できている人っていないかも知れない。となると、インハウスで雇うに当たっての期待値と、実際に発揮されうるポテンシャルのズレが起こらない方が不思議なわけです。

●まあ、オチはない話でしたが

ここまで話をつらつら書いてきた僕は、今まさに、とあるウェブサービスの設計の仕事をさぼっている真っ最中です。詳しくは書けませんけど、当初は「ブランディングの仕事」として受けた案件ですが、僕が施策自体を「サービスデザインである」と位置づけて、基礎設計の役目を担うことになりました。

別にプログラミングとかデザインをするわけじゃないです。ただ、クライアント企業側の事業担当者さんも、デザインチームも、僕も、これからつくるものの要件が漠然としすぎていて手が止まってしまっていました。その状況を打破したのが(いま設計書の途中でnote書きはじめちゃったから打破しきれてないけど)言葉でした。

漠然としていた事業そのものの姿を、10文字足らずのスローガンと、300文字程度のボディコピーにしたためました。その結果、要件の輪郭があらわれはじめて、サイトマップの大枠とか、メニュー構成とか、コンテンツのタグ付けとか、ユーザーに付与する機能とか……そのあたりの要素がちょっとずつ見えてくるようになりました。そのコピーを試しに担当者さんに見せてみたら、すっと表情が変わった。お互いの見据える先の焦点がカチッと合った感じがしました。

因みにこのコピーは開発チームの意識共有のためだけに書かれたものなので、おそらく世には出ません。デザインワークで言えばアイデアスケッチとかイメージボードのようなものですが、こういう場面でもコピーライターのスキルはバリバリ生きてきます。これも1つのPRODUCTのコピーだし、「事業コピー」でもあります。

広告の仕事は楽しいし、別に避けているわけではないですけど、僕はこの領域に大きな可能性を感じています。もっと言えば、この領域に10年あまり身を置いてきたおかげで、今の会社があると言っても過言じゃないんです。もしも、これからコピーライターのインハウス化を検討している事業会社さんがいたら、世間話レベルからでもいいので声をかけてください。その場でしゃべるだけならご相談に乗りますし、場合によっては半年くらい通って、採用や研修に協力する準備と教材もあったりします。さんざん引っ張っておいて最終的には営業かよ……というツッコミもあるかとは思いますが、今日はそろそろ設計書づくりにもどりましょう。提案まであと何時間だっけ?

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ありがたやー
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Rockaku森田

コピーライター事務所でおなじみかもしれない株式会社Rockakuの社長やってます。
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