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Slaughter To Prevail / KOSTOLOM(2021)〜デスコアから世界のニューメタルへ〜

凶悪ボーカリストAlex率いるデスコアバンドの2枚目フルアルバム。

悪魔のマスクをトレードマークにしたあの人達だね。AcraniaやHollow ProphetなんかでもプレイしているギタリストJack Simmonsがしれっと復帰してて、本作の制作にも参加しているようだ。

Alexは昨今の情勢に真っ向から反対する声明を自らのチャンネルにアップロードしてるし、漢気あるよね。彼のチャンネルは登録者も多いし、そういうことに勇気を持って発言するのは凄い。

で、前作では意外にも真っ当で筋肉質なデスコアを披露していたが、本作では大きく路線変更。簡単に言っちゃえばニューメタル化してる。

相変わらず凶悪なグロウルはあるんだけど、それ以上に地声混じりのスクリームや歌唱が増えた。

ってかがなるような歌声はSlipknotの影響をまるで隠しておらず、ここまで来ると逆に潔いな。まあトレードマークのマスクとかも似たようなブランディングの仕方だしね。

歌唱スタイルの変更に伴ってサウンドも若干変化。縦ノリ感をさらに重視したバウンシーな曲が大幅に増大。それに加えてぼんやりとしたエフェクトを加えた怪しげなギターが味付けをする。

地声からグワッと勢いに乗せてスクリームに転じる歌唱は直接的なアグレッションの減退には繋がってなくてかなりよい感じ、、いや、でもやっぱ攻撃性は落ちてるな。Alexの元の声質がエグいから許せるんだろうね。その分大衆性は大きく増したと思う。

#1「Bonebreaker」からしてもう本作の雰囲気を象徴していて、加工しまくったギターサウンドに縦ノリの刻みを加えていく。よりライブ感を意識した楽曲になってるね。クリーンボイスも使ってるけど、筋肉質でねじ伏せていくようなスタイルなのでこれはこれでアリ。

#2「Demolisher」は先行公開されて話題になった曲。この曲はアグレッシブなリフとドラミングが一体になって襲いかかってくる。ブラッケンドなコーラスにハードコアなドラムが合わさってめちゃ面白い。で、世界を震撼させた凶悪ブレイクダウン。再生回数1500万回はやばすぎるって。

#3「Baba Yaga」も#1と似た系統のニューメタルソング。地声からスクリームに無理やり押し込んでいくスタイルも結構サマになっててカッコいい。最後はブリブリのエフェクトをかけて落としこんでいく。地味にラストのソロ良いね。

#4「Made In Russia」は様々なボーカルスキルが堪能出来る曲。良くも悪くもAlexのバンドであり、それを活かすためにどうするか考えてる感じだよね。ラストのブレイクダウン、これもかなりエグいね。ってかドラムの圧がすげえ。確かKatalepsyの人だったよね。

#5「Zabali Ebaro」も縦ノリ感満載の曲でラップメタル的な要素が強い。一応コーラスらしきものもあって、本作のキャッチーさを演出している。

イントロから筋肉質なデスコアを聴かせる#6「Agony」。これは前作っぽい雰囲気かなと思ったらやはりノーマルボイスが顔を覗かせる。テクニカルなギターも聴けるからちょうど前作と本作の合いの子みたいな曲だね。

#7「Your Only」は初っ端から悪魔的グロウルで幕を開けるものの、ダウナーな歌メロを挟んでSlipknotみたいな曲になってる。様々な歌唱法にチャレンジしているのは伝わってくるね。

#8「I Killed A Man」はメカニカルな刻みとアッパーなドラミングに合わせてAlexがまくし立てる。爆走パートもしっかり用意されていて、本作の中では比較的攻撃性が高い。

#9「Bratva」はスペーシーでブヨブヨしたイントロからAlexの自己紹介を挟んで、跳ねるドラミングとリズミカルなリフで進行。これはもうデスコアでは無いな。Alexの声質でカバーしているだけであってサウンドは全くの別物。テクニカルな側面ってのは極力排除している印象で、ほんとライブ感を意識した構成の曲が多い。

#10「Ouroboros」はデジタライズされまくったイントロから激烈感を強めていく。高音ギターやハンマーのような刻みもあるしこれはデスコアっぽい。

#11「Head On A Plate」は強烈なガテラルとブラストビート、スラミングっぽいリフやデスメタリックな刻みが最高にカッコ良い。それでもノーマルボイスを所々取り入れて新しさを演出。こういう激烈な曲もやろうと思えば出来るんだろうね。

ラスト曲#12「Father」はテクいピロギターや硬質な刻みにグロウルとやけくそ気味のスクリームを混ぜた曲。

大衆化したことで一層色んなリスナーに届きそうな作品にはなってると思う。
Alexも様々な歌唱法にチャレンジしていて、凶悪グロウラーに留まらず、より大きなスケールで戦っていきたいという気概をビシビシと感じる。

しかし生粋のデスコアファンからすると今作は完全にハテナが浮かぶこと間違いなしなので、これからどの程度のファン層に受け入れられるか楽しみではあるね。

なんだかモスクワで行われたフルセットのライブがBlu-rayになるらしいんだけど、今の状況下で果たして買えるのかね。もし買えるならあのキンニク悪魔を高画質で拝みたいわ。

★★★★☆



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