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Metallica - 72 seasons (2023)

 しばらくぶりのメタリカの新作「72 seasons」は今の時代でも恐らく何万枚以上もアルバムが売れるバンドの作品がリリースされる事から、事前の広告や広報がかなり充実していたように思う。コロナ禍から徐々に世界が戻ってきているのも要因だろうが、作品を作る側もじっくりと根を詰めて仕上げられただろうし、売る側はその間に売るものを探すのも大変だったろうが、このタイミングが一番良いリリースだと踏んだのだろう、見事に戦略通りに世間はハマり、本来のメタリカであればそこまで一般浸透するハズもないのに、いつしかお茶の間のテレビにも出演してライブを披露しながら、さらにそこでは大喝采を浴びているレベルなのだから凄い。もともと知名度は高まっていたとは思うがここまで一般的とは日本ではあまり考えられないが、自分の感覚がおかしいのだろう。黄色に黒のイメージシンボルも世間に訴え出るのに大きなインパクトだし、シングルカットされた「Lux Æterna」のキャッチーさはアルバム中唯一の3分台の楽曲で、明らかにシングルカットを意識しているが、これがまたとても良く出来ているので一般シーンへ訴えるにも丁度良いし、メタリカってやっぱり凄いな、と思わせるに相応しい楽曲。YouTubeでこの曲をイジって完全なカントリーソングに編集している映像があったが、なるほど、完璧なカントリーソングのメタリカバージョンだったのかと、改めて気付かされた次第で、メタリカがアメリカで愛される理由はもしかしたら潜在的なところでカントリーがあるからなのかもしれない、などと邪推までしてしまった。

 アルバム冒頭のタイトル曲「72 Seasons」からいつも通りに何かを期待させるイントロが流れ出てきて、メタリカらしいヘヴィなギターリフが刺さってくるので、期待以上に古き良きメタリカの初期衝動を彷彿させる。お決まりのパターンと言えばそのままだが、しっかりと身体に刻み込まれたメタルの王道パターンはある意味メタリカのパターンでもあるから、フラッシーなリフにジェイムズの安定したギターと歌唱力、そこに絡みまくってくるラーズのドラムこそがメタリカらしいパターンで、更にカークのワウペダル効かせまくったギターソロも、言われてみればメタリカ王道モデル。楽曲アレンジにしてもいくつもの楽曲パターンを組み合わせてギタリフで繋いでいく様相も健在で、ジェイムズの歌に至っては気のせいかこれまで以上に上手くなり、更に安定して高音から低音まで、さらにシャウトする面も含めて器用に歌い上げている気がする。全くやってる事はこれまで通りでそこまでの変化はないが、それでもかなりの傑作に仕上げているので冒頭から最後まで、とは言いすぎだがかなり充実して聴ける作品。いや、最後まで聴けると言うか、最後が11分以上ある大作ながらもかなり様々なパターンを盛り込んで作り上げられているのでワクワクしながら聴けるのはあるが、そこまで体力が持たない、と言う方が賢明だろうか、充実しすぎているアルバムとも言える。

 すでにいくつものプロモーションビデオが作られてYouTubeでも普通に見られるし、オフィシャルチャンネルでアルバム全曲公開しているのだから、サービスの充実度も素晴らしい。先日はJimmy Kimmelショウのライブに出演して新曲中心ながらも「Master of Pappets」までも披露して喝采を浴びていたが、安定したライブ演奏と、メタリカってここまで聞きやすかったっけ、と思ってしまうくらいに洗練されているのは不思議。ヘヴィメタルの中でもスピーディで重い音のバンドの印象だけど、今となればそうでもないくらいに世間はメタル慣れしてきたのかもしれない。なんか妙にカッコ良いアルバムなので長いし体力使うのもあるが、割と何度も聴いて味わっている。


好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪