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Babe Ruth, Jenne Haan

Babe Ruth - First Base (1973)

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 ベーブ・ルースと言うとホームランを714本打ったアメリカ大リーグのヒーローを思い出す人が多いだろう。それは彼が白人のヤンキーだったからという人種差別の偏見の元に英雄化されている面が大きいが、それはともかく英国ロック界にもその名をどういう経緯で使用したのか、多分ひねくれ者的見地に基づいて命名したバンドと信じたいけど、プログレともハードロックとも言えないジャンルの狭間で個性を出していた。アラン・シャックロック率いるバンドで紅一点のボーカリスト、ジェニー・ハーンのエネルギッシュな歌声とバックのハードでブルージー且つほど良くアレンジされたサウンドでファンを魅了するパワーを持っている。

 アルバム単位で言うと彼等の名義では5枚の作品がリリースされているが、アラン・シャックロックが絡むのは3枚目の「Babe Ruth」まで。1975年にアルバムをリリースした後、これからという時の脱退劇となったようだが背景はよく知らない。ただ、彼の経歴はこの後、マイク・オールドフィールドやロジャー・ダルトリーのソロ作にも絡み、その音楽センスは業界の中ではかなり知れ渡っていた。その才能が再び陽の目を見たのはThe Alarmという80年代のニューウェイブ的ジャンルの狭間を生きるバンドのクリエイターで才覚を現してきた時だろう。そんなベーブ・ルースの初期三枚は実にヘヴィーなロックを叩き出していて、もっと世に知れ渡ってもおかしくないサウンド。ボーカルのジェニーの歌声はジャニスのようなしゃがれた面はないが、英国ロック界の中においてもかなりの声量とパワーを持った図太い歌声でバックのハードな演奏にマッチして負けていない声だ。特にファーストアルバム「First Base」は収録曲数が少ないながらもザッパのカバーを独自解釈でハードなナンバーとして演奏する力量を見せるので侮れない。先の三枚目の初っ端の「Dancer」も凄くカッコ良くてハード路線が好きな人には絶対ハマる楽曲だ。

 ジャケットを見て分かるように「First Base」はロジャー・ディーンの作品、セカンド「Amar Caballero」はヒプノシスの作品と売り側も気合いを入れて売ろうとしたと思う。ちなみに4枚目からはバンドのキーマンであったアランが脱退して後のホワイトスネイクを支えたバーニー・マーズデンがその任務をこなし、彼もここで才覚を発揮していた。以降5枚目では看板ボーカルのジェニーも脱退してしまい全く別形態のバンドの素振りだが結構初期と作風が似たアルバム「Kid's Stuff」をリリースするので面白い。最近ではベスト盤「Grand Slam: The Best of Babe Ruth」が出て、ジャケットのジェニーの姿が堪らない。そんなバンドで地味ながらも結構カッコ良い。

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